日本のビジネス環境における男女平等は、進んではいる一方、まだ途上にあります。現在、女性が直面している最大の課題は何で、それを克服するためにはどんなことが必要でしょうか。グロービス・マネジメント・スクールやグロービス経営大学院の女性講師に連載で話をきいていきます。第4回は、企業研修を担当する五十嵐苑子です。
※本稿は、以下GLOBIS Insights掲載の記事をもとにしています。
<Japanese Women in Business: How to Advance Your Career Despite Inequality>
Q1: 日本のビジネス環境における女性の課題と、その対処法は?
パーフェクトを目指さない
日本の女性の多くに見られる傾向として、仕事、家事、育児など、あらゆるものをきちんとこなそうという責任感の強さがあります。手を抜かずに、全て自分でやろうとしてしまうのです。顧客のあらゆる要望にスピーディに応えようと努力し、家族のために手の込んだ料理を作ろうとします。
しかし「Perfect is the enemy of good」という言葉があります。パーフェクトを目指すがあまり、その弊害が生じる可能性があるということです。
もし、あなたが全て完璧に遂行しようとしたら、目の前のことで手一杯になるでしょう。自分自身のミッションを刷新したり、拡げたりということができなくなります。あるいは、全てを完璧にしようとするがあまり、いずれもゴールまで達しないということもあるかもしれません。
あなた自身の時間的・物理的キャパシティがさらなる前進の妨げになるのです。それを避けるための3つの行動を紹介します。
- 自分自身の核となるミッションを明らかにし、「これだけは絶対に自分の手でやりたい!」と思うことを特定する
- 核となるミッションが明らかになったら、他のことに関しては遠慮せずに他の人の支援を仰ぐ
- 全てをパーフェクトにしようと思わない。「これで充分」と思えるレベルで問題ないことは多い。それは決して「手抜き」ではなく、「充分に足りる」のです
Q2:日本は家父長制で有名ですが、それでも成功を収めている女性起業家もいます。彼女たちはどのような点で異なっていると思いますか?
自分の可能性を信じる
成功を収めている日本の女性には大きく2つの共通点があると考えます。
- 自己肯定感が高いこと。自分の存在・自分の可能性を信じています。自分は唯一無二の大切な存在であり、力があり、可能性に満ちあふれている。こういった感情は通常は幼少期に養われますが、良いコーチやメンターに恵まれることで、大人になってから育むことも可能です。
- 志を持っていること。世界を良くしたいという気持ちが強く、自分自身がそれに貢献することができるということを認識しています。問題を放っておくことなく、それを解決し、より良い世界を作るために行動しています。
Q3:日本の男性が、より平等な職場環境のために、同僚の女性をよりよくサポートするためにできることは何でしょうか?
自らがマイノリティになる
何でも良いからマイノリティの当事者になる経験をしてみてください。通常は母親が多く集まるPTAの会合に行くのも良いでしょう。海外留学をして自分とは異なる国籍の人が多く集まる場所に身を置くのも一つです。
こうした経験をすることで、いかに多くのシステムがマジョリティの人たち向けに作られているか実感することができます。それだけでなく、何か居心地の悪さを感じた時に手を挙げて意見するのが、いかに難しいかも痛感するでしょう。ここからがスタートです。女性の社員が日頃感じていることを身を以て体感してください。そこから初めて本質的な解決策を考え始めることができるようになるでしょう。