組織が継続的に成果を生み出す仕組みをつくるには
ビジネスリーダーにとって、能力開発や後継者育成の方法を知ることは、自分自身が成果を上げるだけでなく、組織が継続的に成果を生み出す仕組みをつくるうえで非常に重要である。優れたリーダーであれば、彼/彼女が大事な意思決定を担うことで、短期的には高い成果を出せるかもしれない。しかしこのやり方は、企業の成長に伴っていつかは限界を迎える。そこで必要になるのが、重要な判断を任せられる人材を意図的に育てることである。
第一に意識すべきは、育成方法のバランスだ。まず最初に考えるべきは、権限を委譲する、少し難しい仕事を任せる、異なる部門や職務を経験させるなど、仕事そのものを通じた育成だ。しかしそれだけで人が十分に成長するわけではない。適宜外部機関の研修を受けてもらったり、eラーニングなどで学んでもらうことも大切だ。経営大学院に派遣することも非常に効果的である。
第二に意識すべきは、後継候補を早い段階から複数人選び、必要な経験や能力を計画的に身につけさせることだ。それによって「人材の空白」を防ぐことができる。後継者育成とは、単に次の部長や社長を決めることではなく、将来の経営を担える人材の層を厚くする活動なのだ。これは昨今投資家が重視する点でもある。
第三に意識すべきは、後継者を育てることは、リーダー自身の成長にもつながるという点だ。部下が育つことで、リーダーはより長期的な戦略や組織変革といった重要課題に時間を使うことができる。「自分がいなければ回らない組織」をつくるのではなく、「自分がいなくても回る組織」をつくることが、より高いレベルのリーダーの仕事なのだ。
それゆえ、能力開発と後継者育成は人事部に任せて終わりの仕事ではない。実はビジネスリーダーに求められる重要な経営能力の1つなのである。
また、従業員もそれを意識したうえで自身の能力開発につなげるべきと言える。このことが自身の被雇用能力を上げ、良いキャリアを送ることにつながるのだ。
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POINT
能力開発はコストではなく戦略的な投資である。OJT、Off-JT、自己啓発を組み合わせながら、短期の業務遂行能力向上と中長期のキャリア形成、後継者育成を統合的に設計することが重要である。
能力開発の手法
企業が行う能力開発には、大きく分けて3つの方法がある。
- OJT (On-the-Job Training):職場で実務を通じて能力を高める方法である。上司や先輩が仕事を任せ、助言やフィードバックを行いながら育成する。
- Off-JT (Off-the-Job Training):一定期間、職場や仕事から離れた場所で行われる教育訓練である。社内外の研修やオンライン講座などを通じて知識やスキルを学ぶ。
- 自己啓発:従業員が自発的に取り組む自己学習である。読書やeラーニング、資格取得などを通じて能力を高める。
長期雇用を前提としてきた日本企業ではOJT中心のケースが多かったが、環境変化の激化や業務の高度化・複雑化、デジタル技術やAIの普及により、求められる知識やスキルの更新速度は高まっている。そのため、OJTだけではなく、体系的な知識習得や視座・視野の拡張を担うOff-JTや、個人の主体的な学習である自己啓発を適切に組み合わせることが大切である。
キャリア開発
キャリアとは、個人が生涯にわたって経験する職務や役割、仕事に関連する経験の連なりである。企業においては、社内での配置や昇進だけでなく、転職や職務の変化などを通じて形成される経験の積み重ねと捉えることができる。
企業が従業員のキャリア開発に取り組む目的は、さまざまな業務経験を通じて従業員の能力を高め、組織の成果を最大化することにある。一方で近年では、キャリアは企業から与えられるものではなく、個人が主体的に考え、選択していくものとして捉えられるようになってきている。このような考え方は「キャリア自律」と呼ばれる。従業員は自身に「エンプロイアビリティー(継続的に雇用されうる能力)」があるかを常に問い続け、戦略的にキャリア・デザインを考えなくてはならない。
後継者育成(サクセッション・プランニング)
後継者育成とは、将来の経営層や重要ポジションを担う人材を計画的に確保するために、必要な能力・経験・視座を体系的に育成する取り組みである。
まずは戦略上重要なポジションとその要件を明確にし、複数の候補者からなるタレントプールを形成する。選抜にあたっては、現在の業績だけでなく将来の成長可能性も評価し、アセスメントやタレントレビューを通じて「即時登用可能」「数年以内に準備可能」などの区分で管理する。
育成施策としては、戦略的な異動や重要プロジェクトへのアサイン、越境経験、選抜研修、メンタリングなどを組み合わせ、段階的に経験を積ませていく。また、定期的なレビューにより、候補者の入れ替えや育成計画を見直すとともに、突発的な退任に備えた緊急時対応計画も準備しておく必要がある。
近年では、後継者育成を一部の幹部候補に限定せず、組織全体のタレントマネジメントと接続して設計する必要性が高まっている。能力開発、キャリア開発、後継者育成を分断された施策として実施するのではなく、「発掘-選抜-育成-配置-レビュー」という一連の流れとして設計・運用することが、企業の持続的な成長を支えるのだ。

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