少子化改善に効くITソリューションとは――MBA生が「婚活・少子化×テック」を本気で考えてみたVol.3

投稿日:2026/01/16更新日:2026/06/18

今回は、前回前々回の議論をベースに、ITを活用した具体的な少子化改善ソリューションを紹介します。なお、今回ご紹介するソリューション以外にも多数のアイデアを検討しましたが、すべての議論を紹介すると冗長になるため、最終結論に絞ってご紹介します。

※本連載はグロービス経営大学院の研究プロジェクトにおいて、5名(元泉、一宮、小林、多田、横山)の学生が、嶋田毅講師の指導の下、研究した成果をまとめたものです。

既存ソリューション:結婚相談所の課題

私たちは、ターゲットとしたボリュームゾーンである未婚男性(25〜34歳/年収500万円未満)の言動を単純に変えるのではなく、以下大きく2つのステップを経て、パートナーとなる相手のことを考えた上での行動変容に繋げることが有効だと考えました。

  • ステップ①客観視が難しいとされる水面下における異性とのコミュニケーションのためのマインド醸成を行う
  • ステップ②恋愛における各段階に必要な知性、意識を養い、その上で正しい知識・スキルを身に着けてもらう

では、そのためにはどのような課題を乗り越える必要があるのでしょうか。

課題解決を行えるソリューションは、現時点でも存在しています。それは結婚相談所が提供しているサービスです。恋愛における専門家はプロの視点で相談者を客観視し、リソースを養うためのマインド醸成、および正しい知識・スキルを身に着けてもらうためのメソッドを保有しています。大規模な結婚相談所においては、これらのノウハウをパッケージ化し、各種フレームワークやシステムなどを提供できるよう、フランチャイズ化もされており、多くの人が利用できるような店舗展開がなされています。

加えて、単純なメソッド提供に留まらず、各個人それぞれの属性に合わせた分析を行うことで、パーソナライズ化され、適切な形でのサービス提供が行われている点においても、非常に効果を生みやすいサービスと言えるでしょう。

それにもかかわらず、なぜ現代において、少子化における課題は解決されていないのでしょうか。いくつかのポイントに沿って考えてみたいと思います。

1)インパクトが出せる人数にソリューションが提供できていない

現在、国内における結婚相談所で最も多い会員数であるIBJ(日本結婚相談所連盟)の2024年4月時点員数は89,620名です。未婚者1,875万人の内、恋人が欲しいと思っている847万人、さらに絞り込んだ恋人がいる方で結婚をしたいと思っている人342万人に対してもわずか2.6%程度とまだまだ結婚相談所利用者数は多いとは言えません。(※1)

理由①心理的障壁の高さ

私たちが独自取材を行った結果からは、いまだに結婚相談所への入会という行為に対し、心理的障壁の高さを持っている人が多いという点が見てとれました。日常的な恋愛活動を通じ、出会い、特別な関係になっている人が8割以上いる(※2)にもかかわらず、自分だけが他の人と同じような恋愛ができていない、という点が心理的にマイナスに働いていると考えられます。

実際、私たちがインタビューをした方の中でも、結婚相談所を活用し、めでたく結婚をされたにもかかわらず、周りの友人を含め、結婚相談所を利用したことを公言していないという方がいらっしゃいました。

理由②費用の課題

結婚相談所では、主に「入会金」、「月会費」、「個別面談費用」、「成婚時における成功報酬」といった費用がかかってきます。結婚相談所にもよりますが、入会の初期段階で数十万と一般的にはとても高い費用が発生し、かつ活動中における食事代、デート代といった費用は当然ここに含まれません。

短期的で効率よく結婚活動ができるという点で、そのコストを支払う価値があると考える人もいる一方で、今回我々がターゲットとしている低収入層における年収と比較すると、相当な費用になるため、障壁が高く、利用を諦める可能性が高いと考えられます。

理由③時間の制約

結婚相談所でパートナーとの初回マッチングに成功した際には、毎日連絡を取り続け、原則1週間以内にデートをしなければならない、というルールがあります。また、デートを行った際は、決められた期間内に、成婚するか否かを決めなければならず、短期間に効率よく複数のパートナーとの成婚可否を見極められる一方、仕事等との兼ね合いもある中、結婚という大きな決断に対して早急に決断を迫られるという難しさがあります。

それゆえ、結婚相談所へ入会はしたものの、自身の恋愛活動におけるスピード感に合わず、退会をする人も相当数存在しているのです。

理由④対人サービスゆえのスケールのしにくさ

大手結婚相談所での店舗拡大、フランチャイズ化等、サービス展開は広がる一方で、本ソリューションの要となるマインド醸成、知識・スキルの定着については、対人で行っているサービスです。そのため、多くの相談者に対し、サービスを提供することにリソース面での限界が生じます。

電話やオンライン面談等、移動時間を効率化できるようなサービスも存在しますが、それでも提供には限界があり、特に能力の高い相談員については、常に予約が取りづらい状況です。相談員の能力によって結果に影響が出ることも予想されます。

2)利用目的(ゴール)が異なる

結婚相談所が目的としているのはパートナー同士の「結婚(役所に婚姻届を提出し、入籍をすることで法的に夫婦として認められる状態)」ではなく「成婚(お見合いを経て真剣交際が開始された状態)」です。

複数回のデートを重ねた結果、成婚を選択したパートナーは成婚報酬を相談所へ支払い、相談所を退会する必要があります。これは複数人のパートナーとの恋愛を並行して実施させることでのトラブル防止や、一部の相談員に成婚依頼を集中させないといった理由からも必要な措置です。

私たちが目的とする未婚者率を減少させることは、結婚相談所における成婚ではなく、実際の婚姻者数を増やすという点であることからも、最終的な目的が異なっていると言えます。

さて、こうした結婚紹介所の課題をクリアし、さらにスケールさせることを念頭に置いた上で、ソリューションを提案します。

ソリューションの提言

新しいソリューションに必要とされるものとは

私たちは、恋愛活動では、各フェーズにおいて実践の場に出る前に予習を行い、実践の場でその予習した内容を活用し、実践後には振り返りを行うことで、恋愛・結婚におけるマインド醸成、知識・スキルを向上させることができると考えました。これらの要素を組み合わせたソリューションを提供することにより、マッチング、恋愛、婚姻数を増加させ、少子化改善につなげることが期待できます。

我々が考えるソリューションの構成要素としては、大きく以下の3つがあります。

①    現状可視化
テクノロジーを活用し、現在のコミュニケーション能力や恋愛力の状況を可視化します。自身のできている点と改善点を理解・把握してもらうことを主眼とします。

②トレーニング
一問一答で知識を確認し、対話ラリーで説明力や質問力の強化を図るなど、より実践を考慮した現実相当の対話トレーニングを行います。

③フィードバック
現在のレベルを評価し、スキルアップをサポートします。知識面、相手の理解のしやすさ、質問の適切性等から、改善点と総評を実施します。

AIを活用した異性とのコミュニケーショントレーニングアプリが少子化に歯止めをかける!

これらの構成要素を実現する具体的なソリューションは以下のようなものです。

「AIアバター」×「ChatGPTロールプレイ」×「婚活ノウハウ」を組み合わせた異性とのコミュニケーション能力を高めるAIトレーニングアプリ

・AIアバターによるリアル異性ロールプレイ
AIアバターにより、リアルな人型アバターを生成します。顔の動きや表情、声のトーンまで、あたかも実際の人と会話しているかのように再現します。ロールプレイツールと組み合わせることで、よりリアルに異性とのコミュニケーション・ロールプレイを実現することができます。

・ChatGPTロールプレイによるコミュニケーション能力向上
コミュニケーション能力向上が行えるロールプレイツールを採用します。ユーザーが生成AIとの対話を通じ、婚活に必要な能力を磨きます。真のパートナーニーズを特定し、相手に求められるような話術を覚え、関係性を深化させ、次のステージへと導くロールプレイが可能となります。

・婚活ノウハウおよびAI教師データの提供
対象者の婚活に必要なスキル向上と、マインド醸成を中心としたイベントを多く実施している結婚相談所との業務提携を実施します。結婚相談所が保有する婚活ノウハウをAI教師データとしてトレーニングアプリに適用させます。

上記3つの要素を掛け合わせることで、現実に近い、よりリアルな異性とのコミュニケーションスキルに加え、結婚相談所の高度な恋愛知識・ノウハウを自宅のPC環境で習得しながら、コミュニケーション能力向上を実現します。

これを繰り返し使用することにより、研究対象者のマインド醸成、知識・スキルを定着させ、行動変容につなげ、適切に各フェーズへとステップを踏んでもらいます。テクノロジーという広範に提供できるその特性を活かすことで、改善インパクトを与え、少子化問題を解決へと導きます。

 第1回~3回までの議論をまとめると以下のようになります。

おわりに

私たちは、合計特殊出生率低下の原因を未婚率の高さに特定し、300万人を超えるボリュームゾーンである「年収500万円未満の25~34歳男性」を研究対象者としました。そして、専門家や研究対象者へのインタビュー、婚活イベントへの視察を行った結果、彼らの未婚の原因が「コミュニケーション能力の低さ」にあると考えました。さらに、「ありのままの自分を承認して欲しい」や「幸せにしてくれる人を選びたい」という他力本願マインドの調整を行い、想像力や語彙力の醸成を行うことが、異性と知り合い、特別な関係、結婚へとつながる第一歩と結論づけました。

 この課題は結婚相談所で解決できますが、「心理的障壁の高さ」や「費用の課題」などによりスケールアップするには限界があることから、「AIアバター」×「ChatGPTロールプレイ」×「婚活ノウハウ」を組み合わせたAIトレーニングアプリをソリューションとして提言しました。結婚相談所のノウハウをスケールさせ、マインド変革とスキルアップのサービスを提供し、『現状可視化→トレーニング→フィードバック』のサイクルを回していくことで、婚姻数の上昇、合計特殊出生率の下降トレンドを止められると期待しています。

婚活におけるコミュニケーションに悩みを持つ人々を救うことは、それだけにとどまらず、この社会に多く存在する、対人コミュニケーションにおける悩みを持つ人々の助けにもなると私たちは考えています。このソリューションを通して、少子化対策だけではなく、社会全体における様々な課題の解決に役立てられることも期待し、研究の結びとします。


<参考文献>

(※1)少子化課題における解決優先度に関するレポート(2016)|リクルートブライダル総研

(※2)恋愛結婚・美愛結婚の割合推移|内閣府男女共同参画局

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