※本記事は、GLOBIS学び放題の学習コース、「ワーキング・キャピタル (運転資本)~資金繰りの必須知識~」の内容をもとにしています。実務で活用する方法など、より詳しくワーキング・キャピタル(運転資本)について知りたい方は、ぜひ動画をご覧ください。

ワーキング・キャピタル(運転資本)とは?日々の事業を回すための資金
ワーキング・キャピタルとは、ひと言でいえば「事業を止めずに回し続けるために必要なお金」のことです。
日本語では「運転資本」と呼ばれ、英語の頭文字を取って「WC」と表記されることもあります。ワーキング・キャピタルとは、日々の事業活動を回していくために必要な資金を指します。
なぜこのような資金が必要になるのでしょうか。それは、多くの企業ではお金を支払うタイミングが先で、お金を受け取るタイミングが後になるからです。たとえば、商品を仕入れて代金を支払っても、その商品が売れて代金が入ってくるのは数カ月先、ということは珍しくありません。その間も、企業は家賃や人件費を払い、次の仕入れを行わなければなりません。
この「支払いと受け取りの時間差」を埋めるために手元に置いておく必要があるお金が、ワーキング・キャピタルです。利益が出ているかどうかとは別に、お金の出入りのタイミングに目を向ける考え方だといえます。
ワーキング・キャピタルの計算方法と押さえておきたい用語
ワーキング・キャピタルは、貸借対照表(バランスシート)の項目を使って計算できます。
計算式は次のとおりです。
ワーキング・キャピタル = 流動資産 −(流動負債 − 有利子負債)
式に出てくる用語を確認しておきましょう。流動資産とは、現金や売掛金、在庫など、おおむね1年以内に現金化される資産のことです。流動負債とは、買掛金や短期借入金など、おおむね1年以内に支払う必要がある負債を指します。有利子負債とは、銀行からの借入金のように利息を払う必要がある負債のことです。
つまり、流動資産から「短期借入金などの有利子負債を除いた流動負債」を差し引いた差額が、ワーキング・キャピタルになります。
有利子負債を除くのは、借入金が日々の取引から自然に生まれるものではなく、資金を調達する手段そのものだからです。事業活動そのものがどれだけのお金を必要としているかを見るために、調達手段は切り分けて考えるのです。図を使った整理は動画でわかりやすく解説されています。
なぜ資金が必要になるのか?ワーキング・キャピタルの発生メカニズム
ワーキング・キャピタルは、「掛け取引」という商慣習から生まれます。
基本的なビジネスの流れは、原材料を仕入れ、加工し、販売するというものです。このとき代金は、その場で現金をやり取りするのではなく、後日まとめて支払う「掛け取引」で行うのが一般的です。後で支払う約束の仕入れ代金を買掛金、後で受け取る約束の販売代金を売掛金、まだ売れていない在庫を棚卸資産と呼びます。
たとえば、仕入れ代金を1カ月後に支払い、在庫が売れるまでに1カ月、売上代金の回収にさらに2カ月かかるとします。この場合、支払いを済ませてから代金を受け取るまでの約2カ月間、企業は自分のお金で事業を立て替えていることになります。この立て替え分がワーキング・キャピタルです。
ここから、増減の方向が見えてきます。売掛金の回収期間や在庫期間が長くなるとワーキング・キャピタルは増え、短くなると減ります。反対に、買掛金の支払期間が長くなるとワーキング・キャピタルは減り、短くなると増えます。お金が入るのが遅いほど、出ていくのが早いほど、必要な資金は膨らむと覚えておくとよいでしょう。
売上が伸びるときこそ要注意。成長期にワーキング・キャピタルが増える理由
ワーキング・キャピタルで特に見落とされやすいのが、事業が順調に成長している局面です。
事業が成長すると、仕入れ代金、棚卸資産、販売代金もそろって増えるのが一般的です。ここで重要なのは、代金の回収が遅れたり在庫が売れ残ったりしなくても、規模が大きくなるだけでワーキング・キャピタルの絶対額は増えるという点です。
先ほどの例で考えてみましょう。毎月500万円分を仕入れ、2カ月分を立て替えているなら、必要な資金は約1,000万円です。売上が伸びて仕入れが毎月1,000万円になれば、取引条件が同じでも、立て替えるお金は約2,000万円に増えます。
この増加分をあらかじめ用意しておかないと、事業は伸びているのに資金繰りに行き詰まるという事態に陥りかねません。帳簿上は利益が出ていても支払いができずに倒産してしまう「黒字倒産」が起こるのも、こうした仕組みが背景にあります。だからこそ、事業成長の際にはワーキング・キャピタルの増加分を事前に資金手当てしておくことが重要なのです。成長局面で実際にどう判断すればよいかは、動画でぜひ確認してみてください。
ワーキング・キャピタルを考えるうえでの2つの留意点
最後に、ワーキング・キャピタルを扱う際に押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
1つ目は、取引条件そのものがワーキング・キャピタルに影響するという点です。仕入れの支払条件や販売代金の回収条件によって、立て替える期間は長くも短くもなります。契約時に決める支払日や回収日は、営業や購買の担当者にとっても資金に直結する判断だといえます。
2つ目は、ワーキング・キャピタルの資金調達にはコストがかかるという点です。資金を調達する方法は、大きく分けて株主からの出資などによる自己資本と、銀行などからの借入があります。いずれの場合も資金はタダではなく、借入なら利息、出資なら株主が期待するリターンが発生します。このコストを資本コストと呼びます。
販売機会を逃さないよう仕入れや在庫を増やすほど、ワーキング・キャピタルも増え、資本コストも膨らみます。つまり、在庫を積み増す判断は、売り逃しを防ぐメリットと資金コストを天秤にかける判断でもあるのです。そのバランスの取り方は、動画で詳しく解説されています。
まとめ:ワーキング・キャピタルを理解すれば「お金の流れ」で事業を判断できる
ワーキング・キャピタルとは、支払いと受け取りの時間差を埋め、日々の事業を回すために必要な資金です。売掛金の回収期間や在庫期間、買掛金の支払期間によって増減し、事業が成長するときには取引条件が変わらなくても増加します。
この考え方を身につけると、利益だけでなくお金の流れという視点から、ビジネスの判断ができるようになります。たとえば、仕入れ量を増やすかどうか、新しい取引先とどのような支払・回収条件で契約するか、在庫をどこまで持つかといった場面で、「その判断によって必要な資金はどれだけ増えるか」を考えられるようになるでしょう。
財務や経理の担当者でなくても、営業、購買、事業企画など、日々の判断がワーキング・キャピタルにつながる職種は少なくありません。売上の伸びを喜ぶだけでなく、その裏で必要になる資金にも目を配れることは、事業を任されるビジネスパーソンにとって大きな強みになるはずです。
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