人材を分散させず、大企業20社+ベンチャー200社に集中投下し、日本企業のプレゼンスを引き上げる

今年1月、史上最年少の38歳で、米国系経営コンサルティング会社であるA.T. カーニーの日本法人代表に就任した関灘茂氏。日本企業に不足している創造と変革のリーダーを育てるための方策について、元A.T. カーニーの同僚であり、現グロービス経営大学院の同僚である西口敦がインタビューしました。(全2回、後編)≫前編はこちら

国家レベルでの資源配分ができるネットワークを形成する

西口:会社を変えようと思ったら教育に行き着いたとのことでしたが、グロービスが担うべき役割は何でしょうか。

関灘:飛び抜けた創造と変革のリーダーがいても、フォロワーがいないと物事は進みません。ベゾス+ペイジ+ジョブズ級やそれに近づくリーダーになれるのはごく一握りではないかと思います。ある意味では、普通ではない側面を持つ、時に近寄りがたいリーダーに対して、「こういう人だから、こういうことが可能なのだ」という理解ができる強力なフォロワーが必要です。

あくまで感覚ですが、強力なフォロワーが全体の2割くらいとなり、リーダーの良き理解者であり、残りの8割の人にとってのリーダーにならないといけない。この層が厚くならないと、本質的な創造と変革が成し遂げられません。飛び抜けた創造と変革のリーダーはもちろんのこと、強力なフォロワーを育成することもグロービスの役割であり、その他の社会人大学院も果たすべき役割なのではと思います。

世界中の企業にとってのロールモデルとなる大企業20社、グローバルで戦えるベンチャー企業200社に、カーニーの卒業生もカーニーの現役も力を注ぎ、グロービスの卒業生の皆さんもこの20社+200社に関わっていく。

ある種のファミリー。カーニーファミリー、グロービスファミリーなど、この企業をみんなで世界中の企業にとってのロールモデルにしようと、対象企業を絞ってやっていかないと、人材が足らないのではないかと思います。

人材のネットワークを形成して、そこに優れた人材が集まり、共有価値や共通言語を持って、共同する必要がある。国家レベルでの資源配分の問題とも言えるかもしれません。

海外企業とコンサルタントを見ていると、実はある種のファミリー、「ムラ」のようなものがあって、あるネットワークの中で人材がぐるぐると回っているように見えます。例えば、超巨大小売企業のデジタルトランスフォーメーションをした人材・チームが、今度は別の巨大小売にいる、といったことが起きています。

日本でもそういった、ある種のファミリーにどんどん人材が集まって、一緒に目線を引き上げていくことをやらないといけないのではないかと考えています。

西口:いい意味でのお友達経営ですね。

関灘:どこのコンサルティングファームも教育機関も個を育てて、それぞれが個として豊かになったり、楽しく生きられたりすれば良いよね、で止まっている面もあるように思います。それだと創造と変革ができる人材が、どんどん分散してしまうようにも思います。

2ケタ億円、3ケタ億円の個人的リターンで満足せず、険しい道を歩む

関灘:カーニーを卒業後に、起業して、2ケタ億、3ケタ億円ぐらいの資産を持てる人が出てきています。

確かに個人の生活レベルで見れば、ベンチャー企業を立ちあげて、2ケタ億円の資産が築ければ、一生安泰です。ベゾスなどのグローバル企業の経営者と対抗するプレッシャーを日々受けるよりは、2ケタ億円の資産で優雅に暮らしたほうが人生幸せ、となるかもしれません。

ただ、そういう人たちばかりでは残念だと思いませんか。もちろん個々人の自由ではありますが、世の中をより良くする創造と変革に、挑戦して欲しいと2月14日のスタッフミーティングで話をしました。

西口:ノブレス・オブリージュを持て、と。

関灘:2ケタ億、3ケタ億円の資産を築くのは、もちろん簡単なことではない訳ですが、スタッフミーティングに参加している皆さんができ得ることであり、その目線ではないと。

カーニーファミリーの中に、起業で成功したアラムナイがいれば、さらに世界的に活躍できるように後押しする。あるいは、カーニーからその起業家の組織へ人材を送り込んで応援する。そのようにして、みんなで寄ってたかってすごい組織を作らなければ、という危機感があります。

アウトプット側に回ることが最大の学び

西口:グロービスでの講師デビューは私とほぼ同じタイミングでしたが、始めたきっかけは何ですか。

関灘:私がグロービスで講義を始めたのは2007年1月期からです。実はグロービスとはいろいろな縁があります。

最初は高校卒業後、間もなく。中学・高校生のときに通っていた塾の先生から「経営学部に入ったから、当然『ハーバード・ビジネス・レビュー』と『日経ビジネス』と『日本経済新聞』ぐらいは読んでいるよね」と言われて、すぐに定期購読を始めました。

そのときに先生から勧められたのが、『グロービスMBAマネジメント・ブック』。それがグロービスとの出会いでした。読んでみると、確かに分かりやすい。当時18歳の私でも読めるように知識を編集してくれているのはありがたいなと思いました。

また、神戸大学の学生だったときに、堀(義人)さんの講演を聞いたことがあります。たまたま堀さんが京都大学に来るという情報を聞きつけ、京都まで行って、一番前で話を聞きました。「面白い。こういう人がやっているところで、自分が何か役立てることがあればいいな」とそのときから思っていたのです。

そして、A.T. カーニーに入社して4年目ぐらいのときに、現在A.T. カーニー日本法人の会長を務めている梅澤(高明)が「グロービスで講師をやってみたら」と言ってくれたのが、直接的なきっかけです。

西口:そんな接点だったのですね。

関灘:入社前から、入社して4年目ぐらいからグロービスなどで講師をやりたいなと思っていました。3年間も仕事をすれば、問題発見や解決の方法に関する持論もできるはず。それを記事にしたり、誰かに伝えたりすることで、自分の学びにもなると考えていたからです。アウトプットのタイミングは4年目には、と決めていましたね。

ちょうど運よく、東洋経済新報社の「Think!」という雑誌から執筆機会があったのも4年目のときでした。記事を書くために、思考系の本を改めて数十冊読み直しながら、自分の考えを体系化しました。

グロービスでも「クリティカル・シンキング」の講座を最初に持たせてもらったので、クリティカル・シンキングとは何かを、入社後の3年間を振り返り、体系化してみました。それもすごく良い経験になりました。やはりアウトプットする側や伝える側に回るのが最大の学びになりますよね。

西口:そうですよね、僕も今でもクリシンは登壇するたびに新しい発見があります!今日はどうもありがとうございました。

(文=荻島央江)

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