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仮想通貨の価値とは―ビットコインは、通貨なのか?資産なのか?

投稿日:2021/03/02更新日:2021/12/20

本連載では、4回にわたり、ビットコインの成り立ち―オープンにインクルージョンを実現しつつ、“いかに信頼、信用をアルゴリズムで創っていくのか?”―から振り返り、その思想性から現代社会に投げかけている問題提起を考える。(全4回、2回目)

そもそも通貨なのか、資産、金融商品なの?

ビットコインを表現するのに、日本語では仮想通貨、暗号通貨、暗号資産といったいくつかの呼び方が存在するが、2020年のgoogleトレンドで見るとわかるように、圧倒的に現在まで使われているのは「仮想通貨」になる。実は法律でも最近まで仮想通貨という言葉が使われていたのだが、令和になってから法律が改正され、いわゆる円やドルなどの法定通貨との違いを明確にするために法的には今は「暗号資産』と呼ばれるようになっている。

(出典:googleトレンドデータを元に鈴木作成)

現時点では、ビットコインとイーサリアムの2つで暗号資産全体の時価総額の7割強を占めており、規模の視点から代表的な暗号資産はビットコインとイーサリアムの2つと考えてよい。本稿では以降はビットコイン中心に考えてみたい。

(出典:CoinMarketCapデータより鈴木作成)

そもそも通貨には一般に3つの機能があるとされている。

  1. 価値の尺度
  2. 価値の交換手段(支払いや決済での利用)
  3. 価値の保存手段(資産として)

ビットコインの現状について上記ポイントに照らし合わせて考えたい。

1.価値の尺度

まず、価値の尺度、という視点だが、ビットコインの価格は例えばドルに対して第1回で示したグラフ通り、この10年で見てもトレンドとして大きく変動している。

次のグラフはさらに日々の価格変動の動きを見るために、ドルベースで他の金や株式とのリスク(変動率)、リターンのちらばりを見てみたものである。グラフからわかるように、他の資産と比べて価格の変動、散らばりが圧倒的に大きい。いわゆるハイリスク、ハイリターンである。

(出典:yahoo financeデータより鈴木作成)

実際、具体的に過去5年の日次価格変動を見てみると、データからは2017年の12月にはたった1日で25%も価格が上昇した日がまた、2020年の3月には1日で37%も価格下落した日があったことがわかる。

(出典:yahoo financeデータより鈴木作成)

価値の尺度としては価値の安定性が求められる。例えばモノの値札がビットコインで表示されていたとして1日で例えば20%も平気で値段が動くようでは安心して買い物ができない。このように大きく価値が変動するビットコインは価値の尺度としては極めて心許ない状況だと言えよう。

2.価値の交換手段(支払いや決済での利用)

交換手段としてはどうだろう。価値の尺度が安定しない、ということはビットコインを使ってモノやサービスへの支払いをするのには向いていない、ということになる。したがって、価値の交換手段としても機能しがたい。また、価格が高騰し、資産としての価値が高まれば高まるほど、決済に使うよりは持っておいた方がいい、という判断になり、交換手段としては使いづらくなってしまう。

また、この価値の不安定性に加え、交換手段として大きな課題となっているのが、取引の処理能力の問題だ。1秒間に数千~数万件の支払いが処理できるとされるクレジットカードに比べ、ビットコインはその実装上の設計(ブロックサイズが1MBで書き込める取引数に制約あり)から、理論的にも平均すると1秒間にほぼ7件程度、実際には次図に示すように、3~4件程度の決済しか処理できない仕組みで、取引が増えると積み残しが生じて処理が遅延してしまう。

(出典:Blockchain.comデータより鈴木作成)

支払いが固まるまで何十分もかかってしまうようでは売り手は安心して商品を売ることができない。処理のスピード、という観点からも世界規模で決済を処理するような拡張性(スケーラビリティ)も残念ながら現状のビットコインには欠けている。

実際、現状ではビットコインは残念ながら、サービスやモノを購入する決済手段としてはほとんど使われていないと見られる。例えばビックカメラのようにビットコインを使って支払いできるという店舗も存在するが、現金に加え、クレジットカード、各種電子マネーが使えるようになった現状では日本国内であえてビットコインで支払いするメリットは見いだしがたい状況だと言えよう。

ただ、米国のPayPalは2020年の11月からまず米国のユーザーを対象にPayPalアカウントでビットコインなどの4種の暗号資産の売買を可能にしており、2021年には保有するビットコインから支払うことを可能にすると発表している。2020年第3四半期のPayPalのIR資料およびプレスリリースではPayPalのアクティブアカウント数はグローバルで361百万アカウント、さらに26百万店のお店でビットコインを決済に使えるようにすると謳っている。ビットコインの安定性や決済能力の限界といった弱点をPayPal内の仕組みでどのように補完して利用拡大を図ろうとしているのか目が離せない。

3.価値の保存手段(資産として)

最後に資産としてはどうだろうか?ビットコインは発行の上限は設計上2100万ビットコインと設計されている。すでに2021年2月時点で1863万ビットコインが発行されており、あたかも埋蔵量に上限のある金にたとえて、デジタルゴールド、と称されることがある。

ビットコインには裏付けとなる資産がないことから理論価格はないが、仮にビットコインの資産価値が金の資産価値なみになったとして試算してみよう。既述の金の地上在庫の1344兆円を2100万ビットコインで割ると1ビットコインあたり約6400万円となる(この試算は投資を勧めるものではなく、あくまで試算なので投資は自己責任で)。

すでに見てきたようなビットコインの価値の安定性のなさは、安定志向の資産としては魅力がないが、価格変動、リスクこそむしろ儲ける投資のチャンスと考える投資家からは格好の投資対象の資産と考えられる。

<シリーズはこちら>

第1回:仮想通貨とは―価格高騰するビットコイン

第3回:ビットコインのはじまりーサトシナカモトの夢

第4回:ビットコインの思想的インパクトー「信頼」をどうつくるのか

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