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コミュニティで人は“幸せ”になれるのか?―コミュニティの力とは Vol.2

投稿日:2023/04/12

Vol.1では、日本社会のコミュニティの変化と幸せの関係を見てきました。Vol.2では、コミュニティに参加することで得られる効用について考えていきます。

アンケート概要 幸せを感じる4因子で分析

「コミュニティに参加することで幸せになれるか」ということを検証するために、ビジネスパーソンを対象に前回紹介した前野隆司氏作成の「幸福度テスト」を用いたアンケートを実施しました。

前野氏は、次の4つの因子(やってみよう因子、ありがとう因子、なんとかなる因子、ありのままに因子)が高いほど、心理的に幸福を感じられるという研究をしています。

アンケートでは、下図の「幸福度テスト」の16項目について、1-7点で今の自分について評価してもらいました。また「コミュニティ参加経験有無」と「コミュニティ参加時の役割(主催者/参加者)」についても聞き、742名から回答を得ました。

   (引用元:前野隆司著 『実践ポジティブ心理学』(PHP新書))

アンケート結果①コミュニティ参加経験がある方が幸せを感じる

コミュニティ参加経験者と未経験者との4因子の平均点差異を検証したところ、「やってみよう因子」(自己肯定感が強く、主体的に仕事に取り組む)、「ありがとう因子」(周囲に感謝し、利他的に振舞う)、「なんとかなる因子」(楽観的でチャレンジする)の3因子についてはコミュニティ参加経験者の方が高い平均点でした。この結果、コミュニティ参加経験がある方が個人の幸せをより実感していると言えます*。

なお、「ありのまま因子」(人の目を気にせずに自分らしくいる)についてはコミュニティ参加有無による違いはありませんでした。

*やや専門用語になりますが、Welchのt検定で確認した結果、統計的に有意な差が認められました。

図1:コミュニティ参加経験者と未経験者との比較

アンケートで受領したコミュニティ参加経験者のコメントを紹介します。ここから、コミュニティには、他者からの刺激で意欲がわいたり、他者とのかかわりで安心感や喜びを得たり、悩みを解消できるといったポジティブな効果があることが伺えます。

<やってみよう因子>

  • 挑戦の機会が増えた
  • 前向きに取り組んでくれる仲間から、刺激を受け自分も頑張ろうと思えた
  • 仕事の悩みを話し、ヒントを得たり、勉強を継続する意欲が続いたりした

<ありがとう因子>

  • たくさんの人と話すことで自分についてより深く理解できたり、他者に尽くすことで感謝され嬉しくなったりして日々の生活がより良くなっている
  • 多様な人とのつながりによる安心感、嬉しさ、楽しさ、視野の広がりが得られた
  • 他の人と共感できる事がとても嬉しく感じられ、日頃の社会の事を忘れられる

<なんとかなる因子>

  • 会社等からの逃げ場所があるということは精神に安心を与える
  • 仲間が増え精神的に安定した
  • たくさんのメンターと相談相手に恵まれ、自身の成長や悩みの解消に繋がりました

アンケート結果②コミュニティの主催経験者が最も幸せを感じる

コミュニティに参加したほうが幸せだということはわかりましたが、参加の仕方で幸福度に違いはあるのでしょうか?ここでは、コミュニティ参加時の「主催経験者(活動方針の作成やイベント企画等を主体的に行う役割)」と「イベントへの参加のみ」の役割経験の違いによる4因子の差異について見ていきたいと思います。

なお、「イベントへの参加のみ」については、更に「積極参加者(イベントがあれば基本的に全て参加)」と「時々参加者(時間の都合がつけば参加)」の2つに分けてアンケートを実施しました。

 図2:コミュニティ参加時の役割経験違いによる比較

コミュニティ参加経験有無と同様に、「やってみよう因子」、「ありがとう因子」、「なんとかなる因子」の3因子については参加者よりも主催経験がある方が高い平均点という結果を得ました。このため、コミュニティ活動においては主催経験がある方がより幸せを実感していると言えます。

なお、参加者の区分(積極参加と時々参加)については、統計的な有意差は得られませんでした。また、コミュニティに費やす時間と幸せの4因子についても特徴的な傾向は特に得られませんでした。参加者としてのコミュニティへの関与方法や費やす時間は特段気にしなくとも一定の幸せを実感できると言えます。

一歩踏み出してコミュニティに参加しよう

アンケート結果からは、コミュニティに参加することで幸せを得ることができるという結果が得られました。

コミュニティ活動で何かにトライする中で、他のメンバーとの助け合いや異なる考え方や属性の人たちとの交流などから、新たな視点を得る。自己理解が深まり、今まで気付かなかった自分自身の強みを発見する。活動に参加してよかったという気持ちから、周囲への感謝が生まれる、こうした姿が浮かびあがってきました。やってみよう因子、ありがとう因子、なんとかなる因子の高まりは、コミュニティにおけるこのような体験を通じ、相互作用的に高まる側面もあると考えられます。

特に、一参加者としてよりも、主催者の方がより幸せを実感していることが分かりました。これは、主催経験がある方がより能動的にコミュニティ活動に寄与しており、達成感を得ているためと考えられます。

はじめてコミュニティに参加するときは誰もが、緊張、もしくはためらいを感じると思いますが、その最初の壁ともいえるものを突破し、一歩踏み出した先で得られることは大きいです。

コミュニティに参加する一歩として、自分にとって「活動に加わりたい」、「中の人々と知り合いたい」と思えそうなテーマは何かを考えてみるのがいいでしょう。例えば、あなたの趣味や好奇心を軸に考えてみてもいいし、社会課題や高めたいスキルでもいい。

それでいて、いずれは主催に関わりたいと思えるようなコミュニティだと、なお良いでしょう。主催にかかわれるほど、そのコミュニティの活動が活発かどうかも確認する必要があります。どのような活動がどの程度の頻度で開催されているかなどを調べるとよいでしょう。 次回は、コミュニティを通じて幸せになっている人はどんなコミュニティに参加しているのか、また、コミュニティからどのような影響を受けているのかについて、紹介していきたいと思います。

Vol.3につづく(4月19日公開予定)

  • 植松 絵里

    グロービス経営大学院卒業生

    グロービス経営大学院卒業生。研究プロジェクト「コミュニティの力とは」執筆。

  • 大内 鉄平

    グロービス経営大学院卒業生。研究プロジェクト「コミュニティの力とは」執筆。

  • 古仲 研一

    グロービス経営大学院卒業生

    グロービス経営大学院卒業生。研究プロジェクト「コミュニティの力とは」執筆。

  • 僧野 大介

    グロービス経営大学院卒業生

    グロービス経営大学院卒業生。研究プロジェクト「コミュニティの力とは」執筆。

  • 多田 歩美

    グロービス経営大学院卒業生。研究プロジェクト「コミュニティの力とは」執筆。

  • 田久保 善彦

    グロービス経営大学院 副学長

    慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行なう傍ら、グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会教育問題委員会副委員長(2012年)、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社)、『日本型「無私」の経営力』(光文社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)、『MBAクリティカル・シンキングコミュニケーション編』、『日本の営業2010』『全予測環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『東北発10人の新リーダー 復興にかける志』(河北新報出版センター)、訳書に「信念に生きる~ネルソン・マンデラの行動哲学」(英治出版)等がある。

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