動き出した?「金利」のイロハ ~ビジネスパーソンの必須知識 金利編vol.1~

今回の「ビジネスパーソンの必須知識」では、金利を取り上げます。生活者目線では住宅ローンや銀行預金でしか接することのない金利ですが、時に「経済の体温計」と例えられるほど、資本主義経済の根幹をなしていると言われているのが金利です。2022年に入り、世界的に金利が大きく変動する場面がみられるようになっています。ビジネスパーソンとして身につけておくべき知識や、着眼点について掘り下げていきましょう。

金利変動が久しぶりに話題に

金利というと預金金利や、住宅ローン金利などを想い浮かべる人が多いと思います。国内銀行の定期預金(1年物)の金利は、1991年当時は平均で6%を超えていましたが、2022年3月現在で大手行の定期預金金利は0.002%と極めて低い水準にあります*。

住宅ローン金利はどうでしょうか。メガバンク3行の3月の10年固定型基準金利は2.95%~3.55%と、前月比で各行とも上昇し、2015年以来の高水準となったとのことです。優遇後の実質的な金利は0.89~1.05%で、変動金利については前月から据え置かれたようです**。

金利とは、資金の借り手が貸し手に支払う利息が、元金に対しどの程度の割合なのかを示す数値です。預金の場合、預金者が貸し手で金融機関が借り手、住宅ローンの場合、金融機関が貸し手で住宅購入者が借り手になります。

日本では原則として、全ての金利が市場で自由に決められることになっていますが、物差しとなる指標金利として代表的とされるのが「新発10年物国債利回り」です。一般的に「長期金利」と呼ばれます。「新発」という語が示すとおり、直近の入札で発行された最も新しい銘柄である10年物国債(償還までの期間が最も長い10年物国債)について、債券市場での取引で決まる利回りが、指標金利となっています。

政府による入札を通じ発行された国債は、流通市場(=債券市場)において投資家間で売買されます。投資家からの国債の需要が拡大した際、国債の市場価格は上昇することになります。流通市場では国債の価格変動が起きますが、発行時に定められた国債の利率は変わりません。

国債を購入しようとする投資家にとっては、国債価格の上昇は運用利回りの低下を意味します。逆に価格低下は、運用利回りの上昇につながります(金利の変動メカニズムについては、「金利編」のシリーズのなかで、今後もう少々詳しく触れることとします)。

以下は直近の日本の長期金利のグラフです。リーマン・ショックのあった2008年から下落基調を続け、2016年以降は低位で横ばいの動きを続けています。ところが2019年を底に持ち直しの動きもみせ、足元では6年ぶりの高水準を付けました。米国でも長期金利が一時2年半ぶりに2%台まで上昇しました。

Federal Reserve Economic Dataの月次データをもとに筆者作成)

ロシアによるウクライナへの侵攻を機に、安全資産と位置付けられる国債に対する投資家の需要がグローバルで高まったことなどにより、足元では世界的な長期金利の上昇は一服感も出ています。半面、金融制裁を受けたロシアの国債は暴落(金利は急上昇)し、デフォルト(債務不履行)の懸念も広がりました。長らく取り上げられることが少なかった金利に関するニュースが、ここにきて注目され始めています。

金利とビジネスの関係

さて、事業会社が資金を必要とするケースには、設備投資やM&Aなど様々なものがあります。金融機関からの借り入れをはじめとした負債による資金調達(デット・ファイナンス)の場合、返済期間と借入利率などが設定されます。借入利率は金融機関側の資金調達コストや借り手となる企業の信用力で決まります。

世の中の金利全般に上昇圧力が掛かり、金融機関の資金調達コストが上昇した場合、企業の借入利率は上昇することになります(=借入負担が増大します)。企業が社債を発行する際に投資家に支払う利息も増やす必要に迫られます。

負債を多く抱える企業が、既に発行した社債の償還や借入金の返済のために新たな資金調達をしなければならないタイミングで、市中金利が大きく上昇すると、場合によっては経営破綻につながりかねません。

良い金利上昇/悪い金利上昇

では金利上昇は企業にとって100%悪なのでしょうか? そんなことはありません。一般的に景気の回復・拡大局面では、商品の生産を増やすために新工場を建設したいというような、企業による資金ニーズが拡大していきます。「より高い利息を払っても資金が欲しい」という企業が多くなれば、世の中の金利に上昇圧力が掛かります。この場合は良い金利上昇の一例です。

景気拡大局面ではないのに、金利が上昇すると、企業活動は一段と停滞してしまいます。金利編のシリーズのなかでもこれから触れますが、例えば地政学リスクの高まりや天候不順などが原因となり、物価が大きく上昇した場合、貨幣価値は低下します。同じモノを購入するのに、従来よりも多くの資金が必要になる(資金需要が拡大する)ため、結果として金利は上昇します。しかし購入するモノの量が変わらないなら、経済が拡大しているとは言えません。実体経済の回復に結びつかない金利上昇は、悪い金利上昇と呼ばれることがあります。

金利の種類

先ほど代表的な指標金利のひとつに長期金利があると触れました。債券市場で決まる金利には、短期金利、中期金利、超長期金利も存在します。短期金利は償還までの期間が1年以下の金融資産の金利で、1年を超えて5年以下の債券の金利は中期金利、5年を超えて10年以下の債券の金利は長期金利、10年を超える債券の金利は超長期金利となります。金融に関するニュースに登場する代表的な金利を表にまとめます。

短期金利 中期金利 長期金利 超長期金利
国庫短期証券:3カ月物、6カ月物、1年物 無担保コールレート翌日物など 新発2年物国債利回り、5年物国債利回り 新発10年物国債利回り 新発20年物国債利回り、30年物国債利回り、40年物国債利回り

 

次回、vol.2では、短期から超長期までの金利水準を示す「イールドカーブ(利回り曲線)」や為替相場への影響、海外金利の基礎知識などを押さえていきます。

ビジネスパーソンの必須知識・金利編シリーズの記事はこちら。

vol.2 「イールドカーブ」は何を示す?
vol.3  2022年の金利上昇、その要因とは?
vol.4 「指し値オペ」とは何のこと?

参考:
*日銀「銀行預金の金利(1994年10月3日まで)」https://www.boj.or.jp/statistics/stop/depo_rate/index.htm/
  および大手行の定期預金金利情報など

**日本経済新聞電子版(2022年3月1日)「住宅ローン固定金利上昇続く 変動型と差広がる」
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58643310Y2A220C2EE9000/

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