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ディレールメントとは?成功したリーダーが突然失速する理由と予防策

投稿日:2025/07/20更新日:2025/08/15タイマーのアイコン 読了時間 7分

ディレールメントとは、順調に昇進していたリーダーが突如成長軌道を外れる現象です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに、その原因と予防策を解説します。

ディレールメントとは - 成功リーダーに潜む落とし穴

ディレールメント(Derailment)とは、直訳すると「レールを外れること」や「脱線」を意味する言葉ですが、リーダーシップ開発の分野では特別な意味を持ちます。

具体的には、これまで順調にキャリアを積み重ね、組織内で成功を収めていたリーダーが、ある時点で突然その成長の軌道から外れてしまう現象を指します。昇進が止まったり、重要なプロジェクトから外されたり、最悪の場合は降格や退職に追い込まれたりすることもあります。

この概念は、単なる一時的な失敗や挫折とは異なります。それまで高い評価を受け、将来を嘱望されていた人材が、なぜか急に組織内での地位や信頼を失ってしまう、そんな深刻な状況を表現しています。

なぜディレールメントが重要なのか - 組織と個人の大きな損失

ディレールメントを理解し、対策を講じることは、現代の組織運営において極めて重要な課題となっています。その理由を詳しく見ていきましょう。

①組織にとっての深刻な人材損失

組織が長年にわたって投資し、育成してきた優秀なリーダーを失うことは、単なる人員の欠員以上の意味を持ちます。その人が持っていた知識、経験、人脈、そして組織内での影響力といった無形の資産が一気に失われてしまうのです。

さらに、周囲のメンバーにとっても、尊敬していた上司や先輩がディレールメントに陥る姿を目にすることは、モチベーションや組織への信頼感に大きな影響を与えます。「あの人でさえダメになってしまうのなら」という不安が広がり、組織全体の士気低下につながる可能性もあります。

②予防可能な現象としての特徴

ディレールメントの重要な特徴の一つは、多くの場合において予防可能だということです。突然起こる不可抗力の出来事ではなく、実は長い間潜在していた問題が表面化した結果であることが多いのです。

適切な自己認識と周囲からのフィードバックがあれば、問題の兆候を早期に発見し、軌道修正することができます。つまり、ディレールメントについて学び、対策を講じることで、個人も組織も大きな損失を避けることができるのです。

ディレールメントの詳しい解説 - 成功の陰に潜む4つの落とし穴

リーダーシップ開発で世界的に有名な機関であるCCL(Center for Creative Leadership)は、実際に起こったディレールメントの事例を数多く研究し、その原因を体系的に分析しました。その結果、4つの主要な原因パターンを発見しています。

①強みが弱みに転じる逆転現象

最も皮肉で興味深いのが、これまでその人を成功に導いてきた「強み」が、環境の変化とともに「弱み」に変わってしまう現象です。

たとえば、現場で結果を出してきた営業マネジャーが、より上位のポジションに昇進したとします。現場時代は、細かい数字への執着や顧客への積極的なアプローチが高く評価されていました。しかし、経営層に近いポジションでは、より大局的な視点や戦略的思考が求められるようになります。

このとき、これまでの成功パターンにこだわり続けると、「細かすぎて大局が見えない」「戦略より戦術にばかり目が向いている」といった批判を受けるようになってしまいます。昨日まで褒められていた行動が、今日は足を引っ張る要因になってしまうのです。

②隠れていた欠点の露呈

成功している間は目立たなかった性格的な欠点や行動パターンが、責任が重くなったり、プレッシャーが増したりする中で表面化することがあります。

例えば、人間関係を築くのが苦手で、どちらかというと一人で作業することを好む人がいたとします。個人の成果が重視される環境では、この特性は問題になりませんでした。むしろ、「集中力がある」「一人で結果を出せる」として評価されていたかもしれません。

しかし、チームを率いる立場になると、メンバーとのコミュニケーション、信頼関係の構築、チームワークの促進といったスキルが重要になります。これまで隠れていた「人とのコミュニケーションが苦手」という欠点が、リーダーとしての致命的な弱点として露呈してしまうのです。

③成功がもたらす傲慢さの罠

継続的な成功は、時として人を傲慢にしてしまいます。「自分は何でもできる」「自分の判断は間違わない」という過信が生まれ、周囲の意見に耳を貸さなくなったり、部下を見下すような態度を取ったりするようになります。

この傲慢さは、徐々に周囲との関係を悪化させていきます。部下は萎縮し、同僚は距離を置き、上司も扱いにくい人材として認識するようになります。そして気がついたときには、孤立した状態になっており、重要な情報が入ってこなくなったり、協力を得られなくなったりして、結果的にパフォーマンスの低下を招いてしまうのです。

ディレールメントを実務で予防する方法 - 持続可能なリーダーシップの構築

ディレールメントの原因を理解したところで、実際の職場でどのように予防し、持続可能なリーダーシップを発揮していけばよいのでしょうか。実践的なアプローチを見ていきましょう。

①継続的な自己認識の向上と環境適応

ディレールメント予防の第一歩は、自分自身を客観的に理解し続けることです。これは一度やれば終わりではなく、キャリアを通じて継続的に取り組む必要があります。

具体的には、定期的に自分の強みと弱みを棚卸しし、現在の役割や環境に適しているかを点検することが重要です。昨日まで通用していたアプローチが、今日も同じように効果的とは限りません。組織の成長段階、市場環境の変化、チームメンバーの特性などに応じて、自分のリーダーシップスタイルを柔軟に調整していく必要があります。

また、360度フィードバックのような仕組みを活用して、上司、同僚、部下からの率直な意見を定期的に収集することも効果的です。自分では気づかない盲点を発見し、改善のための具体的な行動計画を立てることができます。

②フィードバック文化の醸成と活用

組織内でオープンで建設的なフィードバック文化を築くことは、ディレールメント予防において極めて重要です。リーダー自身が率先して、フィードバックを求め、受け入れる姿勢を示すことから始めましょう。

効果的なフィードバック環境を作るためには、まず心理的安全性を確保することが大切です。部下や同僚が、上司に対して率直な意見を述べても不利益を被ることがないという信頼関係を築く必要があります。

定期的な一対一のミーティングを設け、業務の進捗だけでなく、リーダーシップや職場環境についても話し合える場を作りましょう。「最近の私のマネジメントで気になることはありますか?」「チームがより良く機能するために、私が改善できることはありますか?」といった質問を投げかけることで、貴重な気づきを得ることができます。

さらに、メンターやコーチといった社外の第三者からの視点を取り入れることも有効です。組織内の人間関係に影響されない客観的な意見を得ることで、より冷静に自分の状況を分析することができます。

参考ページ

MBA経営辞書「ディレールメント」

  • GLOBIS学び放題×知見録

    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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