【特集|withコロナ時代 変わるビジネス】起業家のあり方

withコロナ時代、ビジネスはどのように変わるのでしょうか。テーマごとにグロービス経営大学院の教員を中心にオピニオンを紹介します。本記事のテーマは、起業家と社会起業家の在り方です。

withコロナ時代の適者生存~スタートアップこそ社会変化を追い風に~

筆者:湯浅 エムレ秀和 (グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター)

「貴社のデジタルトランスフォーメーションを率先したのは次のうち誰ですか?A. CEO、B. CTO、C. COVID-19」。これは海外メディアで見かけたジョークですが、日本においても新型コロナウィルス危機とそれに伴うリモートワークやソーシャルディスタンスにより、社会のデジタルトランスフォーメーションが加速しています。これは創造と変革を目指す起業家にとっては大きなチャンスでしょう。

起業家として最優先で取り組むべきは、安全確保、キャッシュ確保、事業の筋肉質化、リモートワーク対応といった守りの施策です。GCPの投資先の多くでも2月から4月にかけての3か月間は徹底的に守りを固め、withコロナが長引いても生き残っていける体制づくりに注力しました。不要不急なコストは徹底的にカット、プロダクトはネット(リモート)完結型とし、営業はデジタルチャネルへシフト、事業計画は年単位ではなく月単位でローリングしています。

しかし、withコロナは100m走ではなく、マラソンになるでしょう。その認識を早期に受け止めて、変化にただ耐えるのではなく、変化に最適化されたプロダクトや組織に変革すべきです。社会ニーズの変化に合わせてプロダクトを刷新する、新たに生まれたニーズに対していち早くプロダクトを開発する、営業マーケもオンラインへ切り変える、ITツールを駆使してリモートワークでも組織の士気と生産性を維持する。自然界でもビジネス界でも、弱肉強食ではなく適者生存です。

1996年からVCファンドを運営しているGCPとしては、ドットコムバブルもリーマンショックも東日本大震災も経験していますし、そのような環境下においても力強く成長していくスタートアップへの投資を止めたことはありません。Withコロナにおいても投資は継続しますし、むしろこのような変化が大きい局面でこそ、次の時代を築き上げる起業家が生まれてくるものと信じています。ピンチをチャンスに、力を合わせて頑張っていきましょう!

Counter-COVIDイノベーションの中心は起業家

筆者:山中礼二 (グロービス経営大学院 教員)

起業家の友人達がコロナウイルス禍に立ち向かう姿を見て、尊敬の念を新たにすることが最近多い。その姿勢は一言で言えば、「サバイブ&イノベート」である。

まずは生き残ることが重要な時期だ。起業家たちは固定費を減らし、現預金残高があと何か月分残るかを冷静に計算し続けている。「天国に行く最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」(マキャベリ)という言葉が当てはまる。

さらにこの起業家たちは、身を縮めるだけでなく、逆にイノベーションを起こして苦境を乗り越えようとしている。バーを経営する友人は、バーに集まる常連客をオンライン・コミュニティに移行させ、毎回ゲストを呼んでオンライン・サロンとして課金し始めた。対面で行う福祉サービスも学習支援も就労支援も、オンライン提供に向けて劇的にサービスを進化させている。

人類史に残る危機の中で、起業家は創意工夫を働かせ、自社・自団体が生き残るだけでなく、社会をポジティブに変化させようとしている。事業者の生産性を高め、新たな雇用を産み出し、産業構造を変える役割を果たそうとしている。

2020年代は人類が、Counter-COVIDイノベーションで危機を乗り越えた年代として歴史に刻まれるだろう。その中心にいるのが、起業家である。

創造的破壊の波をつくる起業家が新時代の旗手となる

筆者:髙原康次 (グロービス経営大学院 教員/G-STARTUP事務局長)

創造的破壊の巨大な波をつくりうる時期にある。コロナによって社会が大きな変化を望み、巨大な事業機会が立ち現れている。オンラインとリアルの常識が見直される。公共手続き、診療、公教育、ワークスタイル、契約、エンタメなど私たちの日常すべてが変化する。5G、VR/AR、ブロックチェーンなどの技術が変化を力強いものにするはずだ。

創造的破壊が起こるとき、従来の強みが弱みに変わりうる。持たないベンチャーこそが、有利と考えることができる。店舗を構える映画館は営業を停止し、店舗を持たないNetflixやAmazon Primeは会員数が激増している。

良いプロダクトは、瞬く間に世界に広がりうる。その国独自のやり方が見直されたとき、市場は世界に開かれうる。例えば、サンノゼに本社を置くZoomが日本を含む世界で普及した。インドネシアでは、リクルートグループでロンドンに本社を置くQuipperが政府推奨オンライン教育サービスに認定された。

考え抜いたシンプルさで、泥臭く検証し、具現化する。事業計画を考えぬき、ユーザー数・売上・競争力向上の好循環を創り出す仮説を描く。最初は曖昧だとしても、泥臭く、実験を繰り返す中でその仮説を具体化していく。5分間でピッチすれば、聞き手が身を乗り出すレベルを目指す。

生憎、厳しい資金調達環境が2,3年続く恐れが強いが、依然投資活動を積極的に行うベンチャー・キャピタルは残っている。考え抜かれた事業計画があれば資金調達の成功可能性は十分ある。しかし、公開市場の株価下落に伴い、未公開株も価格下落は避けられまい。ユーザー数・売上・競争力の要素の繋がりが欠けていると、株価を下げても資金調達そのものが厳しくなるだろう。

諦めそうになった時、ギリギリの場面はどんなに成功した企業にもあったことを思い出す。2008年リーマンショックの直前に創業したAirbnbはベンチャー・キャピタルやエンジェルから資金調達に失敗した。借金で乗り越え、シリアルを売って、冬の時代を凌ぎ切った。G-STARTUPで講座を提供する成功を納めた経営者にも、創業初期に諦めかけた体験を語ってくれた。自身の信じる世界を実現するために、受託による売上を立てる、エンジェルを口説く、もう一度舞台に立つ勇気の重要性を示してくれた。

焦らず、慌てず、諦めず。
時代の大きな変わり目で創造的破壊の波をつくり出す起業家が、新しい時代の旗手となるのだ。

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