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日本企業ではなぜイノベーションを興すのが難しいのか?

投稿日:2019/07/10更新日:2019/08/07

イノベーション

これから皆様に日本的大企業(※)におけるイノベーションについてお伝えしようとしている私達は、いわゆる日本の大企業と言われる会社に10年以上所属し、働きながらグロービスに通い、実務で使える学びを得てきた5名のミドルです。

経営について学んだ私たち全員が共通して感じた疑問が、「イノベーションを興しにくいと言われている日本的大企業で、ミドルである私たちでも事業変革やイノベーションは興せるのか?」でした。

この疑問を解決するために私たちは、研究プロジェクトの中で、実際に新規事業開発やイノベーションに取り組んだ経験のある方へのインタビューを行いました。本コラムでは、インタビュー結果から考察した、イノベーションの難所とその越え方、イノベーションをリードするミドルの人財要件について紹介したいと思います。

以下、我々の悩みの代弁者として、日本的大企業である電子機器メーカー・XYZ社に勤務する3人の女性たちが登場します。彼女たちのおしゃべりをのぞいてみましょう。日本的大企業が置かれている状況やイノベーションの壁など課題が見えてきます。それに応える形で我々の考察を展開したいと思います。

イノベーションに立ちはだかる壁って?

XYZ社:国内有数の電子機器メーカー。国内シェアは15%。業界トップ。
A子:営業部課長 40代前半
B美:開発部・新製品開発グループリーダー 30代後半
C代:人事部・採用チームグループリーダー 30代前半


A
子:最近、競合のJKL社が出した新商品みた?やられた~って感じだよね?やっぱり、あそこは外資系企業だし、トップからの号令で一気に進めたって聞いてるよ。スピードがあるよね。開発部、焦ってないの?

B美:もちろん幹部は大騒ぎ。実は、うちも似たような開発を進めていたのだけど、「主力商品と競合する」と、部長が開発を止めたらしい…。他にも、研究所が面白そうなネタをいくつも出してくるのだけど、開発会議にかけると「すぐに金にならなさそうだ」って、開発順位を後回しにされるんですよ。

C代:うちの会社は業界で売上規模ナンバーワンだけど、最近、製品の魅力が薄れている気がするのはそういうことだったのね。

A子:会社の多くの人が「このままではマズい」と心のどこかで思っているはずだけど、どうしてうちの会社ではイノベーションが興せないのかしら?うちだけでなく、日本企業全般に言えそうじゃない?

日本企業のかつての強みが、イノベーションにとっては弱みになっている?

少子高齢化による国内既存市場の縮小、グローバル化による競争激化、業界構造の変化、イノベーションを生み出しにくい組織構造などにより、成功者と言われてきた日本的大企業が窮地に立たされていると言われています。

実際に私達も、会社が過去の成功体験から抜けられず、既存ビジネスに固執していることに危機感を感じ、また社内に漂う閉そく感、優秀な人財の流出、経営状況の悪化を日々痛感してきました。企業が存続・成長するためにはイノベーションが必要というのは通説ですが、日本的大企業においては、より一層その必要性が高いと思っています。

ここで私達が考えるイノベーションを定義すると、「顧客があるといいなと思っているものを技術・製品・サービス・その他コンセプトを組み合わせて創造し、それが顧客に受け入れられ、経済・社会的な成果を一定規模で実現出来るもの」。言葉で書くと簡単ですが、いざ自分達の実務で具体化しようとすると難しいものです…。

実際、イノベーションの難しさについて書かれた本は数多くあります。

イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン)
成功するイノベーションは何が違うのか』(ネイサン・ファー/ジェフェリー・ダイアー)
ストラテジック・イノベーション』(ビジャイ・ゴビンダラジャン)
イノベーションを実行する』(ビジャイ・ゴビンダラジャン) Etc…

イノベーションに関する先行研究では、以下のような理由で大企業ではイノベーションが興せないと言われています。

  • 新規事業と既存事業はビジネスモデルが違うので、既存の経営システムが使えない。新規事業に対応するためには、これまでの成功パターンや常識を捨てなければいけないが、成功したがゆえにそれを捨てられない
  • 新規ビジネスが既存ビジネスの顧客やブランドを毀損することがあり、既存事業との対立が起きてしまう
  • 既存事業に合わせて効率化されたこれまでの業務スキルを無用にしてしまう
  • 大企業で「優秀」とされる人が持つスキルは、いわゆるオペレーションを効率的に実行するためのもので、イノベーションに必要なスキルとは違っている
  • イノベーションは結果が出づらく、金や人財など経営リソースを投入しても、売上や利益面での貢献度が低い。そのため大企業は手が出しづらい
    (以上、『ストラテジック・イノベーション』より)

そして私達が勤めている日本的大企業では、以下のような理由からさらに難しいと言われています。

日本企業の強みと言われてきた、効率的な事業推進力や、終身雇用、新卒一括採用など雇用形態の特徴による家族的なチーム力、合議制による決定プロセス、過去の大きな成功体験などは、イノベーションにおいては足かせとなっており、イノベーションには向かない背景があると言えそうです。

では、私達が日本的大企業でイノベーションを興すのは、やはり無理なのでしょうか?そんなことはありません。私達は研究プロジェクトで、日本国内の最前線で働く130名のミドルに、イノベーションについてのアンケートに答えてもらいました。そして、24名のイノベーション経験者に直接インタビューを行いました。そこで得た結論は、「私達、ミドルでも出来る!」。

第2話は、アンケートやインタビューから見えてきた日本的大企業での新規事業の始め方とその特徴、イノベーション人財がもつ資質などを紹介します。続く第3話、第4話では、新規事業で成果を上げてきたミドルへのインタビュー事例を詳しくお伝えし、第5話では、それでも残る課題をミドルたちの証言とともに探ります。イノベーションをリードするミドルとはどういう人で、どういう能力や資質が必要なのか、全5話にわたってお伝えしていきます。

※日本的大企業の定義:日本で創業し、高度経済成長という右肩上がりのいい時代を経験し、終身雇用・年功序列といったこれまでの日本的企業の特徴を持つ、従業員1,000人以上の業界で名が知られている企業

■次の記事
日本企業のイノベーションは組織戦で勝負

  • 中曽根恵子/名古比加里/山田陽子/川田枝美子/石岡琢磨

    中曽根恵子:グロービス経営大学院2018年卒業。株式会社リコー・デジタルビジネス事業本部にて新規事業の創出・ソリューション拡販を担当 名古比加里:グロービス経営大学院2018年卒業。株式会社JTBパブリッシングに勤務。営業チームのマネージャーとして、観光コンテンツを活用した法人向けソリューション営業を推進中 山田陽子:グロービス経営大学院2018年卒業。大手総合電機メーカー・空調事業経営企画部門にて欧州事業を担当。グループリーダーとして戦略を立案・遂行する 川田枝美子:グロービス経営大学院2018年卒業。大手新聞社勤務。販売部門のエリアマネージャーとして新聞販売網の維持・強化に携わる 石岡琢磨:グロービス経営大学院2019年卒業。株式会社大塚商会・SI部門課長として販売部門の営業管理

監修

  • 垣岡 淳

    グロービス経営大学院 教員

    関西学院大学商学部卒。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了(修士:経営学)、大阪産業大学大学院経営・流通学研究科博士後期課程修了(博士:経営学) 学部卒業後、大手食品メーカー入社。大手流通小売企業を対象とした営業部門のラインとスタッフを経験。その後大学院を経て株式会社日本総合研究所入社。コンサルティング部門にて消費財/生産財のメーカー及び商社、情報サービス/通信、流通小売、サービス等、幅広い顧客を対象に経営戦略・マーケティングを中心とした調査・コンサルティング活動に従事。 現在は複数の企業の経営アドバイザリーとして活動する傍ら、グロービスにおいてマネジメント・スクールや企業研修での講師を務める。複数の大学における非常勤講師、大阪産業大学客員教授(産学連携担当)などを歴任。各種セミナーにおける講演、雑誌等への寄稿も多数。

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