少子化改善のカギは「未婚率」の上昇に歯止めをかけること?――MBA生が「婚活・少子化×テック」を本気で考えてみたVol.1

投稿日:2026/01/14更新日:2026/06/18

今、日本において出生数の減少が続いており大きな社会課題となっているのは周知の事実です。厚生労働省によれば2024年6月には出生数は72.7万人、婚姻数は47.4万組と過去最低を記録しており、2000年、2015年、2023年の推移は以下の表のようになります。仮に2015年から2023年までの年平均減少率が2035年まで続くとすると、出生数は44万人、婚姻数は30.2万組まで減少します(※1)。 

この調子で少子化が進むと、経済規模の縮小、労働力不足、社会保障制度の破綻など、様々な弊害が生じます。では、どうすればこれを食い止められるのでしょうか。

そこで本研究では、少子化に対して即効性のあるインパクトを出しながらも、スケール化できるよう、ITを活用した解決策を検討、提示することとしました。全3回に分け、その成果をお伝えします。

※本連載はグロービス経営大学院の研究プロジェクトにおいて、5名(元泉、一宮、小林、多田、横山)の学生が、嶋田毅講師の指導の下、研究した成果をまとめたものです。

少子化の原因は「未婚率」?「出生率」?

政府は、少子化の定義を「合計特殊出生率が人口を維持するのに必要な水準を相当期間下回っている状況」としています。「必要な水準」は2.07ですが、2023年は戦後最低となる1.20となっています(※2)。なお、合計特殊出生率は、以下の式で表すことができます。

合計特殊出生率=有配偶率×有配偶出生率
(有配偶率= 1-未婚率)

有配偶率を用いるのは、日本においては婚外子が全体の2.3%(※3)と少ないためです。

本研究では、少子化の原因を分析するにあたり、有配偶率を「結婚フェーズ」、有配偶出生率を「妊娠・出産フェーズ」として検討しました。

先に「妊娠・出産フェーズ」の変化について整理しましょう。図1に合計特殊出生率の推移を示します。2005年まで出生率は下がっているものの、その後は上昇しています。これは、図2に示した通り、主に30代女性による出生率が上昇したためです。ただ、2015年以降は合計特殊出生率が大きく低下しています。ボリュームゾーンである25~29歳女性、30~34歳女性による出生率の低下を反映しています。

図 1 合計特殊出生率推移 厚生労働省『人口動態統計』より作図
図 2 女性の年齢別の出生率 厚生労働省『人口動態統計』より作成

フォーカスすべきは「未婚率」の高さ

今回、私たちは「結婚フェーズ」で結婚の実現が困難だと感じている人へのソリューションの提供にフォーカスして検討することにしました。

その理由は、婚姻について未婚者と既婚者に二分したとき、それぞれ以下2つのような特徴があるからです。

未婚者の特徴

●恋人が欲しい・結婚したいが、「できない」人が多く、改善感度が高い

国勢調査とリクルートブライダル総研の「少子化課題における解決優先度に関するレポート(2016)」(※4)によると、「恋人が欲しい」「結婚がしたい」という層は、それぞれ847万人と342万人に上ると推計され(計1,189万人)、20〜49歳の未婚者1,875万人の内、63%をも占めます。「恋人が欲しいができない」「結婚したいができない」ということが、結婚から妊娠出産に至るステージの中で大きな障壁となっているのです。

既婚者の特徴

●子どもを持たない理由や、2子、3子を作らない理由は、夫婦によって千差万別。加えて、社会制度にも関連しており、アプローチが難しい

リクルートブライダル総研の「少子化課題における解決優先度に関するレポート(2016)」 (※4)における妊娠出産ステージの結果をみると、子どもが「できない」という「実現的な困難」より、「子どもが欲しくない」「(子どもがほしいかどうか)どちらともいえない」という「意欲の低下」層の割合が高く、ボリュームゾーンであることがわかります(「意欲の低下」層の割合 子どもなし既婚者:56.5%、子ども1人の既婚者:52.6%、子ども2人の既婚者:79.3%)。

加えて、私たちは2024年1月、結婚と妊娠出産の考えに関するアンケートを実施し、20〜50代の働く男女358名の回答を得ました 。その中から、妊娠出産に対して意欲が低い層(子どもがいない既婚者で、子どもを「現在欲しいとはいえない」方)を対象に詳細なインタビューを実施しました(2024年1月~2月実施。対象:4名)。 

インタビューの結果、子どもを欲しいとは言えない理由は、経済的要因、就業環境要因、転職・転勤のタイミングなどだけでなく、夫婦との時間を大切にしたい、キャリアを諦めたくない、パートナーが希望しない、親になる自信がない、子どもにとって生きづらい世の中であるなど多種多様でした。

以上の結果から、既婚者の問題を解決するよりも、独身者の問題を解決する方が改善感度も高く、アプローチしやすいと考えました。

結婚できる人の特徴は?専門家へのインタビュー調査

続けて私たちは、結婚したい人が結婚できるように支援をしている専門家として、結婚相談所のカウンセラー3名へのインタビュー調査を行いました。インタビュー調査は、2024 年1月、3月にオンラインで聞き取りしたものです。「成婚できる方の特徴を挙げてください」という質問に対して3名が回答した内容のうち、共通するものは以下の通りです。

  • 男女ともに清潔感のある写真が好まれる
  • 女性は年齢が若いほうが好まれる
  • 男性は年収が高いほうが好まれる

これはよく言われることではありますが、改めてこれらに当てはまる人々が、成婚しやすい傾向にあるということがわかりました。

「結婚したいのにできない層」における仮説検証

わたしたちは「結婚したいのにできない層」のうち、さらに25~34歳の方と年齢でターゲットを絞り込むことにしました。その理由は以下の通りです。

1)妊娠率の高い時期である

私たちはインパクトの出やすいターゲットに向けた少子化対策への提示を行おうと考えています。そこで考慮に入れるべき点として年齢が上がると妊娠率が低下するという事実があります。

調査によれば、妊娠率は30歳以上で徐々に下がり、35歳以上からその下がり幅が大きくなっています。もちろん医療技術の進化で改善は見込めますが、今回のIT活用という方向性のみではインパクトを出しにくいと考えられます。

図 4 ART妊娠率・生産率・流産率 一般社団法人日本生殖医学協会(※6)

2)学生が多く、子どもを持つ意識はまだ低い

調査によれば、日本においては中学校あるいは高校を卒業したのち、全体の76.4%(4人中3人)が専門学校・短大・大学いずれかの高等教育機関に進学しています。すると、24歳以下の方の多くは学生である可能性が高く、出産しても子どもを養う余裕がないと推察されます。また意識調査においてもまだ子どもを持とうと思う意識が著しく低いこと(※7)から、ターゲットから外すことにしました。

年収と未婚率の関係

続いて私たちは「年収」という項目に関して、特に「年収の低い男性は、結婚したくてもできていない」という仮説を立てました。これを検証するため、25〜34歳の男女別、年収と未婚率の関係性を見ていきます。

図 5 25~34歳男性における年収と未婚率の関係 就業構造基本調査 令和4年就業構造基本調査 地域編(※8)を基に作図

男性は年収の低い方の未婚率が高い傾向があり、年収500万円までの方は、年収500万円以上の方と比べ、それが顕著です。つまり「結婚したいのにできない層」の中で、男性は年収の低い方が結婚できていないということがわかりました。

図 6 25~34歳女性における年収と未婚率の関係 就業構造基本調査 令和4年就業構造基本調査 地域編(※9)を基に作図

一方、女性は、年収と未婚率に関係性が見られませんでした。

以上のことから、私たちは、25〜34歳の男性は年収が低いことが起因して、結婚したいのに結婚できない状況にあると考えました。

まとめ

少子化対策は早急に対処すべき社会課題です。ボリュームゾーンに対してインパクトを出しやすい取り組みをするには、 結婚したいができない層のうち、女性は年収と未婚率に関係性が見られないため、「年収500万円未満の25~34歳男性」をターゲットにすべきと結論づけました。

次回は、ではなぜ彼らが結婚できないのかを、ヒアリング等を通じてさらに深く考察します。


<参考文献>

(※1)令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省

(※2)令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

(※3)人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生|総務省統計局

(※4)少子化課題における解決優先度に関するレポート(2016)|リクルートブライダル総研

(※5)男女別年齢と未婚率の関係性 就業構造基本調査 令和4年就業構造基本調査 地域編|総務省統計局

(※6)ART妊娠率・生産率・流産率|一般社団法人日本生殖医学協会

(※7)「若者の意識に関する調査」平成25年3月実施|厚生労働省

(※8)25~34歳男性における年収と未婚率の関係 就業構造基本調査 令和4年就業構造基本調査 地域編|総務省統計局

(※9)25~34歳女性における年収と未婚率の関係 就業構造基本調査 令和4年就業構造基本調査|総務省統計局

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