現代のビジネス環境において、個人の能力を高めるだけでは、組織の持続的な成長は望めません。チーム全体の生産性を最大化し、強い組織を構築するためには、効果的なチームビルディングが不可欠です。
本稿では、チームビルディングの定義や重要性、具体的な実践方法の例、そして取り組みを成功に導くポイントまで詳しく解説します。
チームビルディングとは
チームビルディングとは、「規模、構成、凝集性(メンバーの団結や結束力)などを考慮し、ある目標を達成するのに効果的なチームを編成すること」を指します。あるいは、組織の目標達成のためにメンバーが協力し、相互に支援し合う環境を作り出すプロセスということもできます。
チームビルディングは、チームの生産性向上やメンバー間の信頼関係の構築に関わる点で非常に重要です。効果的なチームビルディングは、組織全体のパフォーマンスを高め、競争力を維持するための基盤となります。
なぜチームビルディングが重要なのか?メリット2つ
チームビルディングが組織において重要な理由は、組織全体のパフォーマンス向上が期待できるからです。以下、チームビルディングによって期待できる、パフォーマンス向上につながる要素を2つご紹介します。
メリット①ビジョンの浸透やマインドセットの形成
チームビルディングを通じてビジョンの浸透やマインドセットの形成がなされると、社員が共通の目標に向かって主体的に行動できるようになり、意思決定の質や生産性が向上します。また、困難な状況でも一丸となって乗り越える強固な組織文化が育まれ、社員のエンゲージメントと定着率も向上します。
メリット②メンバー間の信頼関係の構築やコミュニケーションの改善
ミーティングや共同作業ほかのチームビルディング活動を通じて、お互いの強みや弱み、役割を理解し合うと、メンバー間の信頼関係の構築やコミュニケーションの改善が期待できます。すると、協力体制が強化され、問題解決がスムーズになり、チーム全体の士気やモチベーションも向上します。加えて、組織の成長力と持続可能な競争力も高まっていくことになります。
チームビルディングの5段階:タックマンモデル
タックマンモデルとは、チームビルディングを5つの段階に分けて考えて捉えたものです。それぞれ、「形成期」「激動期」「規範形成期」「実現期」「終了期」から構成されています。
チームはその段階によって、直面する特有の課題と、それに対する効果的な対応策があります。タックマンモデルを活用するメリットは、各段階にとって適切なリーダーシップと戦略を実施し、チームのパフォーマンスを最大化することが可能になる点にあります。例えば、激動期には積極的なコミュニケーション促進と問題解決のファシリテーションを行い、規範形成期では役割の明確化と協働関係の強化に注力するなどが考えられます。各段階について、順に見てみましょう。

1.形成期 (Forming)
チームが初めて集まり、目標や役割を明確にし始める段階です。この時期の主な課題は、メンバー間の信頼関係の構築と、チームの方向性の理解です。
効果的な対応策として、ビジョン共有セッションの実施や、チームメンバーの自己紹介を通じて相互理解を深める活動が有効です。
2.激動期 (Storming)
意見の相違や対立が表面化し、チーム内の調整が必要になる段階です。この段階では、メンバー間のコミュニケーションが鍵となります。
オープンなフィードバック文化を促進し、問題解決のための明確なプロセスを設定することで、対立を建設的に解消することができます。
3.規範形成期 (Norming)
チーム内の規範や文化が形成され、協力体制が整う段階です。メンバーはお互いの強みを理解し、効果的な役割分担が可能となります。
共同プロジェクトやメンバー間のサポート活動を通じて、チームの一体感を高めることが重要です。
4.実現期 (Performing)
チームが高いパフォーマンスを発揮し、効率的に目標を達成する段階です。この時期の課題は、持続的なモチベーションの維持と継続的な改善です。
定期的なパフォーマンス評価や継続的な学習機会を提供することで、チームの成長を促進します。
5.終了期 (Adjourning)
プロジェクトの完了やチームの解散が行われる段階です。メンバーの成果を振り返り、感謝の意を表しましょう。
成果の共有セッションやフィードバックの収集を通じて、次のチームビルディング活動への学びを得ることができます。
チームビルディングの実践方法
ここからは、ゲームやワークショップ、日頃の取り組みを通じたチームビルディングの実践方法について、目的別に解説します。
【実践法①】ビジョン浸透とマインドセット形成
組織のビジョンをチームメンバーに浸透させるためには、ビジョン共有セッションやビジョンボードの作成があります。
ビジョン共有セッションでは、リーダーが組織の長期的な目標や価値観を明確に伝え、メンバー全員がそのビジョンに共感できるようにします。
また、ビジョンボードの作成では、ビジュアル的にビジョンを表現し、日常的にビジョンを意識する環境を整えることで、メンバーのモチベーションを高めます。
また、ポジティブなマインドセットを形成するためのアプローチとしては、モチベーション向上ワークショップや目標設定の重要性を強調する方法があります。例えば、以下のようなワークショップや行動の促しをするとよいでしょう。
- 成功体験の共有と分析
過去の成功体験を振り返って、それがどのように達成されたか、その時どんな感情を伴ったか、具体的に言語化してもらいます。これをグループで共有し、成功の要因(強み、工夫、協力など)を分析することで、自身の能力や可能性への気づきを促します。 - 「SMART」を用いた目標設定
目標設定に不可欠な5つの要素の頭文字をとった「SMART」に沿った方法をレクチャーし、改めて目標を設定してもらいます。明確で具体的な目標を設定することで、達成への道筋が見えやすくなり、モチベーションを維持しやすくなります。
<参考記事>成功する目標設定5つのポイント「SMARTの法則」とは?【フレームワーク解説/意味・具体的な使い方/ゴール設定】
【実践法②】メンバー間の相互理解とコミュニケーション
メンバー同士の相互理解には、アクティビティやワークショップの実施が効果的です。協力型のゲームでメンバー同士の信頼関係を築いたり、診断ツールを使ったワークショップを通じて互いの強みや弱みを理解すると、協力関係の基盤ができます。
また、オープンなコミュニケーション環境を整えることで、メンバーが積極的にアイデアを提案し、創造的な問題解決が可能となります。これにより、チーム全体のパフォーマンスが向上し、長期的な成功に繋がります。コミュニケーションの改善は、チームの協力体制や問題解決能力にポジティブな影響を与えます。例えば、以下のような取り組みをするとよいでしょう。
- ジェスチャーゲーム
相手が何を伝えたいのか、どうすれば理解してもらえるのかを考えながら協力し、通じあった経験によって信頼関係が生まれます。また言葉を使わず、体や表情だけでメッセージを伝えあうと、普段気づかない相手の表現の癖に気づいたり、伝えようとする意図を深く読み取る力を養ったりすることも可能です。 - ストレングス・ファインダー
各自で資質(才能のパターン)を把握し、チームメンバー間で共有することで、強みや資質が活かせそうな課題について明らかにすることができます。これにより、役割分担や協業が円滑になります。 - アクティブリスニング
メンバーの発言に対して積極的に耳を傾け、理解を示すことで信頼関係を強化します。 - オープンドアポリシー
いつでも意見や相談ができる環境を整え、メンバーが自由にコミュニケーションを取れるようにします。
【実践法③】役割分担と協働関係の促進
各メンバーの強みやスキルを最大限に活かす役割分担を行うと、効率的な組織運営と目標達成につながり、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
そのためにはまず、各メンバーの強みやスキルを理解し、適切な役割を割り当てることが重要です。これにより、メンバーは自分の得意分野で最大限の成果を発揮でき、チーム全体の効率性が向上します。具体的には、例えば以下の方法が有効です。
- スキルマトリックス
各メンバーの強みを視覚化し、適切な役割を見つけることができます。 - 定期的な1on1ミーティング
メンバーの意見や希望を把握し、役割分担に反映させることで、メンバーの成長とチームのニーズに対応可能です。 - 「紙飛行機チャレンジ」
チームに分かれて「紙飛行機を最も遠くまで飛ばす」というチャレンジを通じて、限られた資源や時間内で協力しながら課題を解決する力を養います。
また、協働関係を強化するためには、適切なツールやプロセスの導入が不可欠です。例えば、プロジェクト管理ツールの活用や、異なる部門や専門分野のメンバーを含むクロスファンクショナルチームの編成などが効果的です。これにより、情報共有が円滑になり、メンバー間の連携が強化されます。具体的なツールとしては、以下のようなものや取り組みが挙げられるでしょう。
- タスクの進捗を可視化
AsanaやTrelloなどのプロジェクト管理ツールの使用が有効です。 - リアルタイムでのコミュニケーションを促進
SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールを用いましょう。
効果的なチームビルディングのポイント
ここまでさまざまなチームビルディングの手法をご紹介してきましたが、せっかくの取り組みを単に「やってみた」「導入してみた」で終わらせないためには、意識的な面も重要です。
ここでは、チームのポテンシャルを最大限に引き出すために押さえたいポイントを解説します。
明確な目的・目標設定
チームビルディングにおいて、明確な目的と目標を設定することが成功の鍵です。明確な目的があれば、チーム全体が同じ方向を目指し、一体感を持って活動することができます。また、具体的な目標設定により、各メンバーが自分の役割や責任を明確に理解し、効率的にタスクを進めることが可能になります。
情報共有と心理的安全性の確保
情報共有と心理的安全性の確保は、チームのパフォーマンスや創造性に大きな影響を与えます。
情報共有の効果的な方法としては、共有ドキュメントの活用や、定期的なアップデートミーティングの実施などが挙げられます。共有ドキュメントを利用することで、チーム全員が最新の情報にアクセスできる環境が整い、作業の重複や誤解を防げます。また、定期的なミーティングを通じて、進捗状況の確認や課題の共有を行うことで、チーム全体の協力体制を強化します。
また、心理的安全性を確保するためには、オープンなコミュニケーション環境の構築が重要です。具体的には、自由に意見を交換できる場を設けることや、失敗を許容する文化を育むことが求められます。これにより、メンバーは安心してアイデアを提案できるようになり、チーム全体の創造性が向上します。
価値観とビジョンの明確な設定と共有
チームの価値観とビジョンを明確に定め、それを共有することは、組織全体の方向性を統一し、メンバー全員が共通の目標に向かって協力するための基盤となります。具体的には、ワークショップやブレインストーミングセッションを通じて、チームメンバーが自分たちの目指す方向性や大切にしたい価値を共に考える機会を設けることが有効です。また、ビジョンボードの作成や定期的なビジョン共有ミーティングを実施することで、設定した価値観やビジョンをチーム全体に浸透させることができます。
まとめ(おすすめ動画紹介)
チームビルディングは、目標達成に向けた信頼関係と協働体制の構築に不可欠であることがお分かりいただけたでしょうか。タックマンモデルや、様々なワークショップほかを活用し、ご自身のチームの目標達成に向けて取り組んでみましょう。
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