『離職ゼロ。「自営型社員」が会社を変える!』――ジョブ型でもメンバーシップ型でもない新たな選択肢

投稿日:2026/04/23更新日:2026/04/23

グロービスの教員・研究員がおすすめの本を紹介するコーナー。今回は「自営型社員」という新たな人材のありかたを提唱する『離職ゼロ。「自営型社員」が会社を変える!』を取り上げます。

4月になり、多くの企業が新年度を迎えたのではないだろうか。新年度にあたり、異動や転職などによって担当する仕事内容が変わるという方もおられるだろう。

その仕事は、どのように進めることができる仕事だろうか?自分の裁量と工夫の余地が大きい仕事だろうか?もしそうであれば、あなたは「自営型社員」として働くことができているのかもしれない。

「自営型社員」とは

組織論の研究者として豊富な実績を持つ著者は、日本企業及び日本社会の厳しい状況(人手不足と生産性の向上、ワーク・エンゲージメントの低水準)に大きな問題意識を持った。そして、限られた人材をどう活かし、これからの日本企業の組織と人材がどうあるべきかを学術的な側面も含め検討した。

その結果、「仕事を通して充実感を得たい」「仕事を通して自己実現したい」といった個人の内面から起こる動機に焦点を当て、そこから企業における人材のマネジメントを再考することが必要だという考えに至った。これを実現する方法論が、本書で提唱している「自営型社員」である。
自営型社員とは、社員でありながら、まるで自営業のように自分の判断でまとまった仕事を遂行する人材を指す。自分の裁量と工夫で仕事をすることで、モチベーションや仕事のやりがいは高まる。それが生産性向上と「離職ゼロ」、すなわち人手不足の解消にもつながると言う。

「自営型社員」は、従来の日本的雇用制度を表す「メンバーシップ型」では無いし、従業員と職務(ジョブ)を限定して雇用契約を結ぶ「ジョブ型」でも無い。もう一つの選択肢であり、広い視野から働き方を考えるきっかけとして著者は提示している。

「自営型社員」は本当に実現するのか

ところで、「自営型社員は組織において実現するのか」という素朴な疑問が湧いてこないだろうか。本書において著者は疑問への回答をいくつか述べているが、そのうち二点を紹介する。

一点目は、著者は、個人が組織の一員でありながらも、個人起点で自分の目的を追求し主体的に働くことで「自営型社員」は実現するのではないかとしている。権限委譲し、組織も個人もそれぞれが主体的に市場や社会の要求に応える働き方をすることで、組織は利益を得られ、個人は報酬や社会的評価を得ることができる。すなわち、組織と個人がwinwinの関係性を構築することだ。
しかし、個人起点で自分の目的を追求し主体的に働くと、より魅力的な職場や働き方を求め離職が増える可能性が考えられる。この点について著者は「社員の転職や独立を恐れ主体的な活躍の機会を奪うのではなく、むしろ奨励することで優秀で野心的な人材を集め、在職中に多大な貢献をしてくれるメリットの方が大きい」と述べている。
また、社員が転職・独立しても縁を切らずに、自らがそれらの人材を要している「プラットフォーム」となり、能力や人柄が分かっている貴重な人的資源を強かに利用することも提案している。実際、前向きな離職ははるかに少ない現実を考えると、転職や独立の機会を与えることは企業にとって損にならないと著者は主張している。

二点目は、自営型社員の実現においては「デジタル化」が大きな役割を果たしていると著者は述べている。例えば、メーカーでは一人で製品の企画、開発、マーケティングに至るまで従来の部署という括りを跨いで携わっているケースが増えているという。インターネットやAIなどのデジタル技術を活用した業務の効率化により、個人の守備範囲が広がった。複数人で分担していた仕事を一人で処理できるようになっているのである。

なるほど、確かにこれらの点を満たせば「自営型社員」は実現しそうだ。

限られた人材を活かすためのイノベーションが急務

しかし、二点目については、製品の企画からマーケティングまで一人でやるとなると、いくらデジタル化の助けがあるにしても、それらへの知見が必要となるだろう。
現在の私の仕事は、ビジネス教育動画サービスのコンテンツの企画編集で裁量を持って働けているが、守備範囲はコンテンツの原稿を仕上げるところまでである。実際に動画の絵を作ったり、ディレクションしたりといったことは範囲外だ。そこまでやるとなったら相応のリスキリングが必要となる。逆に動画作成を専門としているメンバーが原稿作成側にはみ出してきて、私と仕事の取り合いになるかもしれない。

著者はそういった反応や反論も織り込み済みで、あえて人材マネジメントへのイノベーションを提起していると私は理解した。企業の生存戦略として限られた人材をどう活かすか……。メンバーシップ型かジョブ型かという二者択一ではない、三つ目の選択肢である「自営型社員」。それは、今後の企業の在り方のみならず、企業に雇用される私達一人ひとりの働き方を考えるきっかけとなるのではないだろうか。


離職ゼロ。「自営型社員」が会社を変える!

著:太田 肇 発行日:2025/12/17 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

  • 石橋 直美

    グロービス学び放題 コンテンツ開発チーム研究員

    法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修士課程修了。 コンサートホールを運営する公益財団にて事業企画等に従事した後、グロービスに入社。法人向け人材育成・組織開発部門において、コンサルティング業務、部内の業務改革プロジェクト等に携わる。現在は、ビジネスを学べるオンライン動画サービス「グロービス学び放題」のコンテンツ企画・執筆を行っている。日本キャリアデザイン学会会員。MBTI認定ユーザー。

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