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「組織で働くのが得意じゃない」僕が、組織でどう動いてきたか――『ずるい仕事術』佐久間宣行氏インタビューvol.1

投稿日:2023/06/01更新日:2023/06/08

グロービス経営大学院とフライヤーが共催した「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」で、『ずるい仕事術』が「総合グランプリ」そして「ビジネス実務部門」で1位となった。著者である佐久間宣行氏は『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』など数々のヒット番組を手がけてきたテレビプロデューサーであり、現在は独立して活躍の場を広げている。

そんな佐久間氏は、これまで組織の中でどのように動き、そして多様なスタッフ、出演者と共にひとつの番組をつくり上げるため、チームをどうつくり、動かしてきたのだろうか。グロービス経営大学院の教員で、エンゲージメントやクリエイティビティの向上にまつわる企業支援に携わる松林博文が聞いた。

みんな「組織と自分」で悩んでいる

松林:この度は受賞おめでとうございます。まずは受賞されたご感想からお聞かせいただけますか。

佐久間:嬉しかったですね。本を出してみて一番嬉しかったのは、読んでくれた色々な方から直接感想が届いたことでした。それらがこの賞という結果につながったと思うので、改めてその喜びを感じています。

松林:自分がビジネス書を出す人間になるとは思っていなかった」とおっしゃっていましたが、そんな佐久間さんが『ずるい仕事術』を執筆されることになったきっかけは何だったのでしょうか。

佐久間:もともと僕のInstagramには、ずいぶん前から仕事についての悩み相談がよく来ていて。実は少しだけ個別に直接答えている時期があったんです。

答えながら気づいたのは、驚くほど悩みがみんな似ているということ。また、企業の講演に呼ばれたときに受ける質疑応答でもそうだったのですが、「組織と自分」についての相談が多かったですね。

しかしラジオを始めて結構な期間が経つと、集まる相談が答え切れる分量ではなくなってきてしまいました。ただこういった相談に答えられるのは、20年超サラリーマンをやって独立した僕だけなんじゃないかとも思っていたんです。なので、個別には答えることができないけれども、どこかでこれまで答えてきたことをまとめたいなと。そんなところにダイヤモンド社さんから「ビジネス書を出しませんか」というオファーを頂き、じゃあ本にしてみようと思ったのがきっかけですね。

松林:世間からのニーズが増えていったからこそだったのですね。そんな本書ですが、冒頭の「自分は芸能界もテレビ界も苦手っぽい」という“告白”がまず衝撃的でした。

佐久間:とにかく、できれば1人の時間があるほうがうれしいタイプの人間なんです。特に20年前のテレビ界の風習や、縦割りの体育会な感じは合いませんでした。でも考えると、どの組織にも多かれ少なかれその風土はあると思います。なので、20年前の僕は「組織で働く」のが得意じゃないんだろうなと思っていました。

松林:今回はそんな観点を持った佐久間さんが持つ、組織の中でどう動くか、そして組織をどう動かすか、という観点から、書籍中の印象的なキーワードを起点に伺っていければと思います。

あらゆるミスは仕組みに問題がある、と考える

松林:まずお聞きしたいのが、「人を変えずに仕組みを変える」というワードについてです。他者を変えようと思っていても基本的にはなかなか変わらないし、変われないところがある。そこを仕組みから解決していこうという発想かと思います。

僕は組織開発や人材開発に関わっているのですが、佐久間さんのこの発想は組織コンサルティングの考え方と同じだと思ったんです。このことはご経験のなかで、何か気づきとなる出来事があったのでしょうか。

佐久間:自分に対しての考えを、組織にあてはめた、ということでしょうか。

もともと、自分自身をそんなに信用していません。自分はミスするものだし、忘れるだろうし、メンタルが持たないときもあるだろう、と思って仕事をしているんです。だからこそ、ミスしないように、できるだけルーチン化や仕組み化をしています。

これを組織にあてはめて考えてみると、そこに至るまでのアプローチの中で、仕組みがうまくいっていない、もしくは、個人をカバーできる状態になっていないせいでミスが発生していることがほとんどです。だからこそ、仕組みづくりは常に考えています。

松林:今おっしゃったような「自分を信用し過ぎないで、仕組みに頼る」とは反対に、昨今よく言われているのは「自分に自信を持ってやってみる」ということです。これは両面が必要だと思うのですが、社員がそのバランスをとれるようにする上で、組織はどうあればよいと思われますか。

佐久間:ミスをフォローできるルールと仕組みづくりをいくらしても、どうしようもないときはあります。しかし、だとしても「ミスは組織の仕組みのせいである」ということにして起こした本人を責めないことが大切だと思います。一方、逆にプラスになった結果は、仕組みのおかげにしないで個人に還元する。僕自身も、その両方のバランスを取った組織作りを意識しています。

機嫌がいいほうが、仕事が舞い込んでくる

松林:人によっては「会社に仲のいい人をたくさんつくれ」とも言います。しかし佐久間さんは本書で、あえて「会社は友だちをつくる場じゃない」と言い切られていました。

佐久間:会社の中の人間関係は、いいに越したことはありません。ですが、仕事が会社の中の人間関係のいい・悪いに左右されてしまうということ、それ自体が僕はすごく嫌で。

なので僕は、会社は仕事をしに行く場所だと思うことにしました。すると「会社で仕事なんだから機嫌よくしよう」と思うし、不機嫌でいたり、そのときの自分の感情を持ち込んだりするのは、友だちじゃないんだからやめよう、という思考になりました。友だちだと、甘えや期待が出てくるんですよね。こうなると、うまくいかなかったときに「裏切られた」などと思ってしまう。

松林:YouTubeでも「ここ20年ぐらい、怒りのスイッチを切った」という話をされていましたね。

佐久間:もともとあまり怒るほうではないですし、感情を表に出すことはあまりかっこ良くないよな、とは思っているタイプではあるんですが。仕事をしているうちに「機嫌の変動がない人のほうが評価高くね?」と気づいたんです。逆に評判の悪い上司は「なんでこんなキレちゃうんだろうな」と思われているなと。それで、機嫌の変動がない人のほうが仕事が舞い込んできて、最終的に得だなと思うようになりました。だから「機嫌のいいひと」でいるようにしています。

期待値をコントロールし、理不尽を乗り越えていく

松林:組織の中で言えば「人間の思惑と事情が絡まるチームでは、リスク管理が時には必要」ともお書きになっています。

佐久間:理想的な職場環境なんて一生ないと思っているんですよね。水準に達していない人も、感情をコントロールできない人もいるものです。いい意味でも悪い意味でも他人に期待して仕事していないということでしょうか。「理不尽は2~3回起こる」というのを内包させてスケジューリングしているので、僕の作品は大幅に間に合わなかったことはありません。

松林:サービスビジネスにおいて考えられる、適切な期待値をお互い持つと顧客との関係がうまくいく、という期待値コントロールの考え方に当てはまりますね。

そういった、ある意味のドライさや「相手に期待しすぎない」ことで、効率的にやっていこう、というお考えを佐久間さんはお持ちなのかなと思います。働くということに「理不尽なことなんかいくらでもある」「この理不尽をどうやって乗り越えていくのかというのが、ある種、成長だ」とハッキリおっしゃっていたのも印象的でした。

そんな非常に合理的に仕事を進めていらっしゃる姿勢に対して、本書の後半では「仕事は全部『縁』から始まる」といった情緒的な世界観も持たれているなと思っていて。こういった考え方にはどう至ったのでしょうか。

佐久間:これに関しては、合理的に仕事を進めよう、という考えともつながっているんです。基本的には、縁を大事にして仕事をしているからこそ運が転がり込んでくると感じています。そうすると結局、その日その日の仕事をする相手に誠実であること、そして理不尽なことをしないことが大事になってきます。それが要は「機嫌よくいよう」となりました。逆算でたどり着いたんです。

松林:ここまで、組織の中で動く個人としてのお話を伺ってきました。ここからは組織を動かすという点でお話を伺えればと思います。

次回に続く


佐久間宣行のずるい仕事術
著:佐久間 宣行 発行日:2022/4/6 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社

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