組織を動かし、チームでの成功に導くために欠かせない「リーダーシップ」。しかし、「リーダーシップとは具体的に何なのか?」「マネジメントとの違いは?」「優れたリーダーにはどんなスキルが必要?」などと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、リーダーシップの基本から、代表的な理論、そしてリーダーとして成長するための方法までを、ビジネススクールの知見からわかりやすく解説します。また、従来イメージされるようなトップダウン型だけでなく、成長を支援したり、状況に応じた柔軟な対応ができたりとする現代のリーダーシップについても説明します。
リーダーシップとは?
リーダーシップの定義
リーダーシップとは「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」のことを指します。個人や組織が目標を達成するために、人々を導き、影響を与える能力のことを指します。単なる指示や管理ではなく、ビジョンを示し、チームのモチベーションを高め、協力を促進することが求められます。
リーダーシップと聞くと、カリスマ性や決断力を発揮するようなイメージを持たれる方がかもしれません。しかしそれだけでなく、コミュニケーション力や共感力も重要です。また現代のビジネス環境では、状況に応じて柔軟にスタイルを変える適応力も不可欠です。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーの役目としてまず思い浮かぶのが、メンバーのマネジメントです。しかし、リーダーシップとマネジメントには、組織を成功に導く役割がある面で共通点がありますが、その機能には未来志向か現在志向かで明確な違いがあります。
リーダーシップが担うのは、未来に向けて変革を推し進める機能です。例えば、組織のビジョンを示したり、新しい方向性にむけた意識改革を通じてメンバーをまとめたり、メンバーのモチベーションを高めたりして実現を促進します。
マネジメントが担うのは、現在の組織状況を把握し、効率的に運営する機能です。短期的な計画や予算を立案するほか、組織構造の設計や人員配置、計画の詳細を決めて、実行に向けたコミュニケーションや問題解決をはかります。
リーダーシップの種類・主な理論
時代や組織に求められるニーズによって、リーダーシップにはさまざまなスタイルが開発されてきました。ここからは、代表的なリーダーシップの理論を紹介します。
オハイオ州立大学研究モデル
オハイオ州立大学研究モデルとは、リーダーシップ行動を「構造つくり」と「配慮」という2つの行動パターン軸で定義する理論です。
「構造つくり」とはメンバーの仕事に注目し、目標達成に必要な構造を明確に示そうとする論理重視のリーダーシップです。一方「配慮」は、メンバーに人間的な関心をもってメンバーの個人的な欲求の満足を図ろうとする、感情重視のリーダーシップになっています。
PM理論
PM理論とは、リーダーシップは「P機能(Performance function:目標達成機能)」と「M機能(Maintenance function:集団維持機能)」の2つの能力要素で構成されているとする理論です。日本の社会心理学者・三隅二不二氏によって提唱されました。
P機能は、メンバーへの指示や叱咤激励などにより、目標を達成する能力をいいます。一方M機能とは、人間関係に配慮し、集団のチームワークを維持・強化する能力です。この2つの能力要素の強弱により、リーダーシップは以下の4つに分類されています。
- PM型:目標を達成する力があると同時に、集団を維持・強化する力もある理想的なリーダーシップ。
- Pm型:目標を達成することができるが、集団を維持・強化する力は弱いリーダーシップ。
- pM型:集団を維持・強化する力はあるが、目標を達成する力が弱いリーダーシップ。
- pm型:目標を達成する力も、集団を維持・強化する力も弱いリーダーシップ。
条件適合理論
条件適合理論とは、いつでも普遍的に有効なリーダーシップ行動があるわけではなく、組織の置かれた状況(環境条件)によってふさわしいリーダー行動は変わるという前提で考えるものです。現在のリーダーシップ行動モデルのほとんどの基本となる理論です。
代表的な理論としては、「パス・ゴール理論」「状況応変型リーダーシップ」「エンパワーメント・リーダーシップ」「エモーショナル・リーダーシップ」「変革リーダーシップ」などがあります。
注目の集まる「サーバント・リーダーシップ」
サーバント・リーダーシップとは、メンバーへの奉仕を前提に、その後相手を導くことで組織を動かすリーダーシップです。米国のロバート・グリーンリーフ博士が提唱し、以下10種類の特性があるとされています。
- 傾聴:人の言うことをしっかりと聞ける
- 共感:相手の立場に立って、共感ができる
- 癒し:メンバーの傷を理解し、癒すことで集団や組織を大変革し統合させる
- 気づき:物事を観察し、空いてや状況の異変に気づくことができる
- 説得:何か大きな使命や目標について、支配的ではなく訴える説得力をもつ
- 概念化:組織のビジョンや将来を見据えてコンセプトとして概念化する
- 先見力:現在の事柄について過去の教訓に照らし合わせて将来を予想できる
- スチュワードシップ:自分のメリットよりも相手を喜ばせることに喜びを感じ、信頼される
- 人々の成長に関わる:一人ひとりの成長に深くコミットできる
- コミュニティづくり:メンバーが大きく成長でき、有能な人材を多く創出できるコミュニティをつくれる
リーダーシップの発揮に必要な能力
ビジョンを描く力
まずリーダーシップを発揮するうえで欠かせないのが、ビジョンを描く力です。組織やチームが目指す理想の未来像を示すビジョンが明確でなければ、メンバーも方向性が定まりません。
優れたリーダーは、変化する環境の中で本質を見極め、長期的な視点で目標を設定します。そして、そのビジョンをわかりやすく伝え、チームが共感し、一体感を持って取り組めるようにすることが重要です。
また、ビジョンを描くだけでなく、それを実現するための戦略や具体的な行動計画も示さなければなりません。理想と現実のギャップを埋めるために、柔軟な思考と実行力を兼ね備えたリーダーが求められます。
組織を統合・メンバーを動機付けするコミュニケーション力
組織を統合し、メンバーを動機付けるコミュニケーション力も、リーダーシップの発揮のために重要な力です。組織が一丸となって目標に向かうためには、リーダーが明確なメッセージを発信し、メンバーの共感と信頼を得ることが不可欠です。
優れたリーダーは、単に指示を出すのではなく、対話を通じてメンバーの意見や価値観を理解し、彼らのモチベーションを引き出します。また、組織内の情報共有を円滑にし、ビジョンや目標の意義を伝えることで、チーム全体の結束を強化します。
さらに、メンバーの努力や成果を適切に評価し、感謝を伝えることで、働く意義や達成感を感じさせることが重要です。こうしたコミュニケーションが、組織の活性化と持続的な成長につながります。
目標達成に向けた環境を整える力
最後にご紹介するリーダーに求められる力が、目標達成に向けた環境を整える力です。どれほど優れたビジョンや戦略があっても、実行できる環境が整っていなければ成果は生まれません。
まず、適切な人材配置や業務分担を行い、メンバーが能力を最大限に発揮できるようにすることが重要です。また、予算・時間・人員などのリソースを確保し、効率的に活用できる仕組みを整えることも欠かせません。
さらに、心理的安全性の高い職場を作り、メンバーが自由に意見を交わせる雰囲気を醸成することで、主体的な行動や創造的なアイデアが生まれやすくなります。リーダーは単に指示を出すのではなく、チームが成果を出しやすい環境を作ることこそが、成功への鍵となるのです。
リーダーシップ能力を身につける方法
リーダーシップは生まれつきで決まるのではなく、必要な能力を磨くことで後天的に成長することができます。リーダーシップを発揮するために身につける能力として、ここでは大きく2つをご紹介します。
基礎的なビジネス能力の習得
リーダーシップを発揮するためには、基礎的なビジネス能力を身につけることが不可欠です。論理的思考力、意思決定力、問題解決力、財務知識など、ビジネスの基本スキルがしっかりしていなければ、組織を適切に導くことは難しくなります。
また、リーダーには幅広い知識が求められるため、マーケット動向などの情報を常に学び続ける姿勢が重要です。ウェブや書籍でキャッチアップするほか、動画学習サービス、ビジネススクールなどで体系的な知識を得ると、より判断力や影響力を高めることができ、組織の成長を加速させることができるでしょう。
さらに、いちビジネスパーソンとして高い自律精神、オーナーシップ・マインド(当事者意識)、前向きな姿勢、相手を理解しようとする懐の深さなども求められます。
実践で試行錯誤を繰り返す
繰り返しますが、リーダーシップは知識を学ぶだけではなく、実践で磨かれるものです。そのためには、例えばチームのリーダーを務める、プロジェクトを主導する、部門横断的活動に関与するなどのチャレンジを繰り返していきましょう。
場数を踏むためにまずは小さなところから始めてみるのもよいですが、それに留まらずより大きな場で経験を積むことも大切です。こうした経験の中で、失敗や課題に直面することで自己認識が深まり、またフィードバックを受け入れながら、リーダーとしての成長のきっかけを得ることができるはずです。
まとめ(おすすめ動画紹介)
リーダーシップの基本から、代表的な理論、リーダーとして成長するためのポイントをご説明してきました。文中でも触れたように、リーダーシップは学び、実践しながら自らを磨いていくことで能力を高め、発揮できるようになります。
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