AIが整えた文章では、なぜ人が動かないのか?

——AIの浸透で、論理的な文章も企画書もすぐに作れるようになりました。しかし、それを相手に渡しても納得してもらえるとは限らず、「結局動いてくれないな」という場面はむしろ増えている気がします。
廣田:コミュニケーションにあたっては、こちら側と受け手側のあいだにギャップが存在しているんです。
たとえばミスをしたとき「先方に謝罪するメールを書いて」と指示すれば、AIは流暢な文章をすぐに出してくれます。しかし、ここでのポイントは、こちらのミスによって相手がどんな困りごとを抱え、自分たちはどんな協力ができるのかなどを考えられているか。こういった「相手の状態」を起点にゴールを考えられているかがコミュニケーションに与える影響は非常に大きいんです。
ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は、相手に動いてもらうことですから、そのために自分と相手の間にあるギャップを埋めて伝えようとすることが非常に大事です。
——ギャップの埋め方について、詳しく教えてください。
廣田:相手のすべてが分かるかというと難しいですが、相手の部門や役職、目的、予算をはじめどんな制約条件があるのかは、調べたり考えたりすることができます。こうしたことを具体化し、仮説を持つ。そのうえで、欠けている視点をAIと補っていきます。同時に「実際にこういうお困りごとはありませんか」と、必要に応じて相手と対話して確かめていく行動も求められます。
AIは世の中にすでにある情報から一般論を生成したり、汎用的な視点を提示することは得意です。一方で、相手との関係性や企業・現場固有の文脈などは、AIに入っていないデータです。ここは、私たち人間が持ち込むべき情報です。
そうしてブラッシュアップしていき、最終的に「自分は何を、どう伝えるのか」。この責任を引き受けることは、人に残るのではないかと考えます。

AIが進化しても、手放してはいけない役割
——AIに関連するトピックの中では「人間だけができることとは何か」がよく議論されています。廣田さんはどう捉えるか伺いたいのですが、いまのお言葉から、「手放してはいけないことは何か」にも注目しておられるのではと思いました。
廣田:先ほど申し上げた現場の違和感などのAIが取り扱っていない固有の文脈・情報を扱うこと、人間は感情を持っていますから、相手との関係性構築などの面がまず挙げられます。
そして、どういう問いに答えていくべきなのか。さらに言えば、どういう状態を作っていきたいのか、ここは人が担う必要があると考えます。そして、AIを使いながらも、そのアウトプットの是非を判断し、自分で伝え、実行する責任を引き受ける力は、人間が手放してはいけないことなのではないかと考えています。
AIが得意なこと | 人にしかできない・手放してはいけないこと |
|---|---|
● 一般論をつくる ● きれいに整える ● 欠けている視点を指摘・補足する | ● データ化されていない生の情報の落とし込み ● 関係構築 ● 決めて、責任を持つ |
自分の考えを持った上で、幅を広げるためにAIを使う
——ここから、より実践的なコミュニケーションのコツについても伺っていきます。さまざまな状況がある中でうまくコミュニケーションしていく上で、特に力を入れるべきポイントを教えてください。
廣田:すぐにできる発想の転換としておすすめしたいのは、主体を変えて考えることです。コミュニケーションといえば、どうしても「自分が行う行為」に集中しがちですが、「相手のどんな理解、納得、行動の変化を実現できるといいのか」から発想する。こちらが伝えたいこと以上に、相手に行動していただくために必要なことは何かを考えるのです。
——場面によっては、相手が対話の最初からこちらと違う意見を持って対立してしまっているときもあります。こうなるとコミュニケーション自体が難しくなりがちですが、どう考えればよいでしょうか。
廣田:「立っている問いの違い」に着目されると良いでしょう。例えば、営業部門は売上目標をどう達成するかを考え、製造部門は企画されたものをどう決められた品質で作るかを考える。問いが違えば、見えるもの・意見が異なるのです。
相手にはどういう問いが立っていて、何に責任を持ち、懸念を感じるポイントはどこなのか。そちらを考えていただけると、単純な「対立」ではないかもしれません。むしろ相手との違いによって自身が相対化され、新しい気づきが得られることもあります。
——逆に、そもそも相手が何を考えているのかよく分からない、という状況もありますよね。この場合はどうするとよいでしょう。
廣田:考えられる相手の問いを洗い出すことです。これは対話からも、担われている責任からも推測できますが、自分の思考だけでは視点が足りないこともありますから、そこはAIも活用されると良いでしょう。「こういう立場の方が納得してくれない。自分は以下の点を考えたが、それ以外にないか。厳しめにフィードバックしてくれないか」などです。ただ、大事なのは、自分の仮説を持ったうえで幅を広げるためにAIを使うことです。自分の考えがないのにAIに全てを聞くと、散漫になったり、一般論を超えなかったりしますから。
知っているだけでは、できるようにならない
——ここまでコミュニケーションのポイントを様々教えて頂きましたが、これらを実際に使えるようになるには、どうすればよいのでしょうか。
廣田:コミュニケーションについての書籍は、AIをめぐる近年のものから古典まで、たくさん出ています。しかし、それらを読んだだけでコミュニケーションが上達するかというと、なかなか難しいでしょう。
知識を実践で活かすためには、ご自身が書かれたメール報告、提案資料などについて、最終アウトプットに至るまでのプロセス・考えたことを振り返る必要があります。そのうえで得た学びを使って、振り返るという試行錯誤が必要です。
——とはいえ、実際のビジネスの中で試行錯誤するには限界があります。
廣田:仕事の責任からは離れた場であれば、「自分がこう言ったらどう思いますか」と率直に尋ね、率直な返答をもらうことができます。
本科目「AI時代のコミュニケーション入門」はじめ、ナノ単科では業界・職種・職位も様々な受講生のみなさんとのグループワークがありますから、そこでシミュレーションするのもいいですね。試行錯誤の場として、うまく使っていただけるといいと思っています。

また、ここまでのお話で言えば、
- 自分の行為以上に「相手にどういう状態になっていただきたいのか」というゴール設定
- 培ってきた関係性や文脈も入れた、相手の納得感を変えるアウトプット
- その言葉を対面で語って責任を引き受けられる内容なのか、検証する
といった内容について、具体的に学び、試行錯誤する場が本講座にはあります。
コミュニケーションは、才能ではなく再設計できるもの
——最後に、AI時代のコミュニケーションに悩む読者の方へメッセージをお願いします。
廣田:コミュニケーションがうまくいかないと、「自分は話すのが苦手だ」「説得力が欠けているんだ」と、才能の問題だと思ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。しかし、そんなことはありません。
伝えたか、ではなく、伝わったか。そこに目を向ければコミュニケーションは設計し直せるものになります。AIの力も借りてコミュニケーションを捉え直し、勇気を持って再設計していきましょう。そしてナノ単科「AI時代のコミュニケーション入門」を、その機会として活用していただけたらと思います。
——本日は貴重なお話をありがとうございました。
ナノ単科「AI時代のコミュニケーション入門」をさらに詳しく知りたい方はこちら

ナノ単科の学び方や他カリキュラムにご関心をお持ちの方はこちら





















.png?fm=webp&fit=clip&w=720)






