常に革新的な新製品や新サービスを生み出し続ける力を持つことで、持続的に成長し、競争の激しい市場で生き残る企業。そんな企業群には「社内の仕組み」や「組織文化」に共通の要件が存在するのではないでしょうか。
本連載では具体的な企業の事例分析を通じ、新製品や新サービス開発に強い組織要件について、典型的なプロセスや超えるべき難所を克服する重要キーワードを見出します。前回までは、3M、YKK、任天堂、ユニクロ(ファーストリテイリング)、セブン-イレブン、マクドナルド、Amazon という7社の特徴を整理してきました。今回は、これらの特徴を共通点、相違点より考察し、成功要因を探ります。
※本連載は、グロービス経営大学院に在籍した戸田祐介、狭間孝征、櫻井秀行、伊藤沙織、古中俊康が、嶋田毅講師の指導の下で進めた研究プロジェクトの成果をまとめたものです。
4つの切り口から共通点を分析
考察は、前回までに示した個社分析やその他の情報より、各社の特徴や特に重要なキーワードを選定し、他との共通点を洗い出しました。共通点を掘り下げる切り口としては、以下4つについて考察しました。
(1) 業界分類
(2) プロダクトライフサイクル(PLC)
(3) ビジネス特性
(4) 競合他社との差異
(1)業界分類
業界を分類するにあたり、今回は市場規模と利益率という2軸でマトリクス化し、それぞれの象限を「花形」「激戦」「苦境」「発展途上」としました。下図はこのマトリクス図に、各社とそれぞれが属する業界をマッピングし整理したものです。
花形/発展途上の共通点:3M、YKK、ユニクロ、任天堂

l クロスファンクション:部門を越えての情報交換により、全体最適化を図る。
l ナレッジシェアリング:成功事例及び失敗事例を社内で共有し、従業員の知識やノウハウの蓄積に繋げている。
苦境/激戦の共通点:Amazon、セブンイレブン、マクドナルド

l ローカライズ:国や地域の文化、規制などの特性に合わせて製品やサービスを調整、適性化している。
l 企業を純粋想起:○○と言えば、××と消費者がその企業を直接的かつ明確に関連付ける。
(2)プロダクトライフサイクル( PLC)
プロダクトライフサイクルとは、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つの段階で製品・市場の成長パターンを示したものです。下図では、今回の対象企業7社をPLCに当てはめており、同じ段階にある起業の共通点を整理しました。
成長期の共通点:Amazon、ユニクロ、任天堂

l 価値観のマッチング(採用・配置):企業の価値観に沿っているかを確認し、入社後のサポート、組織文化への馴染みやすさなどにより優れた人材獲得と定着が図られている。
l 徹底力:従業員一人ひとりがビジョンや目標に向かって主体的に行動し、常に最高の品質やサービスを提供することを追求している。
この他にクロスファンクションも共通点として上げられる。
成熟期の共通点:3M、セブンイレブン、YKK、マクドナルド

l 標準化:高品質の商品を全ての顧客に対して同じクオリティで提供できるような仕組みを構築。いつ誰が作っても提供品質が均一となるように徹底的にこだわっている。
l コアバリューへの評価制度:コアバリューを「価値行動基準」(YKK)として評価し従業員として、普遍的に求められる行動として定めている。また、自分の仕事だけでなく他部署への協力が評価されるなどの企業(3M)もある。
この他にローカライズも共通点として挙げられる。
(3)ビジネス特性
今回分析を行った7社はいずれも新商品開発に強みを持つとして選定した企業ですが、この新商品とは、モノあるいはサービスに分類することができます。それぞれに分類して、共通点を整理しました。

「モノが強い」の共通点:3M、YKK、任天堂、ユニクロ
再現性を実現する標準化、顧客に寄り添ったローカライズ、ナレッジシェアリングによる知見集約が挙げられます。
l 再現性を実現する標準化
RWW、NUDなどのフレームワークを駆使(3M)
l 顧客に寄り添ったローカライズ
グローバル製品を日本の顧客に合うように改良(3M)、海外現地法人社長の半数でローカル人材を配置(YKK)、期間限定商品の決定権は日本法人に委譲(マクドナルド)
l ナレッジシェアリングによる知見集約
技術専門職の賢人から学ぶ場の提供(3M)、「善の巡環」等の𠮷田氏の名言(YKK)
「サービスが強い」の共通点:Amazon、マクドナルド、セブンイレブン
企業を純粋想起できる顧客価値の提供、高いサービス力を展開する人材育成、徹底力に拘る組織文化の構築が挙げられます。
l 企業を純粋想起できる顧客価値の提供
圧倒的店舗数とCMでハンバーガーのイメージを植え付け(マクドナルド)、「ファスナーと言えば」を想起(YKK)
l 高いサービス力を展開する人材育成
ハンバーガー大学、ユニクロ大学での専門教育、顧客志向を高めるための現場実践(セブン-イレブン)
l 常に「徹底することに」拘る組織文化の構築
承認判断基準の明確化、一切の妥協はなし(セブンイレブン)、顧客サービスを徹底する店舗の実現(マクドナルド)
(4)競合他社との差異
研究対象企業の属する業界のうち、その競合の事業形態が似ているコンビニエンスストアおよびハンバーガーチェーンで、各社の差異を分析しました。
分析指標としては、セブンイレブンおよびマクドナルドが重視している事項として①徹底力、②再現性・一貫性、③クロスファンクション、④人材育成、⑤店舗オペレーション、⑥ダイバーシティ、⑦ローカライズを選定し、これを比較しました。
セブンイレブン vs ローソン vs ファミリーマートの差異点
すべての要素において、セブンイレブンが勝っているわけではないが、再現性・一貫性を作る仕組みや組合各社との連携に注力しており、これにより、商品開発に一切妥協しない徹底力を生み出している。加えて、人材育成、店舗オペレーションを強みにしており、これが継続的に勝ち続ける企業作りにつながっている。
一方、ローカライズに関しては3社ともに全国各地に出店し、地域に応じた商品開発等を行っており、差はみられない。
<グラフ1:コンビニエンスストア3社の分析比較>

マクドナルド vs ウェンディーズの差異点
全ての面でマクドナルドが優勢。特に商品提供の現場となる店舗での戦力になる「人材育成」や「店舗オペレーション」の項目は特に差が大きく、その差が徹底力の差となって現れている。「ダイバーシティ」の項目は2社の差はなく、グローバル企業同士の特徴ではないかと推察する。
<グラフ2:ファストフードチェーン2社の分析比較>

今回は成功企業の共通点を、複数の切り口で分析した結果、共通点のキーワードや競合との差異が見えてきました。
次回最終回では、ここまでの分析を集約し、成功企業の組織要件と組織を変革するための実践方法を探ります。
(次回に続く)

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