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今さら聞けないのれんとは?M&Aで必ず登場する会計用語を分かりやすく解説

投稿日:2025/09/01更新日:2025/10/01タイマーのアイコン 読了時間 5分

のれんとは、企業買収時に支払額が被買収企業の純資産を上回る際に生じる無形の価値を指します。グロービス経営大学院の教員が執筆した記事をもとに解説します。

のれんとは

のれんとは、企業が他の会社を買収する際に生まれる会計上の項目のことです。具体的には、買収金額と買収される企業の純資産(資産から負債を引いた正味の財産)との差額を指します。

この差額が生まれる理由は、企業の真の価値が帳簿上の数字だけでは表現しきれないからです。優秀な人材やブランド力、技術力、顧客との関係など、目に見えない価値が企業には存在します。買収する側は、これらの見えない価値も含めて企業を評価し、買収金額を決めるため、帳簿上の純資産を上回る金額で買収することが一般的です。

のれんは新聞やニュースでもよく目にする用語ですが、その正体を理解することで、企業買収の本質や企業価値の捉え方がより深く理解できるようになります。

なぜのれんが重要なのか - 現代ビジネスの核心を理解するカギ

現代のビジネス環境において、のれんの理解は極めて重要です。なぜなら、企業の競争力の源泉が有形資産から無形資産へと大きくシフトしているからです。

①M&Aが活発化する現代で必須の知識

近年、日本企業によるM&Aは年間4,000件を超える規模に達しています。グローバル競争の激化、デジタル変革、少子高齢化といった環境変化により、企業は成長戦略としてM&Aを積極的に活用しています。このような状況で、のれんは買収の成否を判断する重要な指標となります。

②企業価値の本質を理解するための基礎

従来の製造業中心の時代とは異なり、現在は知識やサービスが価値の中心となっています。Google、Apple、Amazonといったテクノロジー企業の時価総額が世界トップクラスにあることからも分かるように、無形の価値が企業価値の大部分を占める時代になっています。のれんは、まさにこの無形価値を可視化したものなのです。

のれんの詳しい解説 - 発生から処理まで完全理解

のれんの仕組みをより深く理解するために、具体例を使って発生プロセスから処理方法まで詳しく見ていきましょう。

①のれんが発生する具体的なプロセス

A社がB社を買収するケースで考えてみましょう。B社の純資産が100億円、A社がB社を200億円で買収したとします。

買収直後、A社の個別決算では「子会社株式200億円」が計上されます。しかし、グループ全体の財務状況を示す連結決算では話が変わります。連結決算では、親会社と子会社の重複部分を消去する必要があるからです。

A社が持つ「子会社株式200億円」とB社の「純資産100億円」を相殺すると、100億円の差額が生まれます。この差額こそがのれんとして連結貸借対照表に計上されるのです。

②買収金額が純資産を上回る根本的な理由

なぜ買収金額が帳簿上の純資産を上回るのでしょうか。その答えは、現行の会計ルールの限界にあります。

会計ルールでは、人材の能力、ブランドの価値、顧客との信頼関係、独自技術などの無形資産の多くを貸借対照表に計上しません。しかし、買収時の企業価値算定では、将来キャッシュフローを基にしたDCF法や、類似企業との比較によるマルチプル法などを用いて、これらの無形価値も含めて評価します。

例えば、スターバックスを買収する際、店舗や設備だけでなく、ブランド力、顧客ロイヤルティ、企業文化なども価値として評価されます。これらは帳簿には現れませんが、確実に収益を生み出す価値なのです。

③のれんの正確な計算方法

実際には、買収金額と純資産の差額すべてがのれんになるわけではありません。差額のうち、個別に識別できる無形資産(ブランド、特許権、顧客リストなど)は、それぞれ独立した資産として連結貸借対照表に計上されます。

のれんは、「買収金額 - 純資産 - 識別可能な無形資産」で計算されます。つまり、のれんは超過収益力と呼ばれる、企業が持つ総合的な競争優位性を表していると言えます。

のれんを実務で活かす方法 - 投資判断と経営分析のポイント

のれんの知識は、投資家、経営者、ビジネスパーソンにとって実践的な価値があります。

①M&A成功可能性の判断材料として活用

のれんの金額とその後の業績推移を分析することで、M&Aの成功度を測定できます。例えば、年間ののれん償却費が10億円の場合、買収した企業が毎年10億円以上の利益向上に貢献しなければ、買収により全体の利益は減少してしまいます。

投資家の立場では、企業の買収発表時にのれんの金額を確認し、それに見合う収益向上が期待できるかを検討することが重要です。過大なのれんが計上される買収は、将来の減損リスクを抱えることになります。

②企業の無形資産価値を読み解く指標

のれんの金額は、その企業が持つ無形資産の豊富さを示すバロメーターでもあります。のれんが多い企業は、ブランド力や技術力、人材力などの無形資産に優れている可能性が高く、持続的な競争優位性を持つと期待できます。

ただし、注意すべきはのれんの減損リスクです。買収した企業の業績が悪化すれば、のれんの価値も見直され、減損損失として大きな損失を計上する可能性があります。定期的にのれんの償却状況や減損の兆候をチェックすることで、企業の真の収益力を把握できます。

また、日本では20年以内でのれんを償却しますが、国際会計基準(IFRS)では償却せず毎年減損テストを実施します。このような会計基準の違いも理解しておくと、グローバル企業の分析により役立ちます。

参考ページ

今さら聞けない「のれん」って何?

  • GLOBIS学び放題×知見録

    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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