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社内政治の鉄則(2) 勝てない戦いで討ち死にするな

投稿日:2016/12/02更新日:2019/08/29

社内政治の傾向と対策を考える本連載。今回は、パターン2の「勝てない戦いを挑んで討ち死にする」を考えてみよう。ケースの主人公は第1回に続いてグロービス経営大学院卒業生の青山さん(仮名)だ。

パターン2: 勝てない戦いを挑んで討ち死にする

【ケース】
青山は自らの変革案が強い抵抗にあい、会社を去った。経験を生かすため、転職先は再びイベント業界を選んだ。「今度こそ成功して見せる」。上昇志向の強い青山は再起を誓い、次の転職先B社でも猛烈に働き、わずか数カ月で部長に昇格した。青山は自信を取り戻していた。

青山とほぼ時を同じくして力石という切れ者がB社に入社した。力石はイベント業界での経験は浅いが、コンサルタントとして大活躍してきたという定評。青山の力石に対するライバル意識は日に日に高まり、その態度にも顕れるほどだった。議論で劣勢に立たされると、「それでは現場は動きませんよ。もっと現場のことを理解したうえで発言してください」と、力石の現場経験の乏しさを突いた。ところが、力石はその実力と実績が認められ役員に昇格した。「なぜ力石が先なのか?」と、青山は心中穏やかではなかった。

その年の期中、全社の予算達成が厳しい見込みとなり、コスト削減が経営から全部長に対して言い渡された。その主管役員が力石だった。青山はコスト削減検討会議の議論を効率的に進める狙いと、自分をアピールしたいという気持ちが相まって、フライング気味かと思いながらも、自分が考えるコスト削減案を全部長と力石に電子メールで送った。

それが力石の怒りを買った。力石は自分がリードする全社会議でしっかり議論し、コンセンサスを得ながら、まとめていこうと考えていた。青山の行動は唐突で、スタンドプレーに見えたのだ。しかも、青山の案には役職手当の見直しなども含まれており、経営に対する挑戦のようにも感じられた。

それを期に青山は主要な会議からすべて外されてしまった。「またか!どの会社も同じだ!」。 経営陣に不信感を抱いたまま退職を決意した。

宣戦布告する前にやるべきことをやろう

【講師解説】
青山は、力石に対するライバル心や負の感情を意識的に相手にぶつけた。これは相手に宣戦布告しているのと同じである。だが、最初から青山に勝ち目はなかった。

第1に、力石は能力的に切れ者で、パーソナル・パワー面で青山に全く引けを取らないどころか勝っていた。社内の各部門メンバーとの関係性(リレーショナル・パワー)は、両者とも中途で入社時期はほぼ同じなのであまり差はない。青山はイベント現場の経験で勝るが、力石はコンサル経験に長けており大きなハンディにはならない。そして何よりも役員であるという絶対的なポジション・パワーを持っている(注1)。その差は歴然としていたのである。では、勝つためにはどんな準備が必要だったのか。

戦う前に、相手が自分のパワー源泉に大きく依存している状態を作ることが重要だ(注2)。力石が青山の力を借りなければ何か大事なことができないような状態であれば、青山を無下には扱えない。だが、力石は青山に頼る必要が全くなかった。この状態でポジション・パワーを持っている力石に宣戦布告しても無駄だ。青山は、勝てない戦いを自ら挑んでしまったのだ。

最大の問題は、
青山は力石に対する負の感情、嫉妬心をあからさまにぶつけてしまったことである。

負の感情のエネルギーは強大である。それを闇雲に憎い相手にぶつけても泥沼に陥るだけである。冷静に時機を見て、そのパワーを自己成長のために転じるという判断ができるかどうか。臥薪嘗胆と言う。力を蓄え、チャンスを待つことも戦略である。

(注1)3つのパワー源泉(McGinn and Lingo)
ポジション・パワー(公式の力): アサイン権限や、許可、予算、報酬、情報、材料を握っている、など
パーソナル・パワー(個人の力): 信頼性、専門性、実績、カリスマ、魅力、スタミナ、 コミュニケーション力、など
リレーショナル・パワー(関係性の力): 提携する、頼れる、互恵性(多様なネットワークの中心にいて、精神的支援、助言、情報、資源を得られる力)、など 

(注2)相手への影響力  自分のパワー源泉の大きさ × 相手の自分への依存度 と考えることができる。したがって、自分のパワー源泉を高めるだけでなく、それに相手が依存している状態を作らないと影響力は高まらない。

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