イケアが日本のジェンダー平等に向け新しいモデルを構築

イケアのジェンダー・インクルーシブ・イニシアチブを主導するイケア・ジャパンのCEO兼CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)のヘレン・フォン・ライス氏は、同社の管理職レベルを男女平等の5:5に引き上げることに成功し、日本社会に好影響を与えています。その功績により、ライス氏は「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017」を受賞。ライス氏にイケアがいかにロールモデルとして日本により良い影響を与え得るか、インタビューしました。

―イケア・ジャパンのジェンダー・インクルーシブのプロセスの中で、「女性のエンパワーメント」と「男性のメリットの再定義」にはどのように取り組まれたのでしょうか。

このプロセスは「平等は人権だ」という事実を認識することから始まります。日本では、女性は男性と同程度に高い水準の教育を受けていますし、女性リーダーが経済成長において日本を支えていることも分かっています。また、多様なリーダーシップを持つ企業がより良い財務的結果をもたらすことも分かっています。

プロセスにおいては、まず意図および目的について合意し、次に目標や測定値を設定する必要がありました。重要なものは数字で評価されるのです。経営陣は、意味のあるKPIを設定する必要があります。イケアでは、男女管理職比率5:5がすべての国で測定されるべきグローバルKPIであると判断しました。

女性管理職を惹き付けるために最も大切なことは、女性のニーズに耳を傾け、柔軟なアプローチをとることです。たとえば、母親と管理職のどちらにもなることは可能です。これを実現させるために、私たちはコアニーズ、つまり社内託児所の設置や在宅勤務を望む声があることを認識する必要がありました。また、母親たちが学校に通う子どもをサポートし、必要ならば休暇を取れるように、柔軟に対応しなければなりません。さらに、女性同士の対話の機会を設け、自信を高めていただこうと、ウィメンズメンターシッププログラムも実施しています。

父親については、日本には非常に寛大な育児休業制度があります。ですが、利用されていません。イケアでは、休暇を取ることをお勧めしています。その手段の一つとして、育児休業の経験者にそれぞれのユニークな体験を共有してもらい、休暇の取得をためらう男性たちのロールモデルとなっていただいています。

―文化の違いをうまく乗り越えるためのアドバイスをいただけますか?

ある国において外国人であるということは、その国の文化的側面をたくさん学ばなければならない、ということです。日本のコミュニケーション方法は、私が経験したどの文化とも大きく異なります。日本では、マナーの多くが男性のコンテクストに基づいたものです。ですが、好奇心を持ち、自分は新参者なのだという事実を受け入れる意欲があれば、ほとんどの困難を克服できます。私たちはみな人間であり、性別は関係ありません。会議室で女性が私1人のとき、少々戸惑ってしまうこともありますが、そんなとき私はそう考えるようにしています。

また、私のスウェーデン人としてのバックグラウンドが、日本のビジネスコンテクストを理解するのにある程度役立っているのではと思います。スウェーデンも日本も、コンセンサスを重視し、信頼の上に成り立つ文化だからです。

日本は現在、女性を労働力として、特にリーダーやキーステークホルダーとして、認めるプロセスの途中にあります。今は、とにかく行動を起こすことが大切なのです。変革に取り組むには、プロセスのどの点にいるのかを理解することが重要です。日本は管理職における女性の割合を増やしたいと思っていますか? もしそうであれば、社会変革がいくつか必要になります。つまり、社内託児所を増やす、労働時間に柔軟性をもたせる、課税制度を変えて共働き家庭を助ける、といったことです。

―ボトムアップで変革を起こしたいと考えている女性にアドバイスをお願いします。

いつもお伝えしているのは、大事なことについては事前準備を整えるようにしましょうということです。具体的には次のようなことです。

1)平等の実現に向けて明確な意欲や方向性を持つ企業を選ぶ。
2)仕事を持ちたいという願望をパートナーが理解しているかどうか、しっかり確認する。
3)管理職に自分のニーズをはっきりと伝える。

コロナ禍により、新たな働き方や暮らし方への道がいくらか開けました。管理職はこうした新たなニーズに特に耳を傾け、これを出発点として利用し、管理職の女性割合の引き上げにつなげる必要があります。

―コロナ禍で変わったことは何でしょうか。

イケア・ジャパンは幸運にも営業を続け、在宅時間が増加した多くの方々を応援させていただくことができました。パンデミック中はオンライン販売が倍増し、お客様のニーズに合わせて迅速に調整する必要がありました。その一方で、イケアのコワーカーやイケアストアを訪れるお客様が安全だと感じていただけるよう、対策を強化する必要がありました。

明確なミッションを持つ企業として、イケアでは社会支援も大変重要なことと考えています。日本では、病院やサポートが必要な家庭、フードバンクに25,000点以上の製品を寄付してきました。今後もシングルマザーなど立場の弱い人々のニーズに応えられるよう、さらに多くの支援をさせていただきたいと考えています。

テレワークは、男女が家庭でより対等なパートナーとなる鍵になるでしょう。誰もがワークライフバランスを改善できるチャンスなのです。この動き方が今後も発展していくことを強く望んでいます。いい仕事や効率的な作業を行うのに、狭いオフィスに長時間座る必要はないのですから。

コロナ禍により、人生で本当に大切なこと、つまり、お互いを大切にし、地球を大切にすることにもっと社会の注意が向くようになったと思います。

*本記事は、GLOBIS Insightsに2020年10月9日に掲載された記事を翻訳・編集して転載したものです。

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