ヒトへの向き合い方の変遷について、自己理解を深めるツールのひとつであるクリフトンストレングス・テスト(ストレングス・ファインダー)による強みの源泉と結びつけながらグロービス経営大学院卒業生に聞くシリーズ。
前回は、自分の資質を自分起点で行使することをやめ、個々のメンバーのユニークな個性を尊重した上で(個別化)、それらが活きるように3人のリーダーそれぞれ資質を効果的に発揮する「スキル」を意識的に身につけ、自己変革を遂げられた経験について語っていただいた。
最終回は、その行動変化に至る過程で、あらためてグロービスでの学びやコミュニティがどのように影響したのか? さらに今回のテーマである「ヒトへの関心」の自己変化をどのようにとらえているのかを聞いてみたい。
多様な仲間たちと築くネットワークの中での気づきが財産に
Q:自分の行動を変化させる過程でうまくいかなったとき、挫折しそうになったとき、グロービスという場の存在はどういう意味をもったか?
青柳(上位5資質:個別化、着想、成長促進、学習欲、原点思考):
グロービスは、MBAの知識やスキルを学ぶ場だけでなく、世代を超えて認めあう最高の仲間や同志と出会える場所で、その仲間の存在も大きかった。私が失敗して折れてしまいそうなときも、グロービスの仲間は、ポジティブに受け止めてくれる。そして、様々な状況で課題に向き合う仲間、同世代で愚直に行動し続ける仲間の姿に良い刺激をもらえる。
それと同時に、「できることもできないことも、今の自分を認めることが成長の第一歩なんだ」と気づかせてくれた。これまで「できること貯金」で生きてきた自分にとって大きな大きなマインドチェンジであり、苦労や葛藤を乗り越える財産になっている。
西川(上位5資質:最上志向、未来志向、着想、戦略性、親密性):
自分を変えることの不安や新しいことへ取り組む自分への周りの抵抗など、不安と葛藤だらけの日々だった。でも、グロービスでタックマンモデルを知り、混乱期でさえ、良い組織へのプロセスだと教えられると、自信を持って邁進することができた。
また、僕の場合、グロービスで様々なタレント持ちさんと学ぶことで、自分の限界も知ると同時に、最上志向、チーミング、アウトプットの最大化など、自分の強みが磨かれたと思っている。
植木(上位5資質:自己確信、達成欲、未来志向、個別化、戦略性):
グロービスで出会う同年代や諸先輩の方々は、凄くエネルギーがあって、前向きで明るい人が多い。そういったリーダーの方々からお話しを聞かせていただくと、失敗談を豪快に笑って話され、こちらがどん底と思える時でさえも未来を信じて行動されている。失敗しても前向きに進むことで、社会的にも成功をおさめ、人間性も深みがあり魅力的だ。そういう方々をみると、自分の強みを上手く使えれば、私もその方達と同じようにエネルギッシュな元気な大人となって、更に楽しい人生になるかもと思えたことは大きい。
MBAでの出会い・関わりでメンバーへの見方・関わり方にも変化が
Q:最後に今回のテーマでもあるご自身の「ヒトへの関心」の自己変化をどのようにとらえているのか?
青柳:もともと自分は「個別化」(*1)や「成長促進」(*2)といった人間関係構築力に強みがあり、人に興味があったのでは?と自問してみたが、過去は、利己=自己顕示のための人への興味であったように思う。クラスで学んだ「利他=利己である」と繋がる形での「利他」主体での人の興味にUPDATEされたのだと思う。他人のためと思ってやっていたのが、それが今は、自分が幸せな気分になれるためとなっていることに不思議な気持ちだ。
これも、グロービス本科生生活を通じて、能力開発とともに様々な年齢・性別・背景・価値観を持つ同志と交わっていく中で、純粋に、誰に対しても疑問を持ち、リスペクトを持てるようになったことが大きいと分析する。他人(ひと)さまの役に立ちたいという思いから、もっともっと勉強して、役立ちたいという思いも変化点だなぁと思う。本当に幸福度が増したと感じる。
西川:はじめは自分本位で自分の『知的好奇心を満たす』ことが起点で、個人プレーの延長として組織を動かしていたが、いつしか自身のやりたい事に関わってくれているチームメンバーの笑顔や楽しそうな姿、メンバーの成長した姿を見ると、今までに感じたことのない幸せな気持ちとなり、価値観が変わってきた。いまではメンバーの幸せにつながる事は自身の目標への必要要素と捉えているので、メンバーには興味をもち積極的に関わっている。一方で、自分の資質でもある「親密性」(*3)によるものであろうが、チームメンバーでない人々への興味は今後の課題だ。
植木:自分の場合、人間関係構築に関係する資質が下位に多く、あくまで自分の成し遂げたいことを実現するために、いかにメンバーの強みを戦略的に活用するか(「個別化」)というスタンスからスタートした。だが、周りに助けられプロジェクトが成功し、プロジェクト関係者から感謝されるようになると、そんな成功や面白い体験ができるんだと噂になり、お客様を含めて多くの方が自分のところに集まってきていただけるようになった。そうやって多くのメンバーと関わる機会が増えると、更にメンバーに助けてもらい、メンバーに感謝する機会も更に増えてくる。そのサイクルから他人に恩返ししたいとう利他心が自分の場合高まっていったように思う。
出会いによって意識が「自利」から「利他」へ
3人に共通することとして、MBA生活で受講生の多様性に触れることで、「個別化」を実現するための「スキル」が高まっていったこと。また、組織の成果創出が実現できるようになると、これまでの自分のためにメンバーに動いてもらうという自利から、メンバーの個性を本人のために活かしてあげようという利他心へ変化を遂げている。そして、自分と違う資質(たとえば自分の下位資質を上位にもっている他人)へのリスペクトが高まり、異なるメンバーの資質を組み合わせて最強のチームを作りたいという組織のリーダーとしての意識がさらに高まっていくのを確認することができた。
「ヒトへの関心がなかった自分がどう変わっていったのか?」
ヒトへの関心の有無を問わず、ヒトをリードする立場になれば、自分の資質(強みの源泉)を活かしてその役割を全うしようとする。ただその資質をうまく活かすにはそのための「スキル」を身につけなければならない。そしてそれが機能しだすと、メンバーへの感謝の念が自ずと生まれてくるということなのかもしれない。
(*1)「個別化」:一人ひとりが持つユニークな個性に興味をひかれる。異なるタイプの人たちの集団をまとめ、生産性の高いチームを作ることに長けている。
(*2)「成長促進」:他の人の持つ可能性を認識し、それを伸ばす。彼らの小さな進歩の兆候を見逃さず、成長の証に満足感を得る。
(*3)「親密性」:他の人たちとの緊密な関係を築くことに喜びを覚える。目標達成のために仲間とともに努力することに深い満足感を得る。
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