吉本興業のこれからに必要なのはどっち?リーダーシップ、それともマネジメント?

今夏、所属芸人の「闇営業」や反社会的勢力との交際発覚とその収拾をめぐる混乱によって、吉本興業が大きな注目を集めました。その後、第三者による経営アドバイザリー委員会が立ち上がり、事態は沈静化しているように見えますが、この先どのような展開が起こるでしょうか。そもそも、一部タレントが反社会的勢力と交際していたということだけならば、スキャンダルだとはいえ過去にも類似例のある話で、これほどのニュースバリューは持たなかったでしょう(実際、今回発覚したパーティーに同席していた比較的若手のタレントは、相応の謹慎処分のあと最近復帰しています)。

やはり、「闇営業」問題を上手く収拾できず、複数の大物芸人から離反とも受け取れる発言が続き、吉本興業の経営全体に及ぶ問題だと世間から認識されたことが大きいと思われます。

それでは、吉本興業の経営のどのような点が問題なのか、「リーダーシップ」と「マネジメント」に分けてもう少し詳しく分析していきましょう。

会社経営において、「リーダーシップ」も「マネジメント」も経営者、上司に求められるものという意味では似ていますが、中身については明確な違いがあります。ここでは、ハーバード・ビジネススクールのコッター教授の理論をベースに紹介します。

今回の件でまず明らかになったのはマネジメントに属する問題でした。マネジメントは、定められた戦略やルール等に基づき「効率的に組織を運営する」機能を指します。具体的には、短期の計画や予算を立案し、組織構造の設計や人員配置、社員やステークホルダーと業務執行のための円滑なコミュニケーション、予算や実績管理などが該当します。

今回の吉本に当てはめてみれば、闇営業の横行、契約書の不備、若手へのギャラ分配率の低さといった所属タレントとの関係や、事案の情報開示で後手に回ったこと、その件についてのタレントとの話し合いでパワハラ的な言動があったこと等々。これらは本来「あるべき姿」がルール等で決まっているはずなのにその通りできていなかったという意味で、マネジメントの問題です。

吉本の大崎会長、岡本社長ともかつては大物芸人の“マネージャー”から昇格して現職に至るという経緯があり、社内的にはマネジメントとして有能だったと思われますが、社内ではOKとされてきたルールが社会的には不備の目立つものだったという面も否めません。

その後、問題収拾の不手際がテレビのワイドショーなどで盛んに取り上げられるにしたがい、大物芸人から公然と経営体制そのものへの不満が表明されました。こちらは、リーダーシップの問題という色が濃くなります。

リーダーシップとは、比較的長期のビジョンを描き、そこへ向けて集団を導く役割を指します。混乱した状況の中でも、いかにメンバーをまとめ動機づけを行っていくかが問われます。それまではまとまっていたように見えても、いったん問題が発生したら公然と離反をほのめかす人が続出したのでは、リーダーシップの危機と言わざるを得ません。

もっとも、吉本はかつて大阪のローカルな演芸からスタートして、東京進出から今や完全に全国区の人気を獲得、「お笑い」の社会的地位向上にも大いに貢献しました。こうした言わば「右肩上がり」の時期はビジョンも明確でリーダーシップも発揮しやすかったのですが、いったんの目標は達成し、次は海外進出なのか、ネット番組への展開なのか、はたまたお笑いに留まらない娯楽コンテンツ全般への拡大なのか、これからのビジョンづくりが難しい時期ではあるのでしょう。

こうして考えていくと、表に出てきた問題は、契約の不備やギャラの安さなどマネジメント寄りのものが多いようでも、同社の将来を舵取りしていくためには、実はリーダーシップに係わる問題の方がより切実だと言えるでしょう。

さて、ここで日本企業全体の話と捉えてみれば、たとえ吉本のように問題噴出まではいっていなくても、なかなか安心できない会社も少なくありません。マネジメントを大過なく進めているだけで実はリーダーシップが不足している、もしくはリーダーシップの強さで押し切っているだけで実はマネジメントには綻びが多い。そんな会社に心当たりがあるという人もいるのではないでしょうか。リーダーシップとマネジメントは、どちらかが足りていれば十分ということはなく、目的や状況を把握したうえで使い分けていく必要があるのです。

■リーダーシップとマネジメントの違い(視聴時間:49秒)

 

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