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日本の会社をつくり変える―『コーポレート・トランスフォーメーション』

投稿日:2021/01/14

著者が喝破する日本企業の変革が進まない原因

2020年は「新型コロナウイルス」が全世界を震撼させ、個人においても企業においても、その事業規模に関わらず、既存の価値観から180度転換の必要性を眼前に突き付けられた年となった。多くの会社が経営的危機を迎え、変革の必要性が叫ばれている。それでもなお、既存の価値観の慣性は強く、遅々としてトランスフォーメーションが進まない会社も多い。

前著にあたる『コロナショック・サバイバル』では、混乱を極めたコロナショックの渦中にあって、日本企業がどう生き残り、更にはチャンスへと転換していくかが説かれていた。本書では、その内容も踏まえつつ、日本企業に深く刻まれた「日本的なカイシャモデル」ひいてはそれを軸とした経済社会モデルに痛烈に切り込み、更に変革への方法論まで示している。著者である株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO冨山和彦氏のこれまで多くの企業再生に携わった知見が随所に散りばめられている。

日本企業の変革が進まない原因は何か。たとえば、これまで正論とされてきた、新卒一括採用、終身雇用、そこに根差した強みといった「日本の独自性」である。これらは、今の時代においては「負の遺産」となり改革を遅らせ且つ免罪符になっていると冨山氏は指摘する。

さらに、第3章「CXビジョン-目指すべき会社のカタチ、持つべき組織能力とは」では、ビジネスの主戦場が「大量生産型産業における連続的な改善・改良の世界」から「破壊的イノベーションの世界」へ変貌を遂げた今、必要なことが語られている。国で言えば「憲法大改正」のような会社のリ・デザインであるとし、「終身雇用から能力採用へ」など個別具体的な変革案までが、理由を含めて事細かに記載されている。まさにこれから求められている会社の設計図が示されていることに鳥肌が立った。

しかし、厳しい言葉にもかかわらず、読後には「日本の可能性を信じ、その変革の当事者であらんとする決意」が心にたぎっていた。それは、これまで冨山氏が携わってきた生々しい企業再生の現場から得た確かな知見と、行間に感じる日本企業・日本社会に対する「獅子が子を谷底に落とす」ような深い愛情によるものだったと確信する。

変革を信じ、一人ひとりの主体性、能動性を問う

更に本書には、アフターコロナ時代、日本の企業・社会をいかに強く魅力的なものに文字通り「トランスフォーム」していけばいいのか、その方法論が書かれており、その内容はリーダー一人ひとりの覚悟と具体的な行動によって、困難ではあるが実現可能なものだ。

トランスフォームの一つの案として、「乱暴でカジュアルな経営スタイル」への変貌を冨山氏は提案する。オペレーショナル・エクセレンスで栄華を築いた日本企業にとって「未完成な状態で顧客にぶつける」ことは、絶対にやってはならないことだ。だが、この従来思考を180度転換し、未完成でも構わないからどんどん顧客にぶつけ、生じるクレームを含めて次の手を打つのが、「乱暴でカジュアルな経営スタイル」であり、これから求められる経営スタイルだと冨山氏はいう。

出来上がった組織を変えることは、不可能なことのように思う方もいるだろう。しかし、そんな気持ちは読み進めているうちに吹き飛んでしまう。冨山氏は本書の最後に、「今、新たな調和、新たな仕組みを見出すためには、(中略)社会を構成する一人ひとりの主体性、能動性こそが問われている」と投げかけている。

私は前職で、年功序列型の「日本的経営モデル」いわゆる日本的「カイシャモデル」を地で行く経営に疑問を抱き、変革する力を得るためにMBAを学ぶことを選んだ。そして学んだことを活かし、組織内で様々な変革提案をすることができた。

当時28歳、最若手と言われる世代だった。あの時、自ら進んで行動したことが、前の組織、そして自身のキャリアにとってもプラスであったと自負している。だからこそ冨山氏の投げかけには強い共感を覚える。

前編『コロナショック・サバイバル』と合わせ、現在、経営を担っているマネジメント層はもとより、まさに「社会を構成する一人ひとり」であり、これからの日本を背負っていく全てのビジネスパーソンに読んでいただきたい一書だ。

コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える
著者:冨山和彦 発行日:2020/6/24 価格:1650円 発行元:文藝春秋

  • 鎌原 光明

    グロービス経営大学院 Graduate student & Alumni Office/研究員

    創価大学教育学部児童教育学科卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了 幼小中高を運営する学校法人にて7年間、主に人事業務に従事したのち、グロービスに入社。現在は経営大学院全体の在校生サービスの責任者および大阪キャンパスの本科生・卒業生サービスの責任者として従事。加えて、経営大学院において人事領域・キャリア形成領域の研究を担当。

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