マーケテイングの進化はビジネスの歴史
ビジネスリーダーにとってコトラーのマーケティング1.0から5.0までの進化を理解することは、マーケティングのみならず経営戦略を理解するうえでも重要である。この進化は、企業の競争軸が製品中心から顧客中心、社会的価値、デジタル、そしてAIなどの先端技術の活用へと広がってきた歴史でもあるからだ。
効果的なマーケティング戦略や経営戦略を立案・実行するためには、環境変化(特に顧客ニーズ)を的確に捉え、自社の強みを生かしつつ、方向性を決めなくてはならない。マーケティング1.0から5.0までの進化を理解すすることで、顧客ニーズや社会の価値観、テクノロジーの変化を戦略に取り込み、ビジネスモデルや資源配分を適切に見直すヒントを得ることも可能となる。さらには今後の進化についても予測しやすくなり、競合を出し抜ける可能性が増すのである。
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POINT
マーケティングは、時代の変化とともに絶えず進化している。社会情勢や市場環境が変われば、人々の価値観や行動も変化するため、企業は常に戦略のアップデートを迫られてきた。「マーケティングの父」と呼ばれるフィリップ・コトラーは、この進化のプロセスをマーケティング1.0から5.0の5つの段階に整理し、提唱している。
マーケティング1.0から3.0
マーケティング1.0は、1950年代に始まった、製品中心のマーケティングだ。製品開発とライフサイクル管理、それに最善の4P、すなわち製品(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、コミュニケーション(Promotion)を生み出すことに重点を置いていた。これは大量生産・大量消費の文化を生み出したが、1970年代から80年代の景気後退により節約志向が高まると、マーケティング2.0が登場し、より顧客中心の考え方へと進化した。企業は、万人受けを狙う手法から脱却して、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを理解することを軸とするようになった。2000年代に入ると、インターネットの普及に伴い、顧客が容易に情報を入手できるようになった。その結果、一部の顧客は、社会的・環境的影響をもたらす製品やサービスや文化を生み出すよう要求した。そして、人間中心と呼ばれるマーケティング3.0が登場した。
マーケティング4.0から5.0
マーケティング4.0は、オンラインとオフラインの交流を融合させるアプローチである。デジタルメディアの普及により、SNSやアプリなど顧客との接点は飛躍的に増加した。顧客がみずから情報を発信し始めたことも受け、新たな行動モデル5Aカスタマージャーニーが登場した。従来の4Aカスタマージャーニーが、認知(Aware)、態度(Attitude)、行動(Act)、そして再行動(Act Again)が企業の目標であったのに対し、5Aカスタマージャーニーは、認知(Aware)、訴求(Appeal)、調査(Ask)、行動(Act)、そして推奨(Advocate)へと変化した。企業の目標は、顧客の再購入から顧客の推奨へと移り、購入後の関係維持が不可欠となったのだ。たとえば、ブランドや製品の開発物語の発信、顧客同志が意見を交換できるコミュニティサイトの運営や顧客が一同に集まるファンミーティングを通じた交流により、製品への愛着を育み、他者へ勧めてもらう仕組みなどを構築していく。その後、登場したのが、カスタマージャーニーマップを作成し、マーケティング・テクノロジーがどこで価値を加えて、マーケターのパフォーマンスを高めることができるかを特定することから始まるという考え方のマーケティング5.0である。
マーケティング4.0は、デジタル社会において顧客とどうつながり、ファンになってもらうかという仕組みの構築を提唱したのに対し、マーケティング5.0は、その仕組みの中にAIなどの高度な技術を組み込み、いかに「人間にとって価値のある体験」を効率よく、かつ深く提供できるかというフェーズへ進化を遂げている。
マーケティング5.0の5つの要素
マーケティング5.0では、2つの「規律」(データドリブン・マーケティング、アジャイル・マーケティング)と3つの「アプリケーション」(予測マーケティング、コンテクスチュアル・マーケティング、拡張マーケティング)が重視される。
基盤となる「データドリブン」と「アジャイル」の2つの規律は、激変する市場や顧客の動向をリアルタイムに捉え、施策を迅速に改善するために機能する。この強固な土台があって初めて、先述した「人間にとって価値のある体験」を届けるための仕組みが動き出す。つまり、2つの規律はビジネスを動かす不可欠なエンジンであり、そのエンジンの上で具体的な価値を生み出す役割を担うのが、以下の3つのアプリケーションという関係性になる。
予測マーケティングとは、AIを活用し、顧客の動向やマーケティング成果などを事前に予測するというものだ。コンテクスチュアル・マーケティングは、ITやAIなどの技術を活用して顧客ごとにあつらえた(パーソナライズされた)経験をワン・トゥ・ワンで提供しようというものである。拡張マーケティングとは、マーケティング生産性を向上させるためにチャットポットやMR(複合現実)、AR(拡張現実)などの技術を活用するものだ。

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