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「進む道の真ん中」の共有が、いいチームやパフォーマンスをうみだす――『ずるい仕事術』佐久間宣行氏インタビューvol.2

投稿日:2023/06/08更新日:2023/06/16

グロービス経営大学院とフライヤーが共催した「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」で、「総合グランプリ」そして「ビジネス実務部門」で1位となった『ずるい仕事術』著者であるテレビプロデューサー:佐久間宣行氏へのインタビュー。Vol.1では、「組織で働くのが得意じゃない」と語る佐久間氏のご経験を通じ、現代の組織の中で成果をあげる行動について聞いた。vol.2では、組織を動かす立場としての「仕事術」を聞く。インタビュアーはグロービス経営大学院の松林博文。

「例示」で自ら気付く機会を与える

松林:前編では、組織の中での個人としてのお話を伺ってきました。ここからは組織を動かすという観点でお話を伺えればと思います。

前編で「機嫌よく働く」ように自分自身をコントロールされていると伺いましたが、自分自身はさておき、チームのメンバーにそういった行動のできない/やらない人がいてマネジメントに苦戦する、といったことがありそうです。佐久間さんはこういった場面でどうされていますか。

佐久間:そのメンバーが抱える課題によって引き起こされかねない悪い事例をみんなで共有し、「先手を打つ」という対処法をとっています。

人は人の言葉で劇的に変わることなんかないんですよね。自分の行動のせいで自分にマイナスがあると思わせることで封じ込めるのが一番です。例えば感情をコントロールできない人には、本人に「そのせいでみんなに『すげーダセぇ』って思われる」と思わせればいい。
僕がやっていることで言えば、「ここの局でこういう人がいたんですけど、最悪で……」と問題と同じような話をするなどしていますね。

松林:そこが佐久間流の組織カルチャーづくりとも言えるかもしれません。例示は問題を抱えたメンバー個人が自身で気づきを得ることができるだけでなく、明文化されておらず捉えるのが難しい組織全体のカルチャーを改善していくと考えればわかりやすいですね。

「共通認識」がいいチームをつくる

松林:特にプロデューシングや企画というお仕事では、よいカルチャーを備えた「チーム」を作ることが重要だと思います。

佐久間さんがご経験の中で感じる「いいチーム」のポイントを教えて頂けますか。

佐久間:共通認識ができており、トップが全てに目を配らせなくてもクオリティが保たれていくと、いいチームだと思います。あとは、単純に人間関係の軋轢がないこと。すると、いいアイデアがいいアイデアとして、誰かに阻まれることなく会議まで届くんです。

松林:いいアイデアが出るようにするための行動として具体的に心掛けられていることはありますか?

佐久間:毎回どの会議でも、頭10分から15分ぐらいは「プロジェクトがどこに向かうのか」「今どういう状態にあるのか」をディスカッションするようにしています。プロジェクトの現在地から、課題だと思っている点や指示を出していればその理由までをハッキリ落とし込むトークを最初にするんです。末端のADにも届くようにこうした取り組みをしているのですが、大きな効果があると感じますね。

松林:プロジェクトやチームの目的を明らかにし、その背景を毎回共有することで、あらゆるメンバーが等しく目的を意識できる状態にし、話しやすくするということですね。

佐久間:進もうとしている道の真ん中にあるものの再確認をするということが重要なので、この点は執拗にやるかもしれません。

できれば、メンバーひとりずつを把握したいですが、プロジェクトが膨れ上がってくると、そういうこともできない。だとすると一堂に会しているときに、できるだけコンセプトをハッキリさせるのがいいと考えています。また、ズレていると思ったら「ズレている」と言うし、無駄なことが起きるんだったら、原因をできるだけ排除するようにしていく。みんなの前ではっきりと伝えることで、共通認識をつくっていくんです。

ゼロ→イチでブレないために

松林:本文中には、「コンセプトをつくるときは感覚が近い人でチームを構成し、実行フェーズでは似ている人と違う人、いわばダイバーシティのある構成とするのがいい」とおっしゃっていました。

佐久間:コンセプトづくりは僕と、信用できる1人か2人と本当に少人数で固めたほうがいいと思っています。企画の面白さを考えれば、ゼロ→イチのフェーズでブレたくないからです。多様な人の意見を入れて丸い企画になるぐらいなら、最初に強いものをつくり、演出でどう一般化していくか考えたほうがいいと考えています。

しかし一般化してプロジェクトを運行していくときは、少人数では絶対に目が届かないところがあります。だからこそ、多様性が必要なんです。

ただ、このやり方については今も悩みながら進めています。例えば僕のやっている番組は、テレビで安易な視聴率の取り方をするためのカルチャーは、もうやめました。どちらかというと即物的な吸引力より、ブランドを構築していこうというのを何度も確認している。しかし、幅広い人が関わっていると、目が届かないので、考え方と異なるアウトプットが出そうになることもあるんですよね。

松林:そういった意味でも、やはり進む道の真ん中にあるものの確認、共通認識づくりが重要なのですね。

次回に続く


佐久間宣行のずるい仕事術
著:佐久間 宣行 発行日:2022/4/6 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社

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