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企業変革を推進する「トライアングルモデル」の活用法とは?

投稿日:2024/01/16更新日:2024/01/17

社会動向やテクノロジーの影響によって、経営環境が激しく変動しており、企業には迅速な変革が求められている現在。グロービス マネジング ディレクターである板倉 義彦が「組織能力」という観点から変革推進で押さえるべき論点や人・組織能力開発のフレームワークなどを、事例とともに解説します。

シリーズの2回目となる今回は、企業変革においてポイントとなる3つの要素を「トライアングルモデル」として紹介しつつ、企業変革の実践方法を探ります。

前回はこちら

トライアングルモデルとは

本稿では、企業変革を実現するために必要な3つの変革を「トライアングルモデル」として定義します。この3つの変革とはなんでしょうか。それはそれぞれ、「経営」のあり様を変革し、「事業」を変革し、そして経営や事業を担う「人(リーダー)」の変革ということです。

企業変革においてはまず「経営変革」と「事業変革」の2面を検討します。そして「経営変革」と「事業変革」のベースになっているのが、「リーダー変革」です。それぞれの実践を詳しく見てみましょう。

経営・事業の変革は3ステップに集約される

まず「経営変革」の流れは、非常にシンプルです。
まず経営として重要な「①アジェンダ設定」を行い、それが決まれば実行のための「②プランニング」を行います。そして、「③現場への落とし込み」によって実行していきます。実際の経営は複雑なものですが、シンプルに捉えれば、この3つが正しく回れば経営は変革できます。

それを事業単位で行う「事業変革」も、基本的に手順は同じです。事業単位での「①アジェンダ設定」、実行のための「②プランニング」を行い、それを「③現場への落とし込み」によって実行していく。見るべき範囲や視野は異なりますが、やるべきことは変わりません。

企業変革を実現するためには、「経営」と「事業」の両面において、この①~③の3つの視点がそれぞれあれば、自社の変革において何ができておらず、どこのステップで止まっているのかが見えてきます。
例えば、自社に外部からプロ経営者が入ってきたとします。事業を再編し、ポートフォリオ経営の在り方や事業の括り方を変えて、経営のアジェンダを設定しました。しかし、実行までには至らないというケースが起こりがちです。
その場合、変革を止めている要因として、まずは設定したアジェンダの実行プランニング、もしくは現場への落とし込みができていないこと。もう1つは、落とし込みはできるものの、それを受けた事業側の変革が進んでいかない。この2つが考えられます。
このように、変革を阻害しているステップがつかめれば、次なる打ち手も考えやすくなるのです。

リーダー変革における「タイミング」という難所

「リーダー変革」も、経営変革を進める上では、大きなウェイトを占めています。ちなみに、この場合の「リーダー」は、経営幹部候補人材などの「選抜リーダー」だけではなく、中堅のミドルリーダーも含まれます。経営と現場の結束点となるミドルリーダーの役割は大きく、ミドルリーダーの変革をセットで取り組むことが欠かせません。

「リーダー変革」のためには、リーダー人材を量・質ともに計画的に充足させていくタレントマネジメントの仕組みを作り、スキルやマインドをアップデートするために、OJTや研修といったOff-JTを設計し実施することが土台となります。

一方、これらの仕組みの難点は、計画的に実施される研修と、変革の必要性のタイミングや内容にギャップが生じることです。

このタイミングのギャップを解消するためには、「事業変革」を行いながら同時に「リーダー変革」を行うアプローチが有効です。事業変革の際に、プロジェクトベースで人を当て、彼らに伴走しながら、必要なノウハウや知識を適宜インプットしていけば、「リーダー変革」も同時に行うことができるわけです。これが「On the Project Training(以下OnPT)」です。

この手法では、リーダー自身の当事者意識が高まりやすいため、戦略実行にドライブがかかり、事業変革と同時に、リーダー自身の成長にも、非常に高い効果が得られます。

富士通の事例からトライアングルモデルによる変革を考える

変革時に描く「戦略」は、計画通りにはいかないのが常です。そのような時に何が必要になるかといえば、どのような状況でもくじけずに変革を前に進めていくマインドセットをリーダー人材が持ち合わせていることです。それを実現するのが、この「OnPT」というアプローチです。もちろん、その前提として、リーダーとして「誰をアサインするか」ということと、「どうやって巻き込んでいくか」の2つも重要な要素になってきます。

人も組織もすぐには変わることができません。だからこそ、変わるポテンシャルを持った人材が自己変革を遂げる「場」を設計し、意図的に仕掛け続けていく必要があります。

ここまでお伝えした「経営変革」「事業変革」「リーダー変革」に関して、富士通の事例を参考に考えてみましょう。

「経営変革」の事例:DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用

DXカンパニーへの転換、ジョブ型雇用の推進などの全社的な変革を前に、役員層が同じ方向を向き、腹を割って議論できる体制をつくるため、富士通では役員合宿(経営方針の討議)を実行しています。この機会を通じて、同社の存在意義はもちろん、さまざまな改革に対して「なぜやるのか」「何を目指していくのか」を腹落ちするまで役員全員が議論を行ったのです。

この結果、富士通は経営としての目線や認識をしっかりと定めることができています。これが現在、役員それぞれがスピード感を持って変革を進められていることの理由です。

同社ではこれまで、制度改革が成功しないことに課題意識が持たれていました。この要因の1つとして挙がっていたのが、関係する役員の説得です。経営変革のステップで考えれば、「①アジェンダ設定」「②プランニング」ができても、「③現場への落とし込み」の旗を振る役員からのメッセージがブレていれば成功しません。同社は改めてこの認識合わせに取り組んだことで変革の波に乗り、経営会議や中期戦略討議の議論も間違いなく活発化しています。

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DXカンパニーへの転換を加速させた、役員合宿の取り組みと効用

「事業変革」の事例:人事戦略の立案力を磨き、経営層と対等な議論ができるHRBPへと成長する

2020年4月、富士通ではジョブ型の人事制度が導入され、各事業部門のビジネスグループ長や本部長に人材リソースマネジメントの権限移譲が進められました。それに伴い、事業部門起点でこれまで以上にスピーディな人材マネジメントを行う必要が出てきたため、重要性を増してきたのが、各事業付きのHRBP(Human Resource Business Partner:戦略人事)です。

そこで同社では、各部門を担当する人事がHRBPとしての価値を発揮するための「HRBPの型(視点・考え方・手順)」の習得をゴールとするHRBP Project を実施しました。
約6ヶ月間を要した本プロジェクトの前半では、経営の基礎知識や視点、HRイシューについての考え方等を習得し、後半は実践として担当事業部向けの組織レポートに取り組んでいます。

結果富士通では、各事業にHRBPが存在することで「①アジェンダ設定」「②プランニング」「③現場への落とし込み」のすべてのステップにおいて本部長と同じ目線で議論し、本質的な組織課題を特定し、人材からこの解決にアプローチしていくことができるようになったのです。

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人事戦略の立案力を磨き、経営層と対等な議論ができるHRBPへと成長する

「リーダー変革」の事例:新規事業を継続して生み出す部門を目指し、人・組織の体質改善に取り組む

DXカンパニーを目指し、新規事業を生み出すミッションを掲げる富士通のソーシャルデザイン事業本部では、戦略策定ワークショップを実施しました。本部内の各事業部長と事業企画リーダーが参加し、約半年かけて事業戦略をつくる本ワークショップは、まさに“On the Project Training(以下OnPT)”の場として、事業変革のためのアウトプットするプロセスで、同時に人材を育成していく機会です。

参加者はワークショップを通じて、従来「何ができるか」の機能面から事業やサービスを捉えていたところ、顧客ニーズを起点とする視点に発想を転換しました。また同社の資産であるデータを活かして、仮説を立て、情報を集める重要性などを学び、実践できるようになったのです。

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新規事業を継続して生み出す部門を目指し、人・組織の体質改善に取り組む

つづく

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