経営と現場の双方に影響力を発揮する存在とは?―組織ギャップを埋める“結節点人材”へ Vol.2

第1回では、「経営と現場のギャップ」という現代の企業における課題と、そのギャップを解消する人材の必要性について述べた。今回は、その人材の意義、組織への効果について述べていく。

“結節点人材”とは?

■どの階層にいる人材か?―現場側のトップ層

「ギャップ」は、経営層と現場の視点・視座・視野の差異から生まれてくることは前回述べた通りである。このため、現場側のトップ層である執行役員や上席部長などの要職、もしくは経営層と現場との統括的な接点となる経営企画室の室長などが、ギャップを埋める、もしくは両者をつなぐ役割を担っていることが多いと想定される。

今回の調査でも、ギャップを埋める人材として機能しているのは、組織の形態や規模などによる差はあるけれど、大半はこの階層にいる人材であり、以降、“結節点人材”と呼ぶことにする。

■どんな役割を果たしているのか?―それぞれの主張を意訳して伝える

図1に示すとおり、“結節点人材”は、ポジションとしては現場側のトップ層の人材であることが多く、経営側、現場側の双方に影響力を発揮することができる『第3の存在=結節点』の役割を果たしている。経営側/現場側それぞれの主張に対し、反対側の視点や課題認識を解釈し意訳して伝えることで、効率よく現場を動かす。そして経営の意思決定に現場の実情を反映させ、組織の一貫性を持たせ円滑に機能させる存在である。

図1:結節点の果たす役割

“結節点人材”がもたらす、組織への効能とは?

“結節点人材”の組織への最も大きな貢献は、経営と現場の異なる視点・視座・視野をつなぎ合わせ、実際に組織に一貫性と機動力をもたらすことにある。前回紹介した「経営と現場のギャップ」から発生する組織の機能不全を未然に防いでいる。

以下で、彼らの存在意義の大きさを、経営層側、現場側の双方の視点から説明する。

■経営層にとっての“結節点人材”の3つの存在意義

経営層側にとっての意義は大きく分けて次の3つがある。

  1. 現場への的確かつ実行可能な具体指示
  2. 現場からの情報収集と翻訳
  3. 経営への集中

順に説明する。

1)現場への的確かつ実行可能な具体指示

経営層はトレンドや社会課題、技術革新などマクロ的な視点で市場を捉え、中長期の時間軸で戦略を練る。一方、現場では具体的な商品やサービス、その顧客・サプライヤーといったミクロでリアルタイムな視点で自分たちの仕事を捉える必要がある。経営層が中長期な視点から現場に指示を出しても、現場は動けない。ミクロ視点で動いいている現場を適切に動かすためには、まさに今何をすべきか、という的確かつ実行可能な具体指示が求められるのだ。

“結節点人材”は、経営層が持っている抽象度の高い中長期の方針を、現場で実行可能な、短期の具体アクションやKPIにブレイクダウンすることができる。経営層にとっては、思うように現場の舵取りをしてくれる「優秀な船頭のような存在」であると言える。

2)現場からの情報収集と翻訳

一般的に、経営層は、現場スタッフとの距離感が遠く、現場の情報は入りにくい。また情報が得られても一つ一つの情報は粒度にばらつきがあり、全てへの対応が難しく、結果的に放置せざるを得ない状況が往々にして存在する。“結節点人材”はこうした現場の情報、実情についても明るく、「要するにこういうこと」と経営側の視点に沿って伝えることができるため、過不足なく経営判断、意思決定に盛り込むことができる。経営層にとっては、現場という異なる言語で動いている世界との間をつないでくれる「翻訳家」のような存在であるとも言える。

3)経営への集中

上記二つに示した結節点人材の働きにより、経営層は社内に対して余計な意識や思考のリソースを割く必要がなくなり、世の中や業界のトレンド、社会課題、技術の進歩、それに対する自社の打ち手など、経営層が本来注力すべき経営の仕事に集中することができる。また、“結節点人材”の役割によって機動力が向上した組織は、経営指示に対するレスポンスも高く、日々変化する外部環境への対応という面で、同じような境遇にいるはずの競合他社に対して優位性を保つことができる。

■現場側にとっての結節点人材の存在意義

一方、現場側にとっての存在意義は大きく次の3つがある。

  1. 部門間の調整役
  2. 経営への意見具申
  3. 現場の納得感・一体感を醸成

順に説明する。

1)部門間の調整役

各部門から上がってくる課題や要望事項などを部門横断で取りまとめ、経営方針を基に適切に調整する。現場側のトップであり、横並びの組織にも影響力があり、経営層からの信頼も厚い“結節点人材”だからこそ担える役割である。現場にとっては、最終的に結果責任を持って実行指示を下ろしてくれるプロスポーツの監督のような存在であると言える。

2)経営への意見提言

トップダウンで急に下りてきた指示などには、現場の事情が十分に反映されていないことが往々にして見られるが、現場の一人一人が経営層に意見を述べることは立場の差だけでなく、視点、視野、視座といった関心領域の違いからも現実には難しい。現場の意見の吸い上げ役として経営層から信頼を得ている“結節点人材”は、現場の実情を踏まえ、また経営層の視点や意図も理解した上で、適切な内容を、適切な強さで主張することができる。必然的に、経営層は現場の実情を適度に経営判断に反映させることができる。

3)現場の納得感・一体感を醸成

上記のように、部門間の調整ができ、経営層にも必要な意見を言うことができる存在がいることで、現場では圧倒的に不毛な作業、不毛な議論が減ることになる。結果的に内部の利益相反、業務量の偏りといった問題を超えて、現場を一枚岩にする力を、“結節点人材”は持ち合わせている。

以上のように結節点人材は、経営と現場の間に立ち、適切な情報の収集と伝達、調整の役割を担う。経営と現場には結節点人材を通じ、双方の理解、また理解に基づく実現可能性の高い指示や行動が促進されていく。結果、双方のギャップは埋まっていき、一貫性と機動力がもたらされ、組織が有機的に動いていくのである。こうした役割により、結節点人材は経営と現場のいずれにとっても存在意義の大きい、欠かせない存在と言えよう。

図2.結節点人材によるギャップ解消のメカニズム

類似する役割”バウンダリースパナー“との役割の違い

ここまで、結節点人材が経営と現場の相互理解を促進するということを見てきた。結節点人材は、「結節する=つなぐ」という意味合いから、組織の境界を架橋しイノベーションを加速するバウンダリースパナーという役割と類似するため、両者の違いを明確にしておきたい。

図3.バウンダリースパナーと“結節点人材”との違い

バウンダリースパナーの特徴としては、新たなものを創出する存在である点が挙げられる。経営の意思決定や組織運営などの目的に限定するものではなく、新たなつながりを縦横無尽に作る人材である。そういう意味では、いろんなレイヤーに存在しうるのが、バウンダリースパナーである。

※参考:大企業のイノベーションを加速する「バウンダリースパナー」とは?

対して“結節点人材”の特徴としては、組織が本来持っているべき一貫性や機動力を取り戻し、補強し、組織の機能不全を防ぐ存在である点が挙げられる。貢献度の影響対象は間違いなく経営判断、組織運営であり、明確に定義が区別される。

次回は、こうした“結節点人材”となるために必要な要素について、分解して解説していく。

第3回に続く

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