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マンダム対資生堂:スタイリング剤ガチンコ勝負はどこへ行く!

投稿日:2010/10/01更新日:2019/04/09

資生堂とマンダム

男性用整髪剤市場は年間300億円を超える。マンダムがヘアワックスを中心に、40%以上のシェアを握り、資生堂のシェアは20%程度だった。状況が一変したのは、昨年8月。資生堂が満を持して、新製品を発表してからだった。

髪にボリュームを持たせたり、流れを付けたりと、ワックスによる高い自由度で髪型を作り込むことが若年男性層の主流であった昨夏。ムービングラバー、テクニカルデザインクレイ、パーフェクトホールドワックスなど万全のギャッツビーラインナップを持つマンダムに、「作り込みすぎのヘアはもう古い」と自然なスタイル提案と共に、ベタつきのないミストタイプの「フォグバー」で資生堂が戦いを挑んだのだ。

イケメン四天王のCMだけでなく、フォグバー専門営業部隊を社内に組織し、量販店などに積極的に売場提案を行い、店頭販売促進も強化した。有名ヘアサロンを巻き込んでのPR活動も行うなど、「コミュニケーション・ミックス」を最大化したのである。その甲斐あって、1カ月で1年分の販売目標240万本を売り切る大ヒットを記録し、販売直後には、一時的にマンダムを抜いてシェアトップを奪取。日経MJヒット商品番付2009の西前頭4枚目にも列せられた。

対するマンダムは、同様のミストタイプ、「ギャッツビークイックムービングミスト」を今年2月に投入した。ボトルをひねると「カチッ」とプッシュノズルが頭を出すパッケージに工夫を凝らしたが、中味はベタつきを抑えたミストで、「何度でも直せる」というフォグバー同様の訴求点。ヘアサロンのアーティストをWebサイトに登場させ使い方指南をさせるという、これも同様の手法を展開した。つまり、これはリーダー企業からの「同質化戦略」である。

ギャッツビーの幅広いラインナップで販売店の棚で面展開のできるマンダムは、フォグバーと同質化したミストタイプの商品を消費者の手に取らせることも可能だ。そして、ヘアの作り込みが自由にできる反面、如何せん手がベタつき、洗髪も1度で足りないというユーザーの不満解消もできる。しかし、それは資生堂「ワックスにさよなら」といっていたコピーを体現することになる。

資生堂が仕掛けたのは、チャレンジャーがリーダーに対して行う「理論の自縛化」である。リーダー企業が発信してきたのと矛盾するメッセージで、同質化できない差別化を図るのだ。有名な例では、かつてのキリンビールとアサヒビールがそれだ。「ラガービール」で、ビールの「コク」や「旨味」を訴求してきたキリンに対し、それに反する「ドライ」「キレ」という新たな価値観をアサヒが持ち込み、1987年に「スーパードライ」を発売。翌年、ビール各社同様、キリンも「ドライ戦争」に突入したが、消費者には受入れられず、首位の座を明け渡すことになったのである。

2010年4月10日付週刊ダイヤモンドの記事「『新整髪剤』でマンダムを圧倒資生堂悲願のシェア奪取なるか」では、最近は共に30%前後の水準で、ほぼ拮抗していると、ついに資生堂がマンダムを射程圏内に捉えたことを伝えている。戦いは、いよいよ第2ラウンドに入った。

両社が第2ラウンドに繰り出した一手とは

ギャッツビー「WATERWAX篇」。バックに流れている楽曲は、Falcoの「RockMeAmadeus」。1984年公開の映画「アマデウス」の人気から、85年に大ヒットした名曲。英語とドイツ語がチャンポンのラップが今聴いても新鮮だ。映像は色調をおさえ、ゆっくりとした動きでキムタクが女性を抱擁をする姿が流れる。スタイリッシュでセクシーで、ちょっとエロチックな雰囲気を醸し出すが、実は女性はキムタクの髪型を整えているというオチ。キメの台詞は「やっぱワックスでしょ」。

対するフォグバーはおなじみのイケメン四天王ともいうべき、妻夫木聡・瑛太・三浦春馬・小栗旬の4人組が、英国のバーのような理髪店で整髪する「FOGBARBERstyling篇」。ウエストミンスター橋やマグダーレン教会などロンドンの観光名所を4人が駆け抜ける「RUN!!!篇」。最近公開された新バージョンは、バー風理髪店の4人の横に宮崎あおいが登場する「WOMEN篇」。最後のテロップは「さよならWAX」。

両CMのキメのコピーでわかるように、相互にライバル商品を強烈に意識している。

ギャッツビーの「ウォーターワックス」。同社のWebサイトにある商品説明では、アクアラバー配合で水のようになじみ、何度でも手直し可能。手も髪もベタつかず、簡単に洗い落とせるとある。ワックスの持つ髪型の自由度そのままに、ミストの利点を実現したわけだ。そこで、CMのキメのコピー「やっぱワックスでしょ」となるのである。

一方、フォグバーも弱点を克服した。ナチュラルなスタイルを訴求してはいるものの、「そうはいっても、もうちょっとホールド感が強くならないか?」というものだ。もっと髪型を遊びたい若年層に加え、髪の毛にボリュームを出したいという筆者のようなお年頃の層には切実な願いである。そこで発売されたのが、CMで「バリカタ新登場」と紹介される濃紺のボトル。「フォグバー万能ストロング」だ。使ってみると、確かに今までのラインナップでは一番整髪力が強かった赤ボトル以上に髪のまとまりや立ち上がりがいい。しかし、ごっつりと作り込むような髪型に向くほどではない。ナチュラルが売りのフォグバーにとって、理論の自縛化を起こさないギリギリの線で、ワックスにユーザーが流出しないための調整をした結果だと思われる。

かつて資生堂は男性用整髪剤市場のトップにたち、他社に先駆けてワックス整髪剤を投入したものの、後発のマンダムが木村拓哉をイメージキャラクターにし、トップの座を奪った。時は巡り、再び、資生堂がミストという新市場を開拓し、「バリカタ」でさらに攻勢をかける。マンダムは、あくまでワックスにこだわりながらも、ミストの利点も実現し、再び木村拓哉を擁して、対抗を試みている。

週刊ダイヤモンドの同記事では、現時点ではワックスが男性用整髪剤市場の主流であることには変わりないとしながらも、全体に占める構成比は30%を割り込んで減少を続けており、かたやミスト市場の構成比が十数パーセントまで急拡大していると分析している。

両者の怨念さえ渦巻くような苛烈な戦い。今年のシェアトップの座に、いったいどちらが座るのか。しばらくは、勝負の行方から目が離せない。

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