ファストファッションで一世を風靡したフォーエバー21が日本市場から撤退、さらに米国本社は破産申請したと報じられました。同社の展開するLAカジュアルは若い女性を中心に人気を博し、最盛期の2015年には約4,700億円の売上高を計上しました。しかし、アマゾンなどの通販事業の台頭によるショッピングモールの客数減少や、消費者の嗜好の変化などを要因として、売上高は減少の一途をたどっていました。在庫の積み上がりによる運転資本の増加が資金繰りを圧迫したことが、破産申請の要因の1つとされています。今後、同社の事業や従業員の雇用はどうなるのでしょうか。
フォーエバー21が申請した倒産の形態
フォーエバー21が申請した破産は、アメリカ合衆国連邦倒産法11条に基づく倒産手続き(通称、チャプター11)と言われ、過去にリーマン・ブラザーズ(2008年)、ゼネラル・モーターズ(2009年)、アメリカン航空(2011年)、イーストマン・コダック(2012年)、ウェスチングハウス(2017年)等に適用されました。
倒産の形態については、以前、「倒産にはどんな種類があるの?」で説明しましたが、日本では民事再生法に基づく倒産手続きに相当します。チャプター11は、日本の会社更生法や民事再生法と同じ「再建型」の倒産手続きです。なお、チャプター7は破産法に基づく倒産処理手続き、つまり「清算型」の倒産に当たります。
事業、経営者、雇用の継続性
チャプター11の特徴の1つは、債務者が主導となって再建計画を策定し実行することが可能な点です。これを占有債務者(debtor in possession)による再建手続き(DIP型)と言います。要するに現経営陣がそのまま経営を継続することが可能となります。一時的、部分的な事業の縮小や人員の整理はあるでしょうが、破産処理手続きなどの清算型の倒産処理と異なり、会社そのものが消滅することにはなりません。フォーエバー21に関しても、全世界で店舗数を半減させると報じられているものの、一定の事業や従業員の雇用は継続されるでしょう。
また、同じ再建型の倒産処理でも、会社更生法による手続きでは経営者は地位を退き、裁判所から任命された管財人が中心となって再建を進めます。一方、チャプター11のようなDIP型では会社の早期再建のためには会社の事業に精通した人物が経営を担うことが望ましいという考え方によります。しかし、占有債務者(現経営者)に詐欺的行為や重大な経営過誤があった等の場合はその限りではありません。
再建の期間、費用
同じ再建型でも、会社更生法による手続きは大企業を対象としており、株主、債権者など多数のステークホルダーとの利害調整が必要となります。そのため、法的に厳格な手続きを経る必要があり、時間と費用がかかります。
これに対して、チャプター11や民事再生のようなDIP型による再建手続きは当事者間の合意をベースに進められますので、時間と費用をセーブすることが可能です。倒産に至った会社を清算するか、再建するかの判断の結果、再建の道を選択したのであれば、会社をいち早く再建して軌道に乗せることを最優先に考えようということです。
とはいえ、チャプター11や民事再生においても多くの債権がカットされます。会社にとっては債務が免除されることで再建が進めやすくなりますが、債権者にとっては痛手です。したがって、再生をスピーディーに進めるためには、再建計画等について事前に債権者等の合意を得ることが前提となります。日本の例になりますが、マイカルが民事再生を試みるも、メインバンク等の支援が得られず断念し、その後会社更生法による再建となった例もあります。
今後、フォーエバー21の再建がどのように進められるかに注目していきたいと思います。