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有価証券評価損とは?取り消しが可能な場合とその仕組みを分かりやすく解説

投稿日:2025/10/09更新日:2025/11/13タイマーのアイコン 読了時間 6分

有価証券評価損とは、株式や債券などの時価が著しく下落した場合に、その減少分を損失として計上する会計処理です。グロービス経営大学院の教員が執筆した記事をもとに解説します。

有価証券評価損とは

有価証券評価損とは、企業が保有している株式や債券などの有価証券の時価が著しく下落した際に、その価値の減少分を損失として計上する会計処理のことです。

簡単に言えば、会社が持っている株式の値段が大幅に下がったとき、その下がった分を「損失」として帳簿に記録することを指します。通常、株価が取得価格の50%程度以上下落した場合に、この評価損を計上することが求められます。

この会計処理は、企業の財務状況をより正確に反映するために行われるもので、投資家や債権者が企業の真の財政状態を把握するのに重要な役割を果たしています。

なぜ有価証券評価損が重要なのか - 企業の真の価値を見極める鍵

有価証券評価損は、企業の財務報告において極めて重要な意味を持っています。その理由は、企業の真の財政状態を正確に把握し、適切な投資判断を行うための基盤となるからです。

①投資家にとっての重要性

投資家にとって有価証券評価損は、企業の投資判断能力やリスク管理体制を評価する重要な指標となります。大きな評価損が発生している企業は、投資戦略に問題がある可能性や、市場リスクに対する備えが不十分である可能性があります。

また、評価損の計上タイミングや手法からも、企業の会計処理の透明性や信頼性を判断することができます。適切なタイミングで評価損を計上している企業は、財務報告の信頼性が高いと評価される傾向があります。

②企業経営における意義

企業経営者にとっては、有価証券評価損は投資ポートフォリオの見直しや、リスク管理体制の強化を検討するきっかけとなります。定期的に保有有価証券の評価を行い、必要に応じて適切な損失計上を行うことで、より健全な財務体質を維持できます。

さらに、評価損の発生パターンを分析することで、将来の投資戦略の改善にも役立てることができます。

有価証券評価損の詳しい解説 - 会計処理の仕組みと種類別の特徴

有価証券評価損を正しく理解するためには、有価証券の分類と、それぞれに応じた会計処理方法を知ることが大切です。

①有価証券の分類と評価方法の違い

企業が保有する有価証券は、その保有目的によって「売買目的有価証券」「満期保有目的債券」「その他有価証券」の3つに分類されます。

売買目的有価証券は短期的な売買利益を目的とした有価証券で、常に時価で評価され、時価変動分は損益として計上されます。満期保有目的債券は満期まで保有する意図で取得した債券で、通常は取得原価で評価されます。

最も複雑なのが「その他有価証券」で、これは上記以外の有価証券を指します。この分類の有価証券は時価で評価しますが、時価変動分は通常、損益ではなく貸借対照表の純資産の部に「有価証券評価差額金」として計上されます。

②評価損計上の判定基準

その他有価証券において評価損を計上するかどうかの判定には、明確な基準があります。最も一般的な基準は「時価の著しい下落」で、通常は取得価格に対して50%程度以上の下落が目安とされています。

ただし、この基準は機械的に適用されるものではありません。企業は株価の下落要因や回復可能性、保有期間などを総合的に判断して、評価損の計上要否を決定する必要があります。重要なのは、一時的な市場変動なのか、それとも根本的な価値の毀損なのかを適切に見極めることです。

③四半期決算と年度決算での処理の違い

四半期決算における有価証券評価損の処理は、年度決算とは異なる特別なルールが適用されます。四半期では「洗替法」と「切放し法」のいずれかを選択できます。

洗替法を選択した場合、四半期で計上した評価損は暫定的なものとして扱われ、その後株価が回復すれば評価損を取り消すことができます。一方、切放し法では一度計上した評価損は取り消すことができません。

この違いは、四半期財務諸表の性質が年度決算と異なることを反映しています。四半期は中間的な報告であり、年度決算での最終的な判断に向けた暫定的な評価という位置づけになっています。

有価証券評価損を実務で活かす方法 - 適切な処理で企業価値を守る

有価証券評価損の知識は、実務において様々な場面で活用されます。適切な処理を行うことで、企業の信頼性向上や投資判断の精度向上につなげることができます。

①投資判断における活用シーン

投資家や金融機関の融資担当者は、企業の有価証券評価損の計上状況を詳しく分析することで、その企業の投資リスクを適切に評価できます。

例えば、評価損の計上タイミングが適切でない企業(株価が大幅に下落しているにも関わらず評価損を計上していない企業)は、財務報告の透明性に疑問符が付く可能性があります。逆に、適切なタイミングで評価損を計上している企業は、保守的で信頼できる会計処理を行っていると評価できます。

また、評価損の戻し入れ(取り消し)が適切に行われているかも重要なチェックポイントです。洗替法を採用している企業で、株価回復時に適切に戻し入れを行っていない場合は、利益操作の可能性も疑われます。

②企業の財務管理における実践的なポイント

企業の財務担当者にとって、有価証券評価損の適切な処理は、正確な財務報告と効率的な税務処理の両面で重要です。

まず、定期的な時価評価の実施体制を整えることが大切です。月次や四半期ごとに保有有価証券の時価をチェックし、評価損計上の要否を検討する仕組みを作ることで、適時適切な会計処理が可能になります。

また、洗替法と切放し法の選択も戦略的に行う必要があります。業績の変動が大きい企業や、保有有価証券の時価変動が激しい企業では、洗替法を選択することで、四半期ごとの業績をより適切に反映できる場合があります。

さらに、税務上の取扱いも考慮する必要があります。会計上の評価損と税務上の損金算入要件は必ずしも一致しないため、税務リスクを避けるためにも専門家との連携が重要です。

参考ページ

有価証券評価損は取り消すことはできるの?

  • GLOBIS学び放題×知見録

    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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