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公平理論とは?職場のやる気を左右する「比較の心理」を理解して人材マネジメントに活かそう

投稿日:2025/07/28更新日:2025/08/25タイマーのアイコン 読了時間 6分

公平理論とは、他者との報酬の比較を通じて感じる公平・不公平が人の行動に影響するという心理理論です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

公平理論とは - 人の心を動かす「比較」の力を理解する

公平理論(エクイティ理論)とは、人々が自分の努力に対する報酬を他者と比較し、不公平を感じた時に公平感を取り戻そうとする行動を取るという心理理論です。

J.ステイシー・アダムスらによって提唱されたこの理論は、「なぜ同じ給料をもらっているのに、あの人の方がやる気がないのだろう」「頑張っているのに正当に評価されていない気がする」といった職場でよく見られる現象を説明してくれます。

この理論の核心は、人は絶対的な報酬の額ではなく、他者との相対的な関係で満足度を決めているということです。つまり、同じ給料でも「自分は適正に評価されている」と感じる人もいれば、「不当に低く扱われている」と感じる人もいるのです。

なぜ公平理論が重要なのか - 組織の生産性を左右する心理メカニズム

公平理論を理解することは、現代の組織運営において極めて重要です。なぜなら、従業員のモチベーションや生産性、さらには離職率まで大きく左右する要因だからです。

①従業員の行動を予測できる

公平理論を知ることで、なぜ優秀だった従業員が急にやる気を失ったり、逆に意欲的になったりするのかが理解できます。これは人事管理や組織運営において、問題が起きる前に対策を立てられることを意味します。

人は不公平を感じると、必ず何らかの行動を取ります。それが生産性の低下なのか、離職なのか、それとも建設的な改善提案なのかを予測し、適切に対応することが可能になるのです。

②より効果的な報酬制度を設計できる

単純に給料を上げれば満足度が上がるわけではありません。他の従業員との比較で「公平だ」と感じられる制度設計が重要です。公平理論を理解することで、限られた予算の中でも従業員満足度を最大化する報酬制度を作ることができます。

また、金銭的報酬だけでなく、昇進機会、教育機会、職場環境など、様々な要素を総合的に考慮した公平感のある制度設計が可能になります。

公平理論の詳しい解説 - 数式で理解する人の心理

公平理論は、シンプルな数式で表現することができます。この数式を理解することで、人間の複雑な心理メカニズムがクリアになります。

①基本的な比較の仕組み

公平理論では、人は以下の比較を行っています:

自分の出力(Output)÷ 自分の入力(Input)他人の出力 ÷ 他人の入力 を比較

ここで「出力」とは、給料、昇進、承認、職場環境など、仕事から得られるすべての報酬を指します。「入力」とは、努力、能力、経験、時間、ストレスなど、仕事に投じるすべてのものです。

この比較の結果、3つのパターンが生まれます:

  • 自分の方が不利(低報酬状態)
  • 自分の方が有利(高報酬状態)
  • 両者が同等(公平状態)

②不公平感が生まれる心理的背景

興味深いのは、自分が有利な場合も不公平感を感じることがあるという点です。ただし、この場合の不快感は、不利な場合よりも弱く、行動変容への動機も小さいことが研究で明らかになっています。

人間は本能的に公平性を求める生き物であり、これは進化の過程で培われた重要な特質だと考えられています。チームワークや協力関係を維持するために、公平性への感覚が発達したのです。

③比較対象の選び方

公平理論で特に重要なのは、「誰と比較するか」という点です。人は以下のような基準で比較対象を選ぶ傾向があります:

  • 同じ職場の同僚
  • 同業他社の同じような役職の人
  • 過去の自分
  • 理想的な状態

この比較対象の選び方によって、同じ状況でも公平感は大きく変わります。マネジャーにとっては、従業員がどのような比較をしているかを理解することが重要です。

公平理論を実務で活かす方法 - 組織のモチベーションを高める実践アプローチ

公平理論を理解したら、次は実際の職場でどのように活用するかが重要です。理論を実践に移すための具体的な方法を見ていきましょう。

①不公平感を感じた従業員への5つの対応策

従業員が不公平を感じた時、以下の5つのいずれかの行動を取ることが予想されます。これを理解することで、適切な対策を立てることができます。

入力を減らす行動:「頑張るだけ損」と感じて努力を減らします。遅刻が増える、残業を避ける、提案をしなくなるなどの形で現れます。この場合は、評価制度の透明性を高め、努力が適切に評価されることを示すことが重要です。

出力を増やそうとする行動:より多くの報酬を得ようと交渉したり、時には不正行為に走ることもあります。建設的な要求には耳を傾け、適切な報酬改善を検討しましょう。

認識を変える行動:「実は自分の仕事には他にもメリットがある」と考え方を変えます。この自然な調整を支援するため、金銭以外の価値(成長機会、やりがいなど)を積極的に伝えることが効果的です。

比較対象を変える行動:「同業他社と比べれば恵まれている」など、比較の基準を変えます。業界水準などの客観的データを提供することで、この調整を支援できます。

関係から退く行動:最も極端なケースが離職です。優秀な人材の離職を防ぐためには、日頃から公平感についてコミュニケーションを取ることが重要です。

②公平感を高める組織制度の設計

公平理論を活かした組織制度を設計する際のポイントは以下の通りです。

透明性の確保:評価基準や昇進の仕組みを明確に示すことで、従業員が公平性を判断しやすくします。「なぜその評価になったのか」「どうすれば昇進できるのか」を具体的に説明することが重要です。

多様な報酬の提供:金銭的報酬だけでなく、成長機会、柔軟な働き方、承認など、様々な形の報酬を用意することで、個人の価値観に応じた公平感を創出できます。

定期的なフィードバック:年1回の評価ではなく、継続的にフィードバックを行うことで、不公平感が蓄積する前に対処できます。

比較情報の提供:業界水準や社内の報酬分布などの情報を適切に共有することで、従業員の比較判断を支援します。

このように、公平理論は単なる学術的な概念ではなく、実際の組織運営において極めて実用的なガイドラインを提供してくれます。従業員一人ひとりが「公平に扱われている」と感じられる職場環境を作ることで、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるのです。

参考ページ

MBA経営辞書「公平理論」

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    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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