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規模の経済性とは?大企業が強い理由とビジネスでの活かし方

投稿日:2025/07/28更新日:2025/08/25タイマーのアイコン 読了時間 6分

規模の経済性とは、事業の拡大により単位あたりコストが低下し競争力が高まる現象を指します。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

規模の経済性とは - 「大きいことはいいこと」の経営学的な説明

規模の経済性(Economies of scale)とは、事業の規模が大きくなればなるほど、商品やサービス1つあたりのコストが小さくなり、競争上有利になる効果のことです。

分かりやすく例えると、個人でケーキを1つ作るより、ケーキ屋さんが100個作る方が、1個あたりの材料費や人件費が安くなります。これと同じことが企業活動のあらゆる場面で起こるのが規模の経済性です。

この概念は、なぜ大企業が小さな企業よりも競争で有利になりやすいのかを説明する重要な理論として、経営学や経済学で広く認識されています。特に、コストを抑えて価格競争力を高めたい企業にとっては欠かせない戦略的な考え方といえるでしょう。

なぜ規模の経済性が重要なのか - ビジネス成功の鍵を握る理由

規模の経済性が現代のビジネスで重要視される理由は、企業の競争力に直結するからです。市場で勝ち残るためには、より良い商品やサービスをより安く提供する必要があり、そのためのコスト削減手段として規模の経済性が威力を発揮します。

①価格競争での優位性を確保できる

単位あたりのコストが下がれば、同じ利益率を保ちながらより安い価格で商品を販売できます。これにより競合他社に対して価格面での優位性を築くことができ、市場シェアの拡大につながります。価格競争が激しい業界では、この優位性が企業の生存に関わる重要な要素となります。

②投資回収の効率が向上する

大規模な設備投資や研究開発費、広告費などの固定費を多くの商品に分散できるため、1つあたりの負担が軽くなります。これにより投資回収のスピードが速まり、さらなる投資や成長に向けた資金を生み出すことができるのです。

規模の経済性の詳しい解説 - 3つの段階で理解する仕組み

規模の経済性は、狭義から広義まで段階的に理解すると分かりやすくなります。それぞれの段階で異なるメカニズムが働いており、企業はこれらを組み合わせて競争力を高めています。

①固定費の分散効果 - 最もベーシックな仕組み

規模の経済性の最も基本的な形は、固定費が多くの商品に分散されることで単位あたりのコストが下がる効果です。

例えば、研究開発費について考えてみましょう。製薬会社が新薬の開発に数百億円を投資したとします。その薬を1万人に販売する場合と100万人に販売する場合では、1人あたりの研究開発費負担が大きく変わります。販売量が100倍になれば、1人あたりの負担は100分の1になるのです。

広告費についても同様です。アサヒビールが「スーパードライ」発売以前にキリンビールの6分の1の売上げしかなかったにも関わらず、キリンの70%もの広告費が必要だったのは、この固定費分散効果が働かなかったからです。少ない販売量に対して多額の広告費をかけざるを得ないため、単位あたりの広告費が高くなってしまったのです。

②バイイングパワーの強化 - 仕入れコストの削減効果

より広い意味での規模の経済性には、大量購入による仕入れコストの削減も含まれます。これをバイイングパワー(購買力)の強化と呼びます。

家電量販店のヤマダ電機が急成長できた背景には、この効果が大きく働いています。大量に仕入れることで、メーカーから有利な価格条件を引き出すことができ、それが競争力のある販売価格につながったのです。同じ商品でも、10台買う場合と1000台買う場合では、1台あたりの仕入れ価格が大きく変わることは想像に難くありません。

③間接的な競争優位効果 - より広範囲な影響

さらに広義の規模の経済性には、直接的なコスト削減以外の効果も含まれます。

企業規模が大きくなると知名度が向上し、優秀な人材を採用しやすくなります。また、サービス業では店舗数が多いことで顧客にとってアクセスが良くなり、利便性が向上します。これらの効果も、間接的に企業の競争力を高める規模の経済性として捉えられています。

ただし、規模が大きくなれば必ず良いことばかりではありません。組織が複雑になってコミュニケーションが煩雑化したり、グローバル展開で経営資源が分散したりして、かえって効率が悪くなる場合もあります。これを「規模の不経済」と呼び、企業は適切な規模を見極める必要があります。

規模の経済性を実務で活かす方法 - 成長戦略への具体的な応用

規模の経済性の理論を理解したら、次は実際のビジネスでどう活用するかが重要になります。業界や事業の特性に応じて、効果的な取り組み方が異なります。

①製造業での活用 - 設備投資と生産効率の最大化

製造業では、生産設備への投資や研究開発費の分散効果を狙った戦略が効果的です。

自動車業界を例に取ると、新車の開発には数百億円から数千億円の費用がかかります。この巨額な投資を回収するには、世界中で数十万台から数百万台の販売が必要になります。そのため、自動車メーカーは積極的に海外展開を行い、販売規模の拡大を図っています。

また、同じプラットフォーム(車台)を複数の車種で共用することで、開発費や部品調達コストを分散し、規模の経済性を実現する戦略も一般的です。

②サービス業での活用 - ネットワーク効果と顧客利便性向上

サービス業では、店舗網の拡大やデジタルプラットフォームの構築を通じて規模の経済性を実現できます。

コンビニエンスストアは典型的な例で、店舗数が多いほど物流コストが分散され、商品調達力も向上します。また、顧客にとってはアクセスしやすい場所に店舗があることで利便性が高まり、さらなる利用増加につながる好循環が生まれます。

IT企業では、一度開発したソフトウェアを多くのユーザーに販売することで、開発費を効率的に回収できます。ユーザー数が増えるほど1人あたりの開発費負担が軽くなり、より競争力のある価格でサービスを提供できるようになります。

規模の経済性を活用する際は、単純に事業を拡大するだけでなく、どの部分で最も効果が期待できるかを見極めることが重要です。自社の事業特性を分析し、固定費の占める割合が高い部分や、規模拡大による調達力向上が期待できる分野を特定して、戦略的に取り組むことが成功の鍵となるでしょう。

参考ページ

規模の経済性とは?MBA経営辞書

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