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のれん償却とは?企業買収で生まれる「見えない資産」の会計処理を分かりやすく解説

投稿日:2025/09/05更新日:2025/11/07タイマーのアイコン 読了時間 5分

のれん償却とは、M&A時に発生する「のれん」を一定期間で費用計上する会計処理です。グロービス経営大学院の教員が執筆した記事をもとに解説します。

のれん償却とは

のれん償却とは、企業買収(M&A)の際に発生する「のれん」という無形資産を、一定期間にわたって費用として計上する会計処理のことです。

企業を買収する際、買収価格が対象会社の純資産額を上回ることがよくあります。この差額が「のれん」と呼ばれ、買収される会社のブランド価値や技術力、顧客基盤、優秀な人材など、貸借対照表には現れない「見えない価値」を表しています。

日本の会計基準では、こののれんを20年以内の一定期間で規則的に償却(費用化)することが求められています。例えば、100億円ののれんが発生した場合、これを20年間で均等に償却すると、毎年5億円の償却費が発生することになります。

なぜのれん償却が重要なのか - 企業の真の収益力を見極める鍵

のれん償却は、企業の財務状況や経営成績を正しく理解するために欠かせない概念です。特に、M&Aが活発化する現代において、その重要性はますます高まっています。

①適切な企業価値評価のための基盤

のれん償却を理解することで、買収による一時的な売上増加と、実際の事業収益力を区別して判断できます。償却費を考慮しない場合、M&Aによって見かけ上の売上は増加するものの、実質的な収益性が悪化している可能性を見落とすリスクがあります。

②国際会計基準との違いを把握する必要性

米国会計基準や国際財務報告基準(IFRS)では、のれんを定期的に償却するのではなく、価値が下がった時のみ減損処理を行う方式が採用されています。グローバル企業や海外進出を考える企業にとって、この違いを理解することは戦略的に重要です。

のれん償却の詳しい解説 - 会計処理の仕組みと実務への影響

のれん償却の仕組みを深く理解するには、具体的な計算方法や他の会計基準との比較、そして制度の背景を知ることが大切です。

①のれん償却の具体的な計算方法

のれん償却の計算は比較的シンプルです。まず、買収価格から被買収会社の純資産額(簿価)を差し引いてのれん額を算出します。

例えば、純資産100億円の会社を200億円で買収した場合:

  • のれん額:200億円 - 100億円 = 100億円
  • 20年間での定額償却:100億円 ÷ 20年 = 年間5億円の償却費

この償却費は「販売費及び一般管理費」に計上され、営業利益を押し下げる要因となります。つまり、買収した会社の営業利益が年間5億円を下回る場合、M&Aによって全体の営業利益は減少することになります。

②日本基準とIFRSの根本的な考え方の違い

日本の会計基準は「のれんは時間とともに価値が減少する」という考えに基づいています。一方、IFRSは「のれんの価値は必ずしも時間で減少するものではない」と考え、実際に価値が損なわれた場合にのみ減損処理を行います。

この違いは、M&Aに対する基本的な考え方の相違を反映しています。日本基準は保守的なアプローチを取り、将来の不確実性に備える一方、IFRSは経済実態をより直接的に反映させることを重視しています。

③制度変化の背景と今後の動向

近年、日本企業による大型M&Aが増加し、多くの企業がIFRSを採用するようになりました。これは、のれん償却による利益圧迫を避けたいという実務的な要請も一因となっています。

また、IFRS自体でものれん償却の再導入が検討されるなど、会計基準の統一化に向けた議論が続いています。企業の財務担当者や投資家にとって、これらの動向を注視することは重要です。

のれん償却を実務で活かす方法 - 経営判断と投資分析における活用法

のれん償却の理解は、実際の経営判断や投資分析において具体的にどのような場面で役立つのでしょうか。

①M&A戦略における意思決定への活用

企業がM&Aを検討する際、のれん償却の影響を事前に計算することで、買収後の収益性を正確に予測できます。特に、買収価格の妥当性を判断する上で、償却費負担を織り込んだ事業計画の策定は不可欠です。

経営者は、買収による売上増加効果と償却費負担を比較し、真の投資収益率を算出する必要があります。また、買収後のシナジー効果がどの程度実現すれば償却費を上回る利益を生み出せるかを具体的に検証することで、より確実性の高いM&A戦略を立案できます。

②投資家による企業価値分析での重要な指標

投資家がのれんを多く抱える企業を分析する際は、単純な利益額だけでなく、のれん償却前利益も併せて検討することが重要です。これにより、企業の本業における実力をより正確に把握できます。

特に、同業他社との比較分析において、のれん償却の影響度合いを調整することで、公正な競争力評価が可能になります。また、企業が日本基準からIFRSに移行する場合の利益への影響も予測できるため、投資判断における重要な材料となります。

定期的な減損テストの結果にも注目し、のれんの価値が適切に維持されているかを確認することで、経営の健全性を評価することも可能です。

参考ページ

のれん償却のメリットとデメリット

  • GLOBIS学び放題×知見録

    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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