フィギュアスケートの公平な採点は難しい?「ハロー効果」の呪縛

ウィンタースポーツの観戦コンテンツとして、フィギュアスケートの人気はすっかり定着した感があります。今シーズンもここまで、グランプリ・シリーズや全日本選手権を楽しまれた人も多いでしょう。

テレビ中継を見た人は、各選手の演技が進むにつれて、画面左上に技の名前が表示され、緑色や黄色の四角が増えていくのに気がついたことと思います。これは近年始められた表示方法で、ジャンプやスピン等の技ごとに点数が予め決められていて、リアルタイムでその採点状況を視聴者にわかりやすく伝えるものです。

かつては、フィギュアスケートの採点法は、大きく技術点と芸術点に分かれ各6.0満点の0.5点刻み。また、選手の最終順位は審判団の相対評価によって決まるという、現在と比べるとかなり大まかなものでした。

それが、審判の不正事件等の影響もあり、全体的に評価基準を細分化、明確化、透明化する方向で改正が加えられてきています。背景には、「A選手よりもB選手の方が点が高いのはおかしい」という、実際の演技を見た観客の印象と審判の採点とのギャップが根強く残ってきたことがあります。たしかに採点する際の要素を細かく分け、加点・減点の基準等を予め定めた上で採点結果を公表していけば、「審判の恣意的な点数操作」を行う余地は小さくなったと言えるでしょう。

しかし、単に評価基準を細かく事前に取り決めれば、公平な採点が実現するかというと、必ずしもそうも行きません。注意しなければならないものの一つが「ハロー効果」です。

「ハロー効果」とは、特定の項目や要素による評価が全体の評価に影響を及ぼしてしまうことを指します。ちなみに、「ハロー」は挨拶のHelloではなく、後光を意味するhaloのことです(米語読み、英国読みだとヘイローに近い)。

■ハロー効果(視聴時間:59秒)

フィギュアの例で言えば、現行の採点法では技術点と構成点に分かれ、構成点はさらにスケート技術、パフォーマンス、曲の解釈など5つの項目に分かれているのですが、何か一つの項目の評価が目立って高い選手がいたとき、他の4項目も含めて全体として(実態以上に)高く評価してしまうというものです(何か一つの評価が目立って悪いとき、他の項目も低く評価するケースもありえます)。

本来であれば、評価項目があらかじめ分かれているということは、評価者側は各項目について独立の視点で評価しなくてはなりませんが、人間心理としてそこまでカッチリ割り切るのは難しいのです。厄介な点は、評価者は別に意図して「この人はある要素が素晴らしいから、他の部分でも評価を甘くしてやろう」としているのではなく無意識のうちに甘くなってしまう」ところにあります。

ビジネスの世界でも、人事考課や採用の場面で適切な人物評価を行うためには、このハロー効果に注意する必要があります。たとえば「英語が得意な人」や「会議で積極的に発言する人」がいたとして、もちろんこれらはそれ単体では望ましい性質ですが、そのために他の要素の評価も実態以上に甘くなっているかもしれません。

これは見方を変えれば、何か突出した長所を持てば、それとは直接関係ない他の要素の評価も有利に獲得しやすくなる、ということでもあります。広告宣伝の世界では、好感度の高い有名人が自社商品を使用しているシーンをCMに使いますが、これは単になるべく多くの消費者の目を引きたいというだけでなく、有名人の好評価をハロー(後光)として自分の商品の評価も高めようという狙いもあるのです。

 

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