コロナ禍で働き方が変わった2020年、リモートワーク下でリーダーの悩みの質も変化した。2021年よりよいチームビルディングのためのリーダーの在り方とは。
リモートワークでのリーダーの悩み
2020年はコロナ禍もあり、急激に働き方が変わった。そんな中、ミドルの方を中心に、メンバーやチームとの向き合い方が難しいという相談を多く受けた。例えばこういう状況だ。
・メンバーへの仕事の任せ方が難しい。リモート勤務なので任せないと仕事が進まないが、どこまで任せて良いのか。評価やフィードバックはどうすれば良いのか。
・オンラインでの会議でどうしても自分が一方通行で話してしまう。メンバーの反応もわかりにくい。
・チームの一体感が損なわれている気がする。異動者や新人のケアも不十分になっている。
・メンバーに仕事を任せたのだが、期待していたアウトプットと異なる。何が悪かったんだろうか
こうした難しさの原因の1つはオンライン特有の事情による。オンライン会議でつながっている間しか相手の状況がわからない。オンライン会議でも同時に複数の人が話せず、自由闊達な議論になりにくい。話も一方通行感があり、メンバーの反応が見えにくい。チームの雰囲気もつかみづらい。ただ、原因はそれだけではない。
もう1つは、そもそもベースとなるリーダーとしてのスキルや行動が不十分なことだ。オフィスで仕事をしているときは、指示が不明確でも、メンバーの様子を見ながら、あるいは相談をされながら、フォローできていたが、そうしたことを感覚的にやってしまっていた人はリモート環境で苦労している。
要は、リーダーとしてのスキルや行動がリモート環境であっていない、十分に発揮できていないのだ。ではどうしたらよいのだろうか?解決していくために今回は3つの方向性を紹介したい。
1.影響力の武器(社会心理学のTips)を活用する
社会心理学の分野で『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ著)という書籍がある。人間の無意識部分に働きかけていく6つの原理として、①好意、②社会的証明、③返報性、④希少性、⑤権威、⑥コミットメントと一貫性をあげている。
その中で「好意」(好感を持つ相手のいうことは聞きやすい、という原理)がリモート環境でも重要になってくる。
好意の醸成ではメラビアンの法則が参考になる。印象形成には視覚(55%)や聴覚(38%)の影響が大きい。オンライン上でも見た目を意識することが重要だ。例えば、zoomのカメラ設定を変更して自分の顔を明るく見せる、卓上ライトを用いてカメラ映えをよくする、カメラに自分の顔を向けしっかり見つめるようにするなどだ。服装も、カジュアルすぎたりしないように、TPOに合わせ、リーダーにふさわしい服装を心がけたい。
「単純接触回数」を増やすことで好意を獲得することもできる。メンバーと週1回30分のオンラインミーティングよりも、1日5分でもいいから電話やオンライン上でミーティングをする。日々のちょっとした会話を積み重ねることで親近感を持ってもらうことできる。
また、オンライン会議では、笑顔でいることも重要だ。「運動模倣」という概念がダニエル・ゴールマンの『EQ~こころの知能指数』で紹介されている。これは、食事の際に、相手がスープを口に運んだら自分も同じようにすると動きと気持ちがシンクロしてくる、というテクニックでも有名だ。こちらから意図的にでも笑顔を作ると、相手も無意識のうちに笑顔になり、笑顔になることで気分も前向きなものになってくるというもの。メンバーやチームとのオンライン会議でも、正面を見て笑顔を作ることはとても大事なことだし、これはちょっとした心がけでできるものだ。
影響力の武器でもう1つ、紹介したい原理が「社会的証明」だ。複数の人が行っている行動があると、それを指針として真似る人が増えるというものだ。オンライン会議ではギャラリービューにして、議論する時はみんなの顔が見えるようにしておきたい。そして、自ら笑顔を作り、周囲に伝播させていく(できれば誰か一緒にやってもらえるように事前にお願いしておきたい)。メンバーの話にもやや大げさに頷きたい。そうすることで、話しやすく、前向きな雰囲気をオンライン会議でも醸成していくことができる。
好意や社会的証明など、影響力の武器は有効だ。ただ、小手先のテクニックだけではなく、やはりリーダーとしてやるべきことはしっかりやっておきたい。そこで大事になって来るのが、どういう言動・行動をするかだ。次回は、リーダーにふさわしい言動・行動について紹介する。