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聴く力と知性とは?篠田真貴子氏が指摘する「聴く」に対する誤解

投稿日:2020/09/17更新日:2021/10/27

今や多くの会社が取り入れている1on1。グロービスも導入していますが、特に上司側から「部下の話をしっかり聴いたうえで的確な反応をすることが難しい」といった声をよく耳にします。そこで、オンライン1on1サービス「YeLL」を展開するエールの篠田真貴子さんをお招きして勉強会を開催し、聴く力をどうすれば身に付けられるのか、1on1を効果的な場にするにはどうすればよいか、そして「聴く」力と知性について、お話しいただきました。(全2回前編、後編はこちら

アンケート結果から見えた部下と上司の「聴く」に関する差

篠田:エールの篠田真貴子でございます。エールにジョインしたのが今年の3月で、ちょうど4カ月たったところで(勉強会実施は、6月末)、エール篠田として何を考えているか、何をやっていきたいかは、まだ勉強中なところがあります。

一方、これまでの経験の中で、私なりに「聴く」ということは何であるか、自分にとってどう大事なのかは、自分なりに考えてきた流れがありますので、そこを今日の枕として冒頭でお話をさせていただきます。

まず、皆さんが今どういう状態を理解するため、事前にアンケートに回答いただきました。実はこのアンケートには、エールがクライアント向けに実施する「聴く」に関する設問と同じものを入れていただきました。まずは、こちらを少し解説させていただいて、私なりに今どう思っているかというところから始めます。

アンケートでは、意図したことが2つあります。1つは、1on1のプロセスではなく、「結果をどう見ているか」を意識した設問にしていること。もう1つは、主に「感情」を聞く設問にしたこと。

この図のように、上司と部下で多少の差があります。「聴く」の5つの設問にフォーカスすると、例えば3番目は部下からの評価のほうが高い。「成功も失敗も共有したい」は、部下の方が上司の方に「共有したい」という気持ちがある。それに対して、上司の方はゼロ回答となっており、これは「共有してもらえてない」とご自身をちょっと辛口に評価されている傾向がみられます。

その逆で、「1番:業務外の話をすることは楽しい」と「5番:自分を見てくれて嬉しいと感じる」では、部下からの評価が低く出ています。

このグロービスさんの結果をふまえて、エールでサーベイを実施した2社とを比較して、1番から5番の結果について、傾向をお見せしたいと思います。

まず、3番と5番は他社と同じ傾向です。それに対して、他社と傾向が異なり、グロービスさんの特徴かもしれないところが、「1番(部下:業務外の話をするのは楽しい/上司:話をしてもらえる)」と「4番(部下:話すと視野が広がり頭がスッキリする/上司:相手が自ら答えを出すように意識している)」です。私はこのうち「4番」に注目しました。

これは、上司が部下の方に対して、「話を無理に押し付けるのではなく、聴いて、相手に寄り添って整理をしていく」ことが、相対的にグロービスさんはできているからだと感じました。実はこの点が、これからお話しすることとつながりますので、覚えておいていただければと思います。

「できる自分を見せたい」と「価値なし」に対する恐れ

では、私の「聴くということ」の話に入っていきます。

これまでの自分のキャリアを簡単にご紹介します。私は1991年に、当時の日本長期信用銀行、今の新生銀行の総合職として入社しました。20代の終わりにアメリカに留学をしてMBAを取って、そこから30代はずっと外資系の会社で働いていました。40代でほぼ日。50代に入って、今のエールという流れです。

「聴く」ということは、特に30代の外資系、あるいはMBAの辺りは、あまり教育はされておらず、どちらかというと、いかに隙なく相手をパワーで説得していくかをスキルとして教わるし、それで会社の中で業績を上げていくという環境で仕事をしてきました。

加えて私は、元々話を全く聴けない人間です。すぐ人の話を遮ってしゃべり出すし。最近は多分直ってきているのですが、若い頃は知ったかぶりがひどくて、知らないのに「知ってます」とすぐ言ってしまう。今もこういう性質はあると思いますが、振り返って考えると、「できる自分を見せたい」という欲求がそうさせてしまうのだと思います。

さらにその奥には、「価値がないと周りに思われたら、私は無視されてしまうのではないか」という、根拠のない、でも強い恐れがあると自己分析しています。その恐れが人の話を遮ったり知ったかぶりをするような、恥ずかしい行動に私を駆り立てているんだなと。

「聴く」に関する誤解

30代も後半になった頃から、「さすがにちょっと恥ずかしいな」と思うようになったこと、周りに素晴らしい先輩方がいらしたこともあって、徐々に「良くない癖を直していこう。聴けるようになりたい」と、自分なりに探求をしていきました。その中で徐々に発見していったのですが、「聴く」に関して、かなり誤解をしていたなと思います。

まず「聴く」というのは「従う」ということだと無意識に思っていました。言い回しで「話を聴きなさい」、英語でもListen to me.という言い方がありますね。聴力を使えと言っているわけではなく、指示に従いなさいという、あの世界観。そう思っていたのですが、実はこれは誤解でした。

2つ目です。「聴く」というのは受動的なことで、聴いていると会話のイニシアチブ、あるいはその方との関係性のイニシアチブを取れないんじゃないか、と信じていたのですが、これも誤解だということが分かってきました。

3つ目です。「聴く」というのは怠慢であって、知的価値が低い。要は、会議でだらりと座っているだけの状態をイメージしてしまう。「発言にこそ知的価値があるのだ」ということを私は教わってきたし、自分の存在価値をそこに求めてきたことがあるのですが、これも誤解だと今は思っています。

この3つについて、少し詳しくご説明していきます。

「聴く」と「相手の意図に従う」は全く別のこと

まず、「聴く」は「従う」ではない。「聴く」と「相手の意図に従う」ことは全く別だということです。そうかなとはうっすら思っていたんですけれども、去年、ラグビーの「コーチのコーチ」の中竹竜二さん(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)と、佐宗邦威さん(BIOTOPE代表)と、あるイベントでご一緒したときに、明確に言われました。

中竹さんが早稲田のラグビーチームの監督をしている時に、「君は何をしたいの?」とか「どういうプレーが好きなの?」と、選手の話をよく聴いたという話を伺って、「そうやって聴いてしまうと、要望に応えなきゃいけない感じがします」と私が言ったら、「これはたぶん、篠田さんの中に“上司は部下の意見を聴くと答えなきゃいけない”というバイアスがあると思います」と、スカッと返答されて。さらにご自身の過去の経験を踏まえて、「根底として選手みんなに好き嫌いや、やりたいことを聞くけれども、それに従うつもりはさらさらありませんという前提で聞いています」ということでした。

次に、「聴く」は受動的なんじゃないかという観点に関しては、私の今の理解は2点あります。1点目は、先ほどのアンケートの中で私が注目したグロービスさんの特徴につながるのですが、話を聴きながら自分のフレームワークを押し付けるのではなく、相手の話を聴いて相手の視点に沿ったフレームワークを提示して、話を少し交通整理してあげるフィードバックを行うことがあると思います。

例えば30分の会話の中で、20分ぐらいは相手がしゃべっていて、こちらは「こういうことなのかな。こういう整理ができるけど」というので、多分1分ぐらいなんです。でもそれで話し手のほうのメタ認知を助けるし、「整理されたな」あるいは「視野が広がったな」ということになるんだと思う。その場合の会話のイニシアチブは、フレームワークを出した側、聴き手なんです。

2点目は、話の内容だけでなく、相手の感情に注意を向けてそれをフィードバックしてあげること。例えば話をじっくり何十分か聴いた後に、「いま聴かせてもらった中で、この話をしている時はすごく声の張りもあったし、身振りもずっと活発になっていて、すごくそこに想いがこもっているんだなという印象を受けたよ」とお伝えする。こちらが相手の感情に注意を向けていることを相手にも共有すると、「ああ、そんなに聴いてくれたのか」という共感が生まれる。そうすると、イニシアチブをどっちが取るかみたいなマウンティング合戦ではなくて、フラットな関係の糸口になると思うのです。

なので、聴くということが受動的で、相手に持っていかれてしまう行いかというと、全くそうではない聴き方があるというのが今の理解です。

「聴く」は、知的誠実さにつながる

「発言にこそ知的価値がある。聴くは怠慢。知的価値が低い」という過去の私の理解に対しては、「いや、今はそうではない」と言えますし、「聴くことこそ、知性とか知的謙虚さの表れだ」と思っています。

はっきりそれを学んだのは、2014年の慶應義塾大学の入学式で、当時の清家塾長が話をされた内容の中にありました。「聴く」ということをちゃんとするときは、自分の中のこうあるべきという理想と仮説とか主張を、ちょっと脇に置く。こういうとらわれない姿が知的誠実さにつながると。

前段は「自分の希望とかにとらわれちゃいけませんよ」という話をしていて、最後、清家塾長は、「真実からの要請。それが自分に不都合だったものだとしても、それに誠実に答える、そういう知的誠実さが大切です」と。「知性は知能に勝り、知的誠実さは知性に勝る」とおっしゃっているんです。ここは学問の文脈ですが、私たちやグロービスさんのように、知的生産でなりわいを立てている者には、共通の姿勢かなと思いました。

知性とは、矛盾する複数の考えを自分の中に保持できること

対話の中で相手の話を聴いて受け止めつつ、同時に自分の考えを保持するのは、かなり知的エネルギーを使います。つまり「知性とは、矛盾する複数の考えを自分の中に保持できることだ」ということだと思います。この言葉は、どこかで私が読んだのですが、出典が見つからずすみません。いずれにせよ「聴く」という営みは、知的怠慢とは対極にあると考えています。

ここまでが、今日のお題に関して私がお伝えしたかったことです。最後にこれを踏まえて、私が心掛けていることを簡単にお伝えして終わりにします。

1つは、自分が聴くということ。「今日は聴くぞ」となったときのゴールイメージとしては、「相手の環境、相手の視野、相手の感覚までもが自分の中で再現できるように聴く」ということです。

2つ目。概ね自分以外の他者というのは、自分とは違う利害で動いている。話をじっくり聴くとだんだん「なんと不合理なのか」と感じてしまいます。でも、相手も自分も、誰しも自分が幸せになりたいというのが本源的な駆動力になって行動している点では全く同じであるということ、ここを踏まえて、肯定的な意図を持って聴く。

3つ目。人の話を一生懸命聴こうとしても、自分の考えとずれるところがあるので気になってしまったり、場合によってはイライラすると思います。聴くという機会は、自分をメタ認知する、自分の学びの機会だというふうに、初めから覚悟を決めて聴く。

相手と自分の感覚のずれ、考えのずれがあると「何でこの人はこういう考え方をするのかな。どうせ何々だから」というふうに思考が行きがちですが、その問いを自分に向ける。「なぜ私は、この人の発言を聴いたとき、イラっとしたのか」、「なぜ私は、この人は間違っていると、いろんな差がある中で特に気にしたのか」という問いを自分に投げ掛けることで、自己理解を深める機会なのです。

こういうふうに、基本的には「聴く」のが苦手な体質の私がなんとかここまでまいりましたというお話です。

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