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女性リーダーを育てるには何が必要か?――育成プログラム開発者に聞く

投稿日:2015/03/06更新日:2023/03/07

「女性の活躍支援」というスローガンが叫ばれて久しい。「202030」という数値目標も掲げられた。次世代リーダーとしての期待が働く女性に集まっている。ところが、主役である「働く女性たち」の表情は必ずしも明るい希望に満ち溢れていないようにも見える。グロービスの法人向け新コース「女性リーダー育成プログラム」の開発に携わった君島朋子 グロービス ファカルティ本部長に、女性リーダー輩出には何が必要かを聞いた。

「意欲や自信を持つことに壁を感じている」女性たち

編集部: 会社の中でキャリアを着実に積んでいく女性が増える一方で、「女性リーダー!」という掛け声に対してやや腰が引けている人たちもいるように見えます。

君島: 彼女たちは悩んでいますよね。男性に比べて、決して能力が低いわけではありません。でも、リーダーとして活躍しようと立ち上がる人がなかなか出てこない。その1つの理由として、女性が働きやすい風土や制度になっていないということがあります。これは日本企業が抱えた大きな課題です。ただ、そうしたカタチを整えたからといって、途端に女性リーダーが続々と生まれるというわけではありません。

私たちが実施した、企業の人事部やダイバーシティ推進室へのヒアリングによれば、女性リーダー候補の多くがリーダーになることへの「意欲や自信を持つことに壁を感じている」という発見がありました。

編集部: 「意欲や自信がない」のと「意欲や自信を持つことに壁を感じている」のでは大違いですね。

君島: その通りです。いくつかの要因があります。第1に、「女性リーダー育成」ということが意識されるようになってから年数が浅いので、男性社員と女性社員の“育てられ方”にかなりの差異があるということ。第2に、女性に家事や育児の責任が集中しがちな日本社会の構造、それを前提とした働き方の仕組み。第3に、リーダーの既成イメージが多分に“男性的”であり、女性リーダーとしてロールモデルを想起できないということ――が挙げられます。

こうした環境の中にいる女性たちに「次世代リーダーとしての自信を持て!意欲を持て!」と要求しても、彼女たちの心中に築かれた高くて厚い壁は、そう安々と崩れてはくれません。

実際、女性活躍に積極的な企業でさえ、こんなことが起こっています。

  • 女性課長を何人か輩出したが、後が続かない
    これまで継続的な育成をしていないため、数人のベテラン女性社員を抜擢した後は人材プールが枯渇してしまい、結果として後が続かない状態となる。
  • 昇進や良いプロジェクト等への選抜チャンスがあっても尻込みしてしまう
    選抜チャンスに直面した際、それまでのリーダー経験が少ないこと、自分なりに目指したいなと思う「リーダー像」をイメージしにくいことなどが要因となり、「私にはとても…」と尻込みしてしまう。その結果、周囲から「自信がない」「意欲がない」というネガティブな評価を受けてしまうこともある。
  • 育児支援制度等に「甘えている」と見られがち
    働き盛りとなる30代では出産・子育て等が重なり、企業の育児支援制度を利用する女性が多くなる。しかし、時短勤務などに対する職場・同僚の理解が足りないケースも見られ、本人は肩身の狭い思いをしているが、周囲からは制度に甘えていると見られがちになる。
  • 女性自身がリーダー(管理職)になることに魅力を感じていない
    リーダーには「長時間労働」「過剰な業務負担」があると考え、「リーダーにならなくてもいい」「今のままで十分」「そもそも、自分には向いていない」といった後ろ向きの意識が働き、リーダーになることへの魅力を感じにくい。

編集部: 女性リーダーが生まれない理由を女性のせいなどにはできませんね…。

君島: 企業社会の中でこれまで置かれてきた状況が男性とは全く違うのですから、急に「女性もリーダーに!」と言われても、すぐに方向転換はできません。ですから、女性が活躍しやすいような文化醸成や制度設計を進めることは大前提としながら、まずは働く女性たちに「環境はこれから大きく変わるので、自信を持っても良いんですよ、意欲を持っても良いんですよ」ということから分かってもらう必要があると思います。つまり、女性だからこその「壁」をまず超えてもらうのです。それが、私が開発に携わった「女性リーダー育成プログラム」の最大の狙いなのです。

「女性リーダー育成プログラム」の狙いとは

[caption id="attachment_82948" align="aligncenter" width="636"] グロービス ファカルティ本部長 君島朋子[/caption]

このプログラムでは、リーダー候補である女性のみを対象に、「リーダーになれるという自信」と「リーダーになってみようという気持ち」を持つことを支援します。3つのことを知ってもらいたいと思っています。

第1に、正しい自己認識を持ち、男性以上に自信を持つことが必要であることです。女性と男性のリーダー候補の間には、個人の努力で超えられないような生得的な差があるわけではありません。グロービスが行ったリーダー行動についての調査・分析によると、他者からの評価において男女差は認められないどころか、女性リーダーの方が評価が高かったほどです。フランスのビジネススクールINSEADの研究結果でも同様の結果が得られています。それにも関わらず、女性リーダーの自己評価は男性リーダーよりも低い傾向にあり、女性リーダーは自分自身を過小評価しがちということをデータが示しています。

第2に、リーダーのスタイルは多様で良いことです。これまでは、典型的リーダー像と典型的男性像には一致点が多いと考えられてきました。決断力、自信、自立などがキーワードです。その対極として「女性らしいリーダー」というよく分からないイメージの押し付けもありました。こうしたことから、自分自身が目指したくなる「自分らしいリーダー像」を持てなかったのです。まず、リーダーとしての自分自身のイメージをできるだけ明確に描くことから始めていただきたいのです。

第3に、同じ立場の多くの仲間がいて、それぞれの場所でリーダーを目指そうとしているということです。女性ならではの心理的な壁、出産・子育てなどのライフイベントへの悩み、少数派であるという意識など、男性とは共有しにくい要因は少なくありません。そうしたことを本音で語り合い、励まし合える仲間の存在は、多くの働く女性にとって一番の元気の源になると思うのです。

これらをしっかり認識してもらい、意識を転換してもらうために、まずは女性だけのプログラムを実施することが有用であると、私たちは考えました。

編集部: 女性の意識転換だけで十分でしょうか。

君島: 女性の活躍を推進するためには、職場のマネジメントの在り方も含めて考えていく必要があります。女性を育成する立場の管理職の方々や上長の皆さんにも、女性育成の戦略的意義を理解してもらい、これまでの考え方や価値観を見直していただくことが大切です。そのための研修プログラムを用意しています。さらに、本プログラムを修了した女性リーダー候補の方々には、経営戦略、マーケティング、アカウンティングといったマネジメントスキルの習得を目指したプログラムでご自身の能力をさらに高めていただけるようにしています。

働く女性が「自分らしいリーダー像」を描き、マネジメントスキルを磨き、男女の別のない職場環境で、溌溂とリーダーシップを発揮していただく――。このプログラムが、多くの女性に最初の一歩を踏み出す勇気を与えられたら素晴らしいと思っています。


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女性リーダーの卵たちよ、「恐れるな、道は拓ける」――女性リーダー育成プログラム講師対談

  • 君島 朋子

    グロービス経営大学院 研究科長

    国際基督教大学教養学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インクにて、経営戦略コンサルティングに従事。その後、グロービスにて、現・グロービス経営大学院の設立担当、コーポレート・エデュケーション部門ディレクター、ファカルティ本部長を経て、現在はグロービス経営大学院研究科長。教員としては、思考領域・人材マネジメントの科目を担当。キャリアデザイン学会会員。共著書に『武器としてのITスキル』、共訳書に『デジタル・シフト戦略』がある。

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