※本記事は、GLOBIS学び放題の学習コース、「1on1 ~部下の生産性やモチベーション向上に活用~」の内容をもとにしています。実務で活用する方法など、より詳しく1on1について知りたい方は、ぜひ動画をご覧ください。
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1on1とは何か
1on1は、主に上司と部下が1対1で行うミーティングであり、従来の面談とは目的も進め方も異なります。
1on1は、アメリカ・シリコンバレーのIT企業を中心に、生産性やモチベーションを高めるためのコミュニケーション手段として広まりました。日本企業でも導入が進んでいますが、名称だけを取り入れて中身が進捗確認の場になってしまうケースは少なくありません。
従来のミーティングとの違いは、大きく3つあります。1つ目は、部下個人に焦点を当てた内容を話すという点です。業務に関する情報交換ではなく、部下の心身の状態、抱えている不安や悩み、目指すキャリアなど、通常の業務連絡では表に出てこない抽象的なテーマを扱います。
2つ目は、上司の共感的な姿勢です。1on1はあくまで部下のための時間であり、上司は自分の意見を述べる代わりに、部下の本音を引き出す役割を担います。したがって上司には対話のスキルが求められます。
3つ目は、管理ではなく支援を行うという点です。短期的に結果を出させることを目指すのではなく、部下の事情を知り、課題を一緒に見つけて解決を支えていきます。この姿勢が、結果として部下のモチベーションを高めることにつながります。
なぜいま1on1が注目されているのか
1on1が広がっている背景には、働く環境の変化と、人が成長するメカニズムへの理解という2つの要因があります。
社員を取り巻く環境の複雑化
1つ目の背景は、社員一人ひとりが置かれた状況が多様化していることです。
育児や介護、メンタルヘルスの問題などを理由に、フルタイムで働かない人が増えています。それに伴って働き方も多様化し、働く場所や時間がメンバーごとに異なることも珍しくありません。
かつてのように、全員が同じ時間に同じ場所で働いていた時代であれば、日常の雑談や様子の観察から部下の状態を察することができました。しかし今は、上司が意識的に時間を取らなければ、部下の変化に気づく機会そのものが存在しません。個別の事情を理解したうえでマネジメントを行うことが、上司に求められるようになったのです。1on1は、そのための仕組みだといえます。
経験学習サイクルを回す必要性
2つ目の背景は、アメリカの組織行動学者デイビッド・コルブが提唱した経験学習サイクルという考え方です。
経験学習サイクルとは、人が経験から学んでいくプロセスを表したモデルで、業務を通じて得られる「具体的経験」、経験を深く掘り下げる「内省的観察」、そこから教訓を引き出す「概念化」、教訓を生かして新たな試みを行う「能動的実験」の4段階で構成されます。
重要なのは、このサイクルは経験を重ねるだけでは自動的に回らないという点です。多くの人は、忙しさのなかで経験しっぱなしになり、内省や概念化の段階を飛ばしてしまいます。たとえば失敗した商談を「相性が悪かった」で片づけてしまえば、次に生かせる教訓は生まれません。上司が問いを投げかけ、振り返りに伴走することで、経験は初めて学習に変わります。1on1は、その役割を果たす有効な方法なのです。
1on1を行うことで得られる3つのメリット
1on1を継続的に実施することで、組織には信頼関係、パフォーマンス、評価納得感という3つの面で効果が生まれます。
1つ目は、信頼関係の構築です。情報機器の発達や働き方の多様化により、社員同士のコミュニケーションは希薄になる傾向にあります。定期的に1対1で社員に焦点を当てた対話を行うことは、上司と部下が信頼関係を築く助けとなります。信頼は一度の面談で生まれるものではなく、繰り返しの積み重ねによって形づくられるため、「定期的に行う」という点そのものに意味があります。
2つ目は、社員のパフォーマンス向上です。1on1では、上司は部下に近況を話してもらい、最後まで聞いたうえで、気にかけているという言葉を投げかけ、相手を認め受け入れていきます。期待や感謝が伝われば、部下はやる気を持ち、自分はできるという自己効力感を抱きます。この自己効力感が、挑戦的な業務への取り組みを後押しし、成果につながっていきます。
3つ目は、人事評価のギャップの軽減です。日常的にフィードバックがないまま評価の時期を迎えると、部下の自己認識と評価結果が食い違い、不満が生まれます。定期的なフィードバックを重ねていれば、このずれは小さくなります。結果として評価への納得感が高まり、企業にとっては離職率を下げることにもつながります。
1on1で話すべき2つのテーマ
1on1で扱うテーマは、信頼関係を築くためのものと、成長を支援するためのものの2種類に整理できます。
信頼関係を構築するテーマ
まず土台となるのが、部下との関係性そのものを育てるテーマです。
心身の健康に問題はないか、プライベートで気にかかっていることはないかといった、相互理解につながる話題を通じて、部下の価値観や感情を探っていきます。ここで大切なのは、無理やり聞き出そうとしないことです。詰問のように感じられれば、部下はかえって心を閉ざします。上司が先に自分のことを開示するなど、部下のほうから話したくなる関係性を目指しましょう。
また、部下の仕事ぶりや言動に良い点があれば、その場で言葉にして伝えます。日々の業務のなかでは流れてしまいがちな小さな貢献も、1on1という場で改めて認められることで、部下のモチベーションを高める材料になります。このテーマは、毎回の1on1で必ず扱うことが基本です。
成長を支援するテーマ
信頼関係が土台にあってはじめて機能するのが、部下の成長に向き合うテーマです。
具体的には、業務や組織の課題の改善に関すること、目標設定とその評価などが該当します。仕事に対するフィードバックを行い、短期の目標をすり合わせていきます。
そして経験学習サイクルを回す目的で、上司は部下と一緒に行動の振り返りを行います。ここで注意したいのは、答えを上司が与えるのではなく、部下が自分で答えを見つけるのをサポートするという立ち位置です。自ら導き出した教訓でなければ、次の行動には結びつきにくいからです。また、企業の方針や戦略を部下にわかりやすく伝える場としても活用できます。
なお、成長支援のテーマは必要に応じて扱えば十分です。テーマ選びも、できる限り部下自身に決めてもらいましょう。部下を当事者にすることが、効果的な1on1を継続させる鍵になります。不慣れで話すことが浮かばない場合には、上司から提案しても構いません。
実践で押さえておきたい留意点
1on1の成否を分けるのは、制度そのものよりも、上司が場をどうつくり、どのような姿勢で臨むかという点です。
まず、部下が話しやすい環境を整えます。話しやすい大きさや明るさの場所を選び、上司は自分の表情を確認して明るい表情を心がけます。うなずきやあいづち、体の向きや姿勢にも気を配り、先に自分の意見を言わず、最後まで聞くことを徹底しましょう。上司が結論を先に示してしまうと、部下はその答えに合わせて話すようになり、本音は出てこなくなります。
次に、目的の理解です。1on1は、上司が聞きたいことを聞いたり、伝えたいことを伝えたりする場ではありません。あくまで部下の成長のための時間であり、部下自身が「自分のための定期的な時間だ」と感じられることが前提になります。この認識がずれたまま続ければ、1on1は部下にとって負担でしかなくなります。
頻度についても柔軟に考えて構いません。週1回30分で実施する企業もありますが、目的が果たせるのであれば、15分でも隔週でも問題ありません。形式を守ることよりも、継続すること、そして部下にとって意味のある時間になっていることが重要です。可能であれば、上司が対話スキルを学ぶ機会や、1on1の効果を評価する仕組みを設けるとよいでしょう。
まとめ
1on1は、上司と部下が1対1で定期的に対話し、部下の状況を理解しながら成長を支援する取り組みです。従来の面談との違いは、部下個人に焦点を当てること、上司が共感的な姿勢で臨むこと、管理ではなく支援を行うことの3点にあります。
この考え方を身につけることで、まず部下の変化やつまずきに早い段階で気づけるようになります。メンバーの働き方や価値観が多様化するなか、察するマネジメントは通用しません。定期的な対話の場を持つことは、離職や生産性低下といった問題が表面化する前に手を打つための、現実的な手段になります。
さらに、経験学習サイクルを意識した振り返りを支援できるようになれば、部下の育成スピードそのものが変わります。日々の業務経験を教訓に変える習慣が定着すれば、上司が細かく指示を出さなくても、部下は自ら学び、改善していけるようになります。これは、プレイングマネジャーとして自身の業務も抱える立場にとって、大きな意味を持つはずです。
そして、評価の場面でも効果を発揮します。日常的にフィードバックを重ねていれば、期末の評価面談で認識のずれに悩まされることは少なくなります。1on1は、部下のためであると同時に、上司自身のマネジメントを楽にする仕組みでもあるのです。社員一人ひとりと向き合い、モチベーションと能力を高めていくために、ぜひ活用してみてください。
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