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現地に根差す組織づくりに向けた、人材育成の在り方とはー東南アジア現地化の要諦(前編)

投稿日:2022/10/06更新日:2022/11/11

日系企業の海外拠点で、重要施策の1つとしてよく位置付けられるのが「現地化への取り組み」です。海外拠点における「現地化」には、戦略の現地化や組織の現地化など、いくつかの観点があります。海外拠点の経営を担う駐在員は、現地化に向けた取り組みをどのように整理し、推し進めればいいのでしょうか?組織を現地化させるための取り組みの1つである人材育成の考え方について、グロービスアジアキャンパス プレジデントの葛山智子が解説します。(全2回、前編)

何の現地化に取り組むか? 組織の現地化は、戦略の現地化に従って推進される

現地化を考える際に、まず押さえたいことは「現地化とは何を指すのか?」です。

現地化というと、現地スタッフの雇用や、そこから一歩進んで現地スタッフを管理職へ登用する観点から「組織(人材)の現地化」をイメージする方も多いと思いますが、ここで1つ重要なことは、「組織は戦略に従う」という考え方です。これはアメリカの経営学者アルフレッド・チャンドラーの著書名にもなっている言葉で、戦略が決まらなければ、必要となる人材や組織も決まらないという考え方です。

現地化を考える際には、戦略の議論が先に来ます。戦略・ビジョンを定めることにより、その戦略を遂行するために必要な組織はどのような組織で、その組織構成員はどのようなスキルが必要か、解像度高く見えてきます。その過程で、現地スタッフの雇用促進や、現地スタッフの管理職登用などの必要性の度合いも定まります。何を実現させるために、組織や人材の現地化を行っていきたいか――これらの点を整理していくと、強い組織づくりに向けた人材の現地化を推進できると思います。

「組織は戦略に従う」ことを取り入れていく中で、さらに考えたいのは、長期的視点に立った海外戦略を策定・推進できるのは誰かという点です。多くの日系企業の東南アジア拠点では駐在員が担うことも多いようですが、駐在員は現地を3年前後で離れます。そのため、短期的視野に立った戦略の策定になりがちです。

一方で企業に求められるのは、中期的なビジョンを立て実行していくこと。それを担うことができるのは、地域に根差す現地リーダーの方々ではないでしょうか。だからこそ、戦略の議論を共にできる現地リーダーへの人材育成投資も必要になります。

現地化が進まない要因は、リーダー育成にあり

組織の現地化のためには、戦略の現地化が必要ですが、この「戦略の現地化」を進める人材開発に大きな課題を感じておられる経営者も多いのではないでしょうか。

その背景には、3つの要因があると思います。1つは、人材の移り変わりが激しい市場のため、人材開発を躊躇する心理が働いてしまい、人への投資自体を行っていないケース

2つ目は、研修は行っているが、研修の「全て」が人事マネジャーに任せっきりになり、経営陣の関与度が高くないことです。

実は、人材開発・育成には様々な種類の施策があり、その種類によって、誰が主体となり、どれくらいの時間をかけて実施していくかが異なります。定期的に同じ内容の研修を行う「職務別研修」「階層別研修」は人事マネジャーに一任したほうが良いと思います。

一方、「戦略の現地化」を推進していくような選抜人材・経営人材の研修は、内容が複雑、かつ経営状況に柔軟に合わせる必要があるため、人事部に任せるだけではなく、経営者自らの関与が必要になります。普段から多忙である経営陣ですが、「選抜人材・経営人材開発」を優先順位高く取り組めるかどうかが、企業のサステナビリティに大きく差のつくポイントになると思います。

3つ目は、研修内容がふさわしくないことに起因します。特に、「リーダー育成」と「マネジャー育成」を混同して実施されていることが多くあります。リーダー育成は、現地の戦略を策定する人材の育成。不確定要素が多い中でも試行錯誤しながら事業を進化・推進する力をつけていくものです。マネジャー育成は、指示されたことを確実に管理していく能力の開発です。

マネジャー育成だけでは、「戦略の現地化」と真の意味での「組織の現地化」の実現が難しくなるでしょう。しかしながら、現地化という考えのもと「マネジャー研修」のみに力を入れている企業が多いのが現実です。

現地化の推進に課題を感じている際には、自社の人材開発戦略がフォーカスしている点にずれが生じていないかを一度確認いただくとよいと思います。

組織開発・文化醸成を担うリーダーの育成

人材育成というと、スキルの獲得を目的とした研修を思い浮かべる方もいますが、我々グロービスが考える人材育成は、スキルの獲得にとどまらず、社員が自社の理念や戦略を深く理解・納得し、企業活動への貢献を積極的に行っている状態への組織変革を目的としたものだと考えています。

自社を現地の優秀な人が働きたいと思える組織、戦略達成に社員が主体的に貢献する組織にすることを目指す――それを実現する過程で、人材育成、特にリーダー育成の果たす役割は大きいと思います。組織文化は、その組織における意思決定の在り方やスタイルなどからつくられるものが多く、リーダー陣の日々の言葉・行動などとも密接に関係することが多いためです。

日系企業では、トップや日本からの出向者の影響も強くなります。トップをはじめ全ての駐在員があるべき言動、あるべき仕事の仕方の見本となり、組織内で日々活動しているか。その責務の重要性を理解し、日々の言動をとることも忘れずにいたいものです。

従い、現地化に向けた組織開発に取り組む場合は、マネジャー育成だけでなく、リーダー育成を人材育成の核に据え、しっかりと時間をかけて経営陣が取り組んでいくことが重要になると思います。

現地に根差す組織づくりは、現地に根差す戦略を立て、文化醸成も担うリーダーづくりから始まります。中長期的な視点を持って、じっくり時間をかけて組織開発を進めていくことで、真の意味で現地に根差す組織ができあがっていくと思います。

後編に続く

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