5月20日無敵のトクホ・新発売「ヘルシアスパークリング」
これは絶対に売れる。というか、誰も買わなくても、オレが買う。毎日。ヒットするのは1000に3つといわれる飲料市場において、久々の大型商品の予感だ。そんな、「ヘルシアスパークリング」は、「足し算」の商品だと思う。
花王は1980年ごろから「栄養代謝」の研究をして、それが大ヒット商品の食用油・エコナを生んだ。2000年、世の中の、今日のメタボに続く肥満問題に目を付けヘルシアの開発プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトはスキンケア製品でも扱ったことのあるポリフェノールに注目し、茶カテキンに辿り着いた。そしてヘルシア誕生。「高濃度茶カテキン」という独自技術で誰もマネできないポジショニングを確立したのである。
ヘルシアは厚労省認可の「特定保健用食品」、いわゆる「トクホ」である。その効用は「高濃度茶カテキン飲料の継続飲用により脂肪の燃焼量が増加する」とされ、ちょいっとオナカ周りが気になる。もしくは、すでにメタボなヒトにはとっても必要な存在なのである。
だがしかし、筆者も試しはしたものの、挫折した。だって、まずいんだもの。茶カテキンとはもともと苦みの成分で、体脂肪への効果を期待するなら1日およそ540mgの摂取が必要となる。普通のお茶のおよそ3〜4倍。「そりゃ苦くて渋いわ!」と思う。
「良薬口に苦し」。その独特の苦くて渋い味わいを信奉するファンもいる。だが、そうでない人のために、花王は技術の力で、飲み口を柔らかにした「ヘルシア緑茶まろやか」を開発。さらにグレープフルーツ味のスポーツドリンクタイプ飲料「ヘルシアウォーター」を開発した。
そんなヘルシアであるが、5月21日に発売された「ヘルシアスパークリング」は何とも無敵な商品に仕上がっている。
■流行を取り入れたニューヘルシア
「スパークリング」と言うとおり、炭酸だ。炭酸飲料は、飲料市場の中でもダントツに伸長しているカテゴリーである。ノンカロリーである緑茶市場の顧客層を、ゼロカロリー商品群が奪う形で市場が伸びている。ヘルシアも緑茶カテゴリーであるが、そのカテゴリーから、なんと、ブランドをそのままにして、流行の炭酸カテゴリーを派生させたのだ。
花王、恐るべし。
シュワシュワの炭酸で、甘酸っぱい味が何ともおいしい。渋みや苦みはほとんど感じられない。しかし、しっかり茶カテキンは540mg入っている。つまり、ヘルシアと同じ。「苦くて渋いのをガマンして飲んだあの日々はなんだったの?」と花王に問いたい。そんな気分になるほどオイシイのだ。
ターゲットは、今までにヘルシアのまずさに挫折した人はもちろん、ただの炭酸好きも「カラダにいいから」と吸引し、「わずか21キロカロリーならチョコひとかけら分だからまぁオッケー」と、ゼロカロリー炭酸派も取りこもうっちゅう戦略なわけだ。
唯一のスクリーニング条件は189円という価格か。500mlペットボトル飲料の価格レンジは通常150円。トクホなりの高価格帯に設定している。その価格を受容できる層を全て飲み込もうというのだ。
ヘルシアスパークリングの戦略は、「足し算」だ。高濃度茶カテキンという、他にマネできない独自の必殺技、バリュープロポジションが基本となる武器だ。苦み・渋みをマイルドにし、低カロリーにして流行りの炭酸を加えて仕上げる。独自技術を基軸として、消費者の望むものを足し算で整合させていく。その技術とニーズの吸い上げをするマーケティング力には感嘆するものがある。