組織行動学(OB:Organizational Behavior)において、動機づけ理論は、従業員の行動や成果を左右する中核的な概念の1つとなっている。
人は単に報酬だけで動くのではなく、達成感や承認、成長機会といったさまざまな要因に強く影響される。これを理解せずに皆に画一的なマネジメントを行うと、意欲低下や離職につながる可能性が高まる。
逆に、動機づけ理論を適切に活用することができれば、個々人の価値観に応じたマネジメントが可能となり、生産性や創造性の向上を促すことができる。
また、組織全体のエンゲージメントを高め、長期的な競争力の源泉ともなる。
動機付け理論には内容理論(欲求や動機の中身に注目する)や過程理論(動機づけが生じるプロセスに注目する)などさまざまなアプローチのものがあるが、今回は内容理論系の代表的理論である自己決定理論について紹介する。特に創造的な仕事が求められるビジネスでは非常に有効な考え方だ。
「内発的動機づけ」で部下の生産性が劇的に上がる
エドワード・デシとリチャード・ライアンは、モチベーションを理論化した自己決定理論を提唱しました。この理論では、動機づけを(1)外発的動機(外部からの働きかけによって生じるモチベーション)と(2)内発的動機(自分自身の内部から生じるモチベーション)の2つに分けます。
外発的動機づけは往々にして短期的にしか持続せず、同じ働きかけが続くと効果が薄れるのに対し(例:ボーナスが毎年同じ額だとモチベーションは下がっていく)、内発的動機づけは、自身の興味や関心、成長意欲などから発生するため、より持続性が高いと考えます。この2つは完全に対立するものではなく、その間にいくつかの段階があると考える点にこの理論の特徴があります。
デシらは、内発的動機づけが高まれば、仕事のパフォーマンスやウェルビーイングが向上すると主張しました。内発的動機に至るまでのステップは以下の5つです(動機づけされていない状態を含めて6段階で説明されることもあります)。図表に示したように、後半に行くほど内発的動機づけの比重は上がります。

「内発的動機づけ」を高める3つの「欲求」
デシらは、内発的動機づけを高めるためには、人間なら誰もが自然に持つ3つの欲求を高次元で満たす必要があると主張します。
(1)有能性(有能感):外部への好ましい影響を通じて、自身の「有能さ」を証明したい欲求
(2)関係性:周囲との「関係性」を良いものにし、大切にされていると感じたい欲求
(3)自律性:自己の行動を自分自身で決めたい欲求
自己決定理論は実証研究も多く、多くの人々に支持され、他の理論にも大きな影響を与えました。たとえば、著述家のダエエル・ピンクは著書『モチベーション3.0』(大前研一訳、講談社、2010年)の中で、アメとムチによる動機づけ(これを彼は「モチベーション2.0」と呼んでいます)は、ルーティンな定型作業などには向いているものの、非ルーティンな創造的な仕事にはかえってマイナスだと指摘しました。
彼は、アメとムチによる動機づけの弊害として、(1)内発的動機づけを失わせる、(2)かえって成果が上がらなくなる、(3)創造性を蝕む、(4)好ましい言動への意欲を失わせる、(5)ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する、(6)依存性がある、(7)短絡的思考を助長する、の7つを挙げています。
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