年収500万円未満の若年層男性の未婚理由は「コミュニケーション能力」にあり!?――MBA生が「婚活・少子化×テック」を本気で考えてみたVol.2

投稿日:2026/01/15更新日:2026/06/18

前回の結果、「年収500万円未満の25~34歳男性」はITを通じた少子化対策のボリュームゾーンであり、未婚率を下げるうえでインパクトを出しやすい層であると考えられます。そこで今回は、彼らの結婚が実現しない理由は何か、イベント視察や専門家のインタビューも交えて精査しました。

※本連載はグロービス経営大学院の研究プロジェクトにおいて、5名(元泉、一宮、小林、多田、横山)の学生が、嶋田毅講師の指導の下、研究した成果をまとめたものです。

年収500万円未満の25~34歳未婚男性の傾向とは

先行研究より、研究対象者である未婚男性の状況を以下のようにまとめました。

l  未婚者で交際経験がない人の割合は、20代男性46%、30代男性41.2%(※1)

l  女性が求める男性の年収と実際の年収に乖離が生じている。希望年収は400万円台が27%、500万円台が22%、500万円以上は43%である一方、実際の年収は400万円台が15%、500万円以上は10%に満たない(※2)

上記より、20〜30代の未婚男性は、恋愛経験が少なく、また未婚女性が求める年収が高いため、年収500万円未満の男性は年収の面でも相手から選ばれる確率が低くなることが想定されます。

ではどうして彼らは恋愛経験が少ないのでしょうか。年収だけが理由でしょうか。

年収だけじゃない! 研究対象者の結婚が実現しない理由とは?

お互いが結婚したいと思い合えるパートナーの獲得までには、「知り合う(=連絡先交換)」段階を経て、「特別な関係(=付き合う)」になる段階を経ていく必要があります。我々は、研究対象者が、異性と連絡先を交換するまでの段階と、その後関係を育み付き合うに至るまでの段階で、何が課題となっているのかを探るため、いくつかの調査を行いました。

1)研究対象者が参加する婚活初心者向けマッチングイベントの視察

婚活初心者向けで、かつ県主催のため年収や職業不問のマッチングイベントなら研究対象者の課題が見つかると考え、私たちは2024年2月、主催者の協力を得て、神奈川県の「恋カナ!プロジェクト」事業の婚活イベントを視察しました。参加者は神奈川県在住で、52%が25〜35歳。男性14名、女性11名で、1対1で3〜5分の対話を2回ずつ全員と行い、気になった2名に自分の連絡先を渡すことができるという内容です。

観察の結果、女性はにこやかに話している人が多く見られましたが、男性は表情が硬く、会話がぎこちない人が女性よりも多く見られました。また本イベントにおいてマッチングの結果、男性の人気は上位3名に集中し、カップリング(両思い)は3組、マッチングしなかった男性(連絡先をひとつももらえない人)は5名でした。

神奈川県が実施した参加者アンケートでは、「今回のイベントで参加者と十分にコミュニケーションを取ることができたか?」という質問に対して12%が「できなかった」、60%が「どちらともいえない」と回答しています。

以上の調査結果からは、研究対象者の課題として、婚活におけるコミュニケーションの難しさがあると言えそうです。

2)婚活におけるコミュニケーション能力が低い理由とは? 専門家にインタビュー

「恋カナ!プロジェクト」事業の婚活イベントの司会進行と参加者に婚活レクチャーをされていた婚活カウンセラーの内海秀治・りよこさん(シーネット結婚相談所)から、「私たちが実際にイベントに立ち会い、参加者の中にいると、婚活におけるコミュニケーションができていないという印象を受ける方が8割くらいいる」「たとえば女性が『夕日が綺麗ですね』と話したとしましょう。するとコミュニケーション能力の低い男性は夕日の屈折率の話をしてしまう。話が噛み合ってないんです」

と伺いました。

次に、成婚率95%を誇るMBA婚活心理カウンセラーの吉野麻衣子さん(株式会社SMART BRIDAL・代表取締役)に、研究対象者のコミュニケーション能力が低い理由についてうかがうと、想像力と表現力の欠如を指摘します。

「異性との正しいコミュニケーションを学ぶ機会が少なく、経験値が低いため、自分じゃない人の気持ちが思い浮かばない。それで自分の思考が優先になってしまうんですよね。たとえば、受け手がどう返していいかわからないLINEを送ってしまったり」

こうした、研究対象者の婚活におけるコミュニケーション行動には以下のような特徴があるとまとめることができます。

婚活におけるコミュニケーション能力が低い行動

・相手の反応を想像できずに話しているため、一方的な会話になる

・にこっと挨拶ができない

・自分のことばかりを書いたLINEを送ってしまう

・誤解をしたまま最後まで解決しない

・相手の本音が聞けず自分の価値観で判断してしまう

上記の行動を起こしてしまう理由

・過去のトラウマがあり、人と接するのが怖い

・ありのままの自分を認めて欲しい

・幸せにしてくれる人を選びたい、他力本願

・自分にとっての「幸せ」がわからない

・コロナの影響で人に会うのが面倒くさい

・想像力と語彙力の欠如

これらの観察やヒアリングをもとに、婚活におけるコミュニケーション能力が低い、その根底にある理由について、私たちも独自に検討してみました。

3)研究対象者の本音は?直接インタビューでの調査

私たちは、パートナーが欲しい、そして結婚を望んでいる、だが実現できていないという、年収500万円未満の25〜36歳の男性4名にインタビューを行いました(2024年5月にオンラインで聞き取り)。


①    Aさん(32歳・公務員・年収300〜500万円と回答)

結婚願望:

・35歳までにしたい

恋愛経験:

・大学時に1〜2カ月「付き合う経験をしたくて」付き合ったが、好きになれず破局。それ以降、付き合ったことはない

・マッチングアプリは未使用、現在パートナー探しはしていない。自称「人を好きにならない」

知り合う段階の障壁:

・自信の欠如

・共通の話題がない

特別な関係までの障壁:

・恋愛経験が少ない

・相手から自分への興味関心が低い

・相手との恋愛観や価値観の相違

<障壁を乗り越えられない理由(聞き取り過程での気づき)>

・男子校の寮生活で否定される文化で育ったからか、「自分なんか」と思ってしまい、自虐ネタが多い

・過去に異性とのコミュニケーションにトラウマがあるようで、「用がないと異性と話さない、何か聞かれたりもしない」「人は平気で嘘をつく」という発言あり


②    Bさん(31歳・システムエンジニア・年収420万円と回答)

結婚願望:

・35歳くらいまでにしたい

恋愛経験:

・大学時に友達以上恋人未満だった人と喧嘩別れをし、それ以外「付き合う」こと自体の経験はない

・現在はマッチングアプリで年10人くらいと会っており、そのなかで1カ月程度付き合った人が3人(マッチングアプリ代は月12,000円〜)

知り合う段階の障壁:

・自信の欠如

・多忙、時間がない

・相手選びの理想が高い

特別な関係までの障壁:

・相手への期待値が高すぎる

・失敗が怖い

・相手への興味関心が低い

・相手から自分への興味関心が低い

<障壁を乗り越えられない理由(聞き取り過程での気づき)>

・失敗が怖いため、相手の顔色をうかがいながら話してしまう

・「言葉選び」も微妙で、意図しない発言で相手を怒らせてしまったこともある

・「自分に甘い、口八丁でうまくやるが実力がない」「強引な方がモテるが自分にはそれができない」との発言あり


③    Cさん(36歳・カメラマンアシスタント・年収100〜200万円と回答)

結婚願望:

・40歳までにしたい

・子どもが欲しいという願望はない

恋愛経験:

・過去に2人付き合った人がおり、そのうち1人は結婚したいと言われたこともある(結局、Cさんがこれからの仕事について迷っていたので結婚には至らず)

・3〜4年マッチングアプリを利用。これまで10人くらいと会っている

知り合う段階の障壁:

・経済的問題

・身長(Cさんは166cm)

・相手選びの理想が高い

特別な関係までの障壁:

・経済的問題

・相手との恋愛観や価値観の相違

<障壁を乗り越えられない理由(聞き取り過程での気づき)>

・「文字で伝えること(LINEなど)が苦手」で、考えすぎるあまり、送るのが遅くなってしまい、うまくいかないことも

・「幼少期から恥ずかしがり屋であまりしゃべらない」

・「服は好きだが食や住まいはどうでもよく、ケチなのでクーポンをよく使う」。「(クーポン利用を)みみっちいと思う人とは合わない」とのこと。「経済的に自信がない」から独自の経済観念がある


④    Dさん(27歳・転職活動中・年収なし)

結婚願望:「今はわからない」

恋愛経験:

・恋愛経験はほぼなし。2回ほど異性と2人で食事に行ったがその後は続かず

・現在、好きな人がいて片想い中

知り合う段階の障壁:

・相手選びの理想が高い

特別な関係までの障壁:

・失敗が怖い

・恋愛経験が少ない

・相手との恋愛観や価値観の相違

<障壁を乗り越えられない理由(聞き取り過程での気づき)>

・好きな人はいるものの「関係を進めるのに勇気が出ない。どう進めたらいいのかわからない」

「コミュニケーション能力の低さ」の根底にあるものは?

専門家と研究対象者のインタビューを照らし合わせ、我々は結婚を実現するカギとなる異性とのコミュニケーション能力の根底にある「マインド」に、少子化改善の種があると考えました。

知り合うことが難しいAさんの話と専門家の話を照らし合わせると、「過去のトラウマがあり、人と接するのが怖い」ゆえに、「ありのままの自分を承認して欲しい」というマインドが根底にありそうです。他者を意識できていないため相手への想像力が欠如、かつ客観視できないので自己認識力が欠如し、相手に良いイメージを与えることができない、会話が噛み合わない、という結果に至っているようです。

特別な関係になるのが難しいBさん、Cさん、Dさんの話と専門家の話を照らし合わせると、傷つくのが怖く、自分に自信がないので、「(自分を変えずに自分を)幸せにしてくれる人を選びたい」という他力本願が生まれていそうです。ここでも「ありのままの自分を承認して欲しい」というマインドが根底にあり、だからこそ相手への想像力や、気持ちを伝える語彙力が向上しないという悪循環が生まれ、異性との関係を自らの手で創り上げていくことができないのだと思われます。それゆえ、一見相手を思いやっているつもりでも、相手にとっては勘違いや早とちりであったり、自分勝手な発言や行動と感じさせてしまうと考えました。

まとめ

「ありのままの自分を承認して欲しい」や「幸せにしてくれる人を選びたい」という他力本願マインドの調整を行いながら、想像力や語彙力の醸成を行うことが、異性と知り合い、特別な関係になり、結婚へとつながる第一歩となりそうです。

次回は、こうした状況を踏まえたうえで、具体的なソリューションを提唱します。


<参考文献>

(※1)男女共同参画白書2022|内閣府男女共同参画局

(※2)結婚できる高所得層・できない中間層の残酷格差|東洋経済ONLINE

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