ステップ1:まずはざっと通読し、経営の全体像を把握

『グロービスMBAマネジメント・ブック』の最大の特徴は、「経営学の基礎を広く網羅していること」、そして「1つのテーマが2ページ(1見開き)程度で完結すること」です。初めて読まれる方(ここでは20代後半から40代くらいのビジネスパーソンを典型的な読者層として想定します)は、最初から最後まで順番に熟読するのではなく、「全体を俯瞰的に捉える→気になるテーマを深く読む→必要になったら戻る」という読み方がお勧めです。
まずは細かい内容やその理解度に過度に拘泥せずに、少し速めに全体を読んでみましょう。人にもよりますが、2、3週間くらいで全体に目を通してください。
ここでの目的は個別の領域に関する知識の深い習得ではなく、「経営にはどんな重要項目や、知っておくべきテーマがあるのか」を理解することです。経営戦略、マーケティング、会計、ファイナンス、人・組織、ITなどを横断しながら、「経営者はこういうことを考えなければならないのだ」という全体像をつかむのです。
この段階では各項目で少し知らない用語が出てきても、いちいち詳細に調べなくても大丈夫です。実際、経営者や役員クラスでもない限り、いきなりすべての知識を使うシーンは稀です。まずは「こういう考え方が経営では重要なのだ」と理解しましょう。
ステップ2:自分や会社の課題に応じた章・項目を深く読む
ある程度全体像が見えてきたら、3、4回目程度からはその時々の課題に応じて読むといいでしょう。新商品開発について考えるなら「マーケティング」、投資の是非なら「ファイナンス」、部下のモチベーションやエンゲージメント向上なら「人・組織」、AIの活用やDXの推進なら「IT」というように、目の前の問題に対応する章や項目を辞書のように目を通すのです。ここで本書の「2ページで1つのテーマがまとまっている」という特徴が生きてきます。ちょっとした隙間時間に、関連テーマを深く読めば、対応策も見えてきます。
さらに効果を高めたいなら、読んだ後に「これは自分の会社や自部署ではどうなっているだろう」と考えてみましょう。たとえば「アドバンテージ・マトリクス」の項目を読んだら、自事業はどの事業タイプに当てはまるかを考えてみましょう。あるいは「損益分岐点」の項目を読んだら、自社や自事業の損益分岐点をラフに計算してみるといいでしょう。「モチベーション」の項目を読んだら、自身や部下がどんな時にモチベ―ションが高まったか思い出してみましょう。
「2ページ読む+数分考えてみる」ということを習慣にすると、知識が実務と結びついていきます。
ステップ3:必要に応じ専門の教科書も読む
そして意識したいのは、本書だけですべてを理解しようとしないことです。本書は各経営分野への入口です。興味を持った分野や、学ばなくてはいけない分野があれば、『グロービスMBA経営戦略』『グロービスMBAマーケティング』『グロービスMBAアカウンティング』『グロービスMBAリーダーシップ』など、個別テーマを扱った教科書へ進むと効果的です。
つまり、本書の一番の効用は、「経営学をこれだけで理解できる」ということ以上に、「経営学に関する全体像(マップ)を持てること」です。まず全体をバランスよく広く知り、仕事で問題にぶつかったときに該当するテーマへ戻れるようにします。そして必要に応じて専門の教科書を参考にする。この繰り返しによって、バラバラだった経営知識がつながり、最終的に「経営を総合的に考える力」が身についていきます。
「全体としての正解」を考える力がつくことこそ、経営を総合的に考える力のメリット
経営を総合的に考える力が身につくと、目の前の問題を一つの視点だけで判断しなくなります。たとえば「部署の売上が伸びない」という問題も、営業担当者の努力不足と決めつけてはいけません。製品・サービスそのものの魅力が下がったのか、ターゲット顧客のニーズやKBF(重要購買要因)が変わったのか、業務プロセスに問題があるのか、異業界からの新たな競合が登場したのか、と多面的に考えられるようになります。
経営学の基礎知識がつながると、ある施策が他の領域に与える影響も想像できるようになります。たとえば値下げは売上を増やしても利益率を悪化させるかもしれません。新規事業への大型投資は成長につながる一方、財務的なリスクを高める可能性があります。DXの急な推進はそれまで良好だった組織文化に悪影響を与える可能性もありますし、かえって顧客の満足度を下げてしまうかもしれません。
端的に言えば、経営を総合的に考える力とは、「局所の正解」ではなく「全体としての正解」を考える力です。この力が強くなるほど、複雑な問題の本質を捉え、より質の高い意思決定ができるようになります。
自身の成長に合わせて読み返す
本書は数回読んだら終わりではなく、数年のスパンで折に触れて改めて読まれることをお勧めします。本書に限らず、読書は自分の成長を映す鏡でもあります。忘れてしまったことを思い出したり、「このフレームワークはこんな奥深さがあったのか」と再確認したりすることもできます。こうしたことを繰り返すことで自分の実力を確認することができ、経営の力が確実に向上していくのです。
なお、書籍だけで経営力を身に着けるのは不可能ではありませんが大変です。経営力をさらに効果的に身につけたい方は、本書を座右の書としつつ、経営大学院や企業研修などで深く学習するのも有効です。
さらに実務でその知識を使って結果を出しながら、都度振り返りを行うことをお勧めします。本書はそうした学びを行う際の案内書としても役に立つはずです。
テクノロジーの進化を踏まえて「IT(テクノベート)」の章を全面刷新したほか、「人・組織」「アカウンティング」「ゲーム理論・交渉術」「マーケティング」の章についても、現在のビジネス環境を踏まえて改訂・拡充。経営環境が大きな変革期を迎える今、経営を学ぶ学生や、これから経営を学びたいビジネスパーソンはもちろん、日々の仕事の中で経営課題に向き合う一人でも多くの方にぜひご活用いただきたい一冊です。
『グロービスMBA マネジメント・ブック[改訂4版]』
著:グロービス経営大学院 発売日:2026/9/2 価格:3,960円 出版社:ダイヤモンド社




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