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株式報酬とは?会社と役員をつなぐ新しいインセンティブの仕組み

投稿日:2025/09/05更新日:2025/11/07タイマーのアイコン 読了時間 7分

株式報酬とは、自社株式を役員や従業員に報酬として与える制度です。グロービス経営大学院の教員が執筆した記事をもとに解説します。

株式報酬とは

株式報酬とは、企業が役員や従業員に対して、現金ではなく自社の株式を報酬として付与する制度のことです。

従来の日本企業では、役員への報酬は固定給や現金による賞与が主流でした。しかし、グローバル競争が激化し、国内市場の縮小が進む現在、企業にはより積極的な「攻めの経営」が求められています。そこで注目されているのが、この株式報酬という新しい仕組みです。

株式報酬の特徴は、受け取る人の利益が直接会社の株価や業績に連動することです。つまり、会社の価値が上がれば報酬も増え、逆に価値が下がれば報酬も減るという、まさに運命共同体のような関係を作り出します。これにより、役員や従業員は自然と会社の長期的な成長を意識するようになるのです。

なぜ株式報酬が重要なのか - 現代企業が抱える課題への解決策

株式報酬が注目を集める背景には、現代の企業経営が直面するいくつかの重要な課題があります。

①短期志向からの脱却が急務

従来の現金報酬システムでは、どうしても短期的な成果に目が向きがちでした。四半期ごとの業績や年度末の数字を重視するあまり、長期的な競争力強化や持続可能な成長への投資が後回しになってしまう傾向がありました。

株式報酬は、この問題を根本的に解決します。株式の価値は短期的な利益だけでなく、将来への期待や企業の持続的な成長力によって決まります。そのため、株式を報酬として受け取る役員は、自然と中長期的な視点で経営判断を行うようになります。

②リスクテイクへの動機づけが必要

日本企業の多くは、安定志向が強く、新しい挑戦やリスクを取ることに消極的だと言われてきました。しかし、変化の激しい現代のビジネス環境では、適切なリスクを取って新しい価値を創造することが企業の生き残りには欠かせません。

株式報酬は、このリスクテイクに対する強力なインセンティブとなります。大胆な挑戦が成功すれば株価が上昇し、報酬も大きく増える可能性があります。一方で、失敗すれば株価の下落とともに報酬も減ってしまいます。この仕組みにより、役員は慎重かつ戦略的にリスクを評価し、企業価値向上につながる挑戦を積極的に行うようになります。

株式報酬の詳しい解説 - 3つの主要な制度とその特徴

株式報酬には、関連する法令や目的に応じていくつかの種類があります。それぞれに独特の特徴と適用場面があるため、企業は自社の状況に最も適した制度を選択する必要があります。

①ストックオプション(新株予約権)- 将来への期待を込めた権利

ストックオプションは、株式報酬の中でも最も知られた制度の一つです。これは、企業が役員や従業員に対して、将来の特定の時期に予め決められた価格(権利行使価格)で自社株式を購入する権利を与える仕組みです。

例えば、現在の株価が1000円の時に、3年後に800円で株式を購入する権利を付与したとします。3年後に株価が1500円まで上昇していれば、権利を行使して800円で株式を購入し、1500円で市場で売却することで700円の利益を得ることができます。逆に株価が800円以下になっていれば、権利を行使しなければ損失はありません。

この制度の魅力は、株価の上昇局面でのみ利益が生まれることです。そのため、受け取る側は積極的に企業価値を向上させる活動に取り組むようになります。また、最近では日産の元会長のケースで注目されたストックアプリシエーション権(SAR)のように、実際に株式を取得するのではなく、株価上昇分を現金で受け取れる仕組みもあります。

②リストリクテッドストック(特定譲渡制限付株式)- 確実性と継続性を重視

リストリクテッドストックは、企業が役員や従業員に無償で株式を付与しますが、一定期間(通常は数年間)は売却などが制限される株式です。平成28年の法改正により導入が進み、多くの日本企業で採用されるようになりました。

この制度の特徴は、株価の変動に関係なく実際の株式を受け取れることです。ただし、付与から一定期間は売却できないため、受け取った人は必然的に中長期的な視点で企業価値の向上を考えるようになります。

例えば、入社時に100株のリストリクテッドストックを付与され、5年間は売却できないとします。その5年間で株価が上昇すれば大きな利益になりますし、下落すれば損失となります。しかし、ストックオプションと違い、株価がどんなに下がっても株式自体は手元に残るため、長期的な回復を期待することができます。

③パフォーマンスシェア(業績連動株式報酬)- 成果と報酬の直接的な連動

パフォーマンスシェアは、中長期の業績目標の達成度合いに応じて株式を付与する制度です。売上高の成長率、利益率の改善、ROE(自己資本利益率)の向上など、予め設定した指標の達成状況に基づいて、付与される株式数が決まります。

この制度の優れた点は、単純な株価の変動だけでなく、企業の実際の業績改善に報酬が連動することです。市場全体の影響で株価が上下することはありますが、パフォーマンスシェアでは企業固有の努力と成果がより直接的に報酬に反映されます。

例えば、「3年間でROEを15%以上に改善する」という目標を設定し、達成度合いに応じて0株から1000株まで段階的に株式を付与するような仕組みです。これにより、受け取る側は株価だけでなく、実際の事業運営の改善に強いインセンティブを持つようになります。

株式報酬を実務で活かす方法 - 効果的な導入と運用のポイント

株式報酬制度を成功させるためには、単に制度を導入するだけでなく、企業の状況や目標に合わせた適切な設計と運用が不可欠です。

①企業ステージに応じた制度選択が成功のカギ

株式報酬制度の選択は、企業の成長ステージや現在の課題によって大きく変わります。

急成長を目指すベンチャー企業では、ストックオプションが効果的です。将来の大きな成長を前提とした制度であり、限られた現金を温存しながら優秀な人材を確保・動機づけできます。一方で、すでに安定した収益基盤を持つ大企業では、リストリクテッドストックやパフォーマンスシェアが適しています。これらの制度は、既存の事業基盤を活かしながら中長期的な価値向上を促進します。

また、業界の特性も重要な要素です。技術革新が激しいIT業界では、大胆なリスクテイクを促すストックオプションが有効ですが、安定性が重視される金融業界では、着実な業績改善を促すパフォーマンスシェアが適している場合が多いでしょう。

②会計処理と税務の理解が運用上の重要ポイント

株式報酬制度を導入する際には、会計処理と税務上の取り扱いを正しく理解することが欠かせません。

会計上の特徴は、実際の現金支出のタイミングと費用計上のタイミングが異なることです。例えば、ストックオプションを付与した時点では現金の支払いは発生しませんが、付与時点の株式価値に基づいて報酬費用を計上する必要があります。

具体的には、付与時点の株価が2000円、行使価格が1000円、対象期間が2年の場合、年間500円((2000円-1000円)÷2年)の報酬費用を計上します。この処理により、将来のキャッシュフローへの影響を事前に財務諸表に反映させることができます。

税務上の取り扱いも複雑で、付与時、行使時、売却時それぞれで異なる処理が必要になることがあります。制度設計の段階から、会計・税務の専門家と連携して適切な仕組みを構築することが重要です。

参考ページ

株式報酬って何のためにあるの?

  • GLOBIS学び放題×知見録

    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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