エクスターナル&インターナルブランディングの同期化 アンサング・シンデレラの挑戦Vol.1

「アンサング」=「讃えられない」の意味とは

世界的に新型コロナウィルスの猛威が収まらない。これほどまでにパンデミックの未知なる恐怖と不安に怯える日々は、我々世代も含めてかつて経験したことがない。そして、その現場の最前線で体をはって日夜闘っておられるのが医療従事者のみなさんだ。まず心から敬意を表したい。

そんな有事のなか、4月より石原さとみ主演の「アンサング・シンデレラ」というドラマがフジテレビ系列で始まる。漫画「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」をドラマ化したものだ。*編集部注:コロナの影響で放送延期となっています(4/17 現在)

”unsung”とは、「歌われない」「名もない」「讃えられない」という意味で、主人公は病院に勤める薬剤師。薬剤師法第24条で義務付けられている疑義照会をめぐり、関係する医師、看護師、外部の薬剤師との間に起こる問題に、日々いかに向き合いながら患者の「当たり前の毎日」を守っているのか、“アンサング・ヒロイン=縁の下の力持ち”の活躍を描く。普段、なかなかその存在価値が社会に正しく認知されていない薬剤師が注目され、社会からの期待が上がる絶好の機会だ。

実は、半年前、私は某老舗調剤薬局の社長さん(後述)にこんな話をした記憶がある。「“ドクターX”(*1)の薬剤師版がドラマになったら薬剤師への認知も、薬剤師のみなさんのモチベーションも上がりますよね」

(*1):「ドクターX~外科医 大門未知子」は、米倉涼子演ずるフリーランスの天才外科医が、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけを武器に白い巨塔に挑み、数々の困難な外科手術を成功させ患者の命を救っていくという高視聴率を稼いだドラマ。「私、失敗しないので」という名セリフはおなじみ。

そして先月、その社長からメールをいただいた。なんと「アンサング・シンデレラ」が放映されるとの一報。偶然の連続に私は驚いたが、今でも社長からのメールの最後の一文が忘れられない。「ようやく流れが来ました!」

薬剤師って何のためにいるの?

われわれが病院など医療機関で治療や診察を受け、薬が必要な場合はお医者さんが処方箋を発行してくれる。これを近くの薬局にもっていくと症状に合った薬を手に入れることができる。しかし、昔は医療機関で薬ももらっていたのをご存知だろうか。今でも一部開業医などでは残っているが、その割合は2割程度に過ぎない。これが、医師は治療に専念し、薬剤師は調剤に専念するという「医薬分業」だ。医薬分業は長い議論を経て、1997年以降急速に進んできた。

医薬分業の背景には、儲けのための薬漬け医療を改め適切な医療で医療費の抑制を図ること、複数の薬を服用する際の副作用の安全性を化学物質に精通した薬剤師がチェックを行えること、新薬名で処方する医師に対し薬局はジェネリック(後発薬)対応できることで医療費を削減できることなどがある。

では、みなさんは薬局に行くと結構待たされることがあると思うが、そこで薬剤師さんは何をやっているかご存じだろうか?複数の医療機関にかかる場合など、同じ薬が重複して処方されたり、飲み合わせが悪い場合など、薬剤師が医師に確認するために問い合わせ、処方内容を変更したり、処方をやめるなどの対応を実は行っているのだ。

医薬分業がはじまって早20年以上の月日が経過しているが、医薬分業の立ち上げ当初は、薬局は制度面で守られていた側面もあった。しかし、医療財政がより厳しさを増す中、2020年度の診療報酬改定の内容からも、医薬分業時に掲げられていた薬局本来の使命を果たすよう、行政からの強いメッセージが感じられる。

特に、日本の厳しい医療財政のなかで、残薬問題と減薬への取り組みが大きな課題となっている。薬を飲み切ることで病原菌を根絶できるにも関わらず、患者の自己判断で最後まで飲み切らずに廃棄されてしまう薬は年間約500億円にものぼる。これが残薬問題だ。

一方、医師の処方に対し、飲み合わせや飲み切れるかを考え、薬を変えたり減らしたり工夫するのが減薬対策だ。なるべく薬を飲まなくてもいいように病気を予防することや薬を適切に飲んでもらうことで治療効果を高めるのも結果的に減薬につながる。このように残薬解消も減薬推進も、実現するにはまず患者の薬への意識を変えていくことが不可欠となるし、最大の障壁にもなるのだ。

No1、オンリーワンの“アンサング・シンデレラ”として生き残るには?

このような環境下であるので、今回の「アンサング・シンデレラ」の放送は、薬局や薬剤師の存在価値を理解してもらうにはたしかに絶好のチャンス。ただ、地域にはたくさんの薬局があり、し烈な競争を繰り広げている。たくさんの調剤薬局があるなかで、患者に自社を選んでいただき、生き残らなければならないのだ。

では、選ばれNo1、オンリーワンの存在になるためには?

①どの企業よりも本気で薬に関する正しい知識を啓蒙し、ヘルスケアの課題解決のパートナーとして患者から認知されるためのマーケティングを積極的に行っていること(エクスターナルブランディング(*2))

②エクスターナルブランディングで高まる患者の期待を超えるため、社内の薬剤師の使命感に火をつけ、かつ成長努力を後押しする理想的な環境づくりに努力していること(インターナルブランディング(*3))

社会でなかなか認知されにくい“縁の下の力持ち”的役割を担っているからこそ、この2つがどこまで同期化できているかがよりクリティカルになる。どちらか一方だけでは駄目なのだ。

次回からは、エクスターナルブランディングとインターナルブランディングを同期化することで、自社の“アンサング・ヒロイン&ヒーロー:縁の下の力持ち”の価値がいかに社会から認知され、かつ社員のエネルギーレベルをあげていけるのか?そしてそれが顧客への提供価値増大にいかにつながり、顧客からのさらなる信頼につながっていくのか?ある老舗調剤薬局の事例をもとに考えてみたい。

(*2):消費者など外部のステークホルダーに向けて行う自社のブランディング活動。インターナルブランディングとの対比で用いる。

(*3):インターナルブランディングとは、自社の理念や提供価値を明確化し、社員に共有する内部活動。企業の「社会におけるあり方」が問われ、企業理念そのものがコミュニケーションメッセージとなってきている環境下では、ブランドを発信する社員一人ひとりによる自社の理念・提供価値を具現化する力が重要となってきている。本連載では、インターナルブランディングを促進するハード・ソフト全般の施策を論ずる。

RELATED CONTENTS