リーダーシップとは、招き入れる技術
――ビジネスの場で頻繁にテーマとなるものの、「リーダーシップとは?」と聞かれてすぐハッキリと答えられる方は少ない気がしています。薛さんはどのように捉えていらっしゃいますか。
薛:僕は「自分がやり遂げたいことをはっきり持って、そこに皆を招き入れるための技術」だと捉えています。「こういうことができたら楽しくないですか?」という絵姿を掲げ、そこに向け皆に入ってきてもらう。そんな、1人ではなく皆でやるために巻き込むスキルのイメージです。
――「招き入れる」という言葉、新鮮に感じます。リーダーシップと聞くと「引っ張る」といった言葉が使われがちではないでしょうか。
薛:もちろん、1人のすごいリーダーに皆が必死についていくような「引っ張る」リーダーシップもあり、それが適した場面もあります。
しかし今は、昨日までの正解が明日には通用しなくなるほどのスピードと、一人では到底カバーしきれないほど専門領域が広がっている複雑さが混在する時代ですから、1人で背負い込む型のリーダーでは限界があると思うんです。ですから皆を招き入れ、それぞれの専門の人に任せていけばいい。そのほうが、ひとりでは思いもよらなかったアイデアややり方によって、結果的にいいものができるのではないでしょうか。
いいリーダーに共通する「らしい言葉」と「受け止める器」

――過去に薛さんが出会った中で、いいリーダー、あるいはその素養があると感じた方の共通点を教えてください。
薛:共通する2つのうち1つは、目指す絵姿をその人らしい言葉で真面目に伝えてくれることです。どういう世界を目指したいのか、どういう価値をお客さんに届けたいのか、ユーザーに何ができるようになってほしいのか。そういったことが理解できていないと、皆ただ言われたことを作業するだけになってしまうんですよね。工夫も生まれないし、モチベーションも上がりにくい状態になる。弁舌が優れている必要はありませんが、その人らしい言葉が大切だと思います。
――特にミドルリーダーの方々の中には、経営層から降りてきた戦略をもとに動くとき、うまく自分の言葉にするのが難しいと感じることもあるのではと思います。
薛:経営層からは事業ビジョンと売上や成長率といった測りやすい数値目標でオーダーを貰うことが多いと思いますが、メンバーに伝えるときはそれを「この目標でいくことになった」とそのまま下ろすのではなく「自分は、こういう世界を作るために、こんな価値を届けることで、この数字を達成したい」と言えれば十分だと思います。自分が考える「何のために」を足すのです。
――リーダーとしての意志を足すことで、まとまりを作っていくのですね。いいリーダーの共通点、もうひとつは?
薛:メンバーからどんなフィードバックを貰っても受け止めて「ありがとう」と言える人です。皆の価値観や考え方が違う中で、自分が見えていない観点で話してくれた人に「気づかせてくれてありがとう」と言える人は、相手に安心感を与えることができるんですよね。メンバーが「良かれと思って言ったことが無駄にならない、プラスになる」という気持ちになると、チームの状態が前向きになっていきます。
――目指す絵姿を共有することも、意見を言いやすい空気づくりも、安心感につながる、という点で共通しそうです。
リーダーになるか/なれるか悩む人に
――ここまで、いま現在リーダーシップを発揮している方のヒントになるお話を伺っています。ただ、今回薛さんがご登壇されるナノ単科の「リーダーシップ・キャリアビジョン入門」は、まだリーダーではないが、どうしようかと悩む方にも多くの学びがある科目です。薛さんはこういった悩みにどう答えますか。
薛:まず、そうした悩みをお持ちの方に言いたいことは「リーダーシップはスキルなので、初めは“ない”のがむしろ当たり前」ということです。先天的に人を惹きつける力がある人も稀にいますが、基本的にはリーダーシップは後天的に学んでいただけるものです。
この「リーダーシップ・キャリアビジョン入門」では、そういったスキルの基礎となる、リーダーシップに関する様々な理論を学びます。それらを足掛かりにすれば「これなら自分もやれそうだ」というものを見つけていただけると思います。
――リーダーシップはスキルとして学ぶことができる、才能だけによるものではない、というのは、かなり重要なポイントですね。
薛:「やりたくない」という気持ちは、最初からリーダーとして間違えてはダメだ、正解を出さなきゃ、全ての責任を取らなきゃ、と思ってしまうからこそ、膨らんでしまいやすいのだと思います。しかし、先ほどもお話ししたように、チームで進んでいく時代だからこそ、リーダーはやるべきこと・やりたいことを示し、そこに皆を招いて、皆が動きやすい環境を作ってあげることが役割です。リーダーが全ての解を持っていなくてもいいです。むしろ、自分一人では思いつかなかった解に、チームで早く辿り着けるようにすることのほうがリーダーとしては、遥かに大事です。
――目的に向かっていくために集まった色々な才能やスキルを持った方々が、力を上手く発揮できるようにする場づくりが大切なのだと感じました。
世の理想のリーダー像に自分を合わせる必要はない

――最近は奉仕型の「サーバントリーダーシップ」などが注目される一方で、迷いの多い今の時代には「強いカリスマ性」が必要だという声もあり、どんなスタイルでリーダーシップを発揮するか迷う方も多そうです。相手や状況によってスタイルを使い分けるべきだとも言われますが、いざ実践で適切なリーダー像を見つけるヒントはあるのでしょうか。
薛:まず大切なのは、ご自分がなりたいリーダー像をしっかり見つけることです。これまでお話ししてきた、自分の得意・不得意や、周囲に対してどんな存在でありたいか、自分はどんなふうに周りを支え、導きたいのかという意志を踏まえた「自分自身のリーダーとしてのあり方」を定めてみてください。
目指すものがわかっていれば、状況に応じて「ここは自分が前に出よう」あるいは「今は黒子に徹そう」という考え方が柔軟にできるようになります。リーダーシップが、目指すものにたどり着くための方法、手段になるんです。
――世の中のニーズ(型)に自分を合わせるのではなく、「自分はどうなりたいか」が起点になるのですね。
薛:人間は、自分がなりたい姿に近づいていきます。だからこそ、はっきりと「こうなりたい」という像を描くことが出発点です。理論を学べば、大枠としてのリーダーの良し悪しは分かってきますが、それだけではまだ範囲が広く、自分なりの目的地がないと、結局は迷ってしまいます。だから、自分がなりたい方向をまず定めて、そこを目指してほしいのです。
本科目では、自分自身のなりたいリーダー像やキャリアビジョンを言語化して明らかにしていただきます。そもそも自身のリーダー像を考えるのが初めてという方に、ぜひおすすめしたいですね。
迷いが消える、目指すリーダー像の描き方
――自分のなりたいリーダー像を明確にすることによるメリットはかなり多そうですね。ここまでお話しいただいた他にもあるのでしょうか。
薛:ひとつは、妥当な決断がしやすくなります。仕事の中ではコントロールできること、できないことがありますが、目指す像に沿って考えれば、迷わずに済む。判断の軸ができるとも言えるでしょう。
道のりはいろいろあるかもしれませんし、時には想定していなかった道のりかもしれない。しかし自分の目指すものがはっきりしていれば、日々の出来事、周囲の声に振り回されることなく、それを俯瞰しながら、進んでいくことができる。これはとてもいい効果です。
――チームの中でも自分の中でも、ブレないビジョンを見つけることが大切だと。考えたリーダー像をぼやけた理想にせず、実務に結びつけられる具体的なものにするにはどうするとよいでしょうか。
薛:まずは、今の自分のポジションに対する周囲からの期待をハッキリさせること。次に、その期待像に対して、自分なりのなりたいリーダー像を掛け合わせます。その接合点をぜひ考えてみてください。すると周囲からの期待とリーダー像の両方から大きくズレたものにはなりにくいですし、自分自身も納得しやすいはずです。
このとき、長期間で考えすぎないことも大切です。変化の激しい時代ですから、まずは1年~3年程度で考え、その先はアップデートしていく姿勢でいいと思います。
――作って終わりではなく、ブラッシュアップしていくものなのですね。
薛:まさに、実際そのありたい姿に向けて進んでみての実感や、他者との対話で得られたフィードバック、キャリア上の目標の変化などを踏まえ、ブラッシュアップしていくのがコツです。
対話においては「自分はこういうリーダーを目指しているのですが、そこに近づけるための、アドバイスを何かいただけませんか?」と聞いてみるといいでしょう。
――たしかに、なんとなく「リーダーになりたいんだけど」と相談されるより、聞かれた方も話しやすそうです。
薛:そういったアドバイス、フィードバックは相手が求めていなければしにくいものです。特に部下からであればなおさらでしょう。なので、目指す像と共に自分から求めて聞いてみましょう。すると、具体的な助言を得やすいですし、意図しない点にも気づきやすいです。
――リーダーを目指す人ほど、そういった行動に対して「そんな弱みを見せては、頼りないと思われてしまうのでは?」と思い、不安になりやすいのではないでしょうか。
薛:はじめから完璧であろうという思い込みが、リーダーであることを大変にしてしまうのだと思います。完璧を目指して全て背負い込もうとするより、こうして「やりたいことはあるけれど、自分にはまだ能力も経験も足りない」とさらけ出せる人の方が、周囲の快いサポートを得られ、物事を進められるものです。ある意味、自分に対して謙虚に、周囲の人の助けを素直に借りられる人こそ、いいリーダーになるんじゃないかなと思います。
リーダーシップが苦手な人こそ、学ぶ価値がある

――最後に、リーダーシップに悩む読者の方へメッセージを頂けますか。
薛:リーダーシップを発揮するのは苦手だという方にこそ、ぜひこの「リーダーシップ・キャリアビジョン入門」を受講していただきたいと思っています。リーダーシップというテーマに興味を持ち、悩む時点で、あなたの中に「リーダーにならなきゃ」「リーダーになりたい」と思う動機は既にあるはずです。この「動機はあるけど不得手の感覚が強い」という方こそ、学びの効果は大きいと思います。
リーダーシップは後天的に学べるスキルですから 、完璧を目指して一人で背負い込む必要はありません 。むしろリーダーであることは「自分がキャリア上でやりたいことを叶え、なりたい自分になるための機会」だと捉えてみてください。
ただ、自分ひとりでなりたいリーダー像や目指したいこと、キャリアについて向き合う時間をとるのは、とても大変だと思います。本科目の6週間をそのために使っていただくと、人生の中で大きな意味がある時間になるのではないでしょうか。
「自分は仕事を通じて、そもそもどういう人になりたいのか」。そんな問いから、ぜひこれまでの思い込みを外し、新しい一歩を踏み出してみてください。
――リーダー観はじめ、自分の価値観やキャリアをじっくり学び考える機会だと思うと、大きな財産になりそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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