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働き方改革の第一歩は「信頼関係の回復」から!これからは「人口ボーナス期」から「人口オーナス期」に合った働き方へ

投稿日:2020/01/27更新日:2020/01/29

本記事は、あすか会議2019「成長戦略としての働き方革命の内容を書き起こしたものです(前編)。

上田祐司氏(以下、敬称略):本セッションのタイトルは「成長戦略としての働き方改革」ということで、どのように働き方改革を経営に取り込んでいくのかというのがテーマになると思います。ただ、今日は多くの方にお集まりいただいたので、壇上の方々にどんなお話を聞きたいか、まずは会場の皆さんに伺ってみたいと思います。

会場質問者A:残業代のために働く人もいるようなケースはどう考えればいいでしょうか。

会場質問者B:そもそも「働き方改革」とは何なのでしょうか。

会場質問者C:副業と本業のバランスについてはどのように考えればいいでしょうか。

上田:今いただいたご質問も踏まえつつ、まずは小室さんから順に今回のテーマについてお話しいただければと思います。

2100年には人口が今の4割に!これからは「人口ボーナス期」から「人口オーナス期」の働き方へ

小室淑恵氏(以下、敬称略):はい。まず、「そもそも働き方改革とは」というご質問にも関わりますが、日本は1960年代から90年代まで人口ボーナス期にありました。この時期は若者が多く高齢者は少しという人口比率で、今はちょうど、中国、韓国、シンガポール、タイがそうした比率にあります。この時期に経済で勝とうと思ったら、基本的にはなるべく男性ばかりで、長時間労働をして、そして同質性の高い組織をつくる。それによって早く安く大量にモノをつくることができ、競争相手を凌駕できます。人口ボーナス期、日本がそれを完璧にやりきったのは大正解でした。ですから、もし皆さんの企業で役員の方々が働き方改革に反対しているケースがあるとすれば、そうした成功体験に基づいているということかと思います。そこを否定してはダメなのですね。勢い余って「あなたたちは間違っていたのです」なんて言ってはダメで、「皆さまがそれを完璧にやり切ったからこそ、この国には今の貯金とインフラがあるんです」ということになります。

ただ、今の日本は人口オーナス期にあります。これは1990年代半ば以降で、ヨーロッパは日本より先にオーナス期となっていました。この時期は若者が少しで高齢者だらけ。少数で大勢を支える社会になります。そこで大切なのは、基本的には男女ともに活躍してもらうこと。また、ほとんどの人は育児中か介護中になるので、短い時間で高いアウトプットを出すこと。さらには、顧客が多様になり、かつイノベーションを起こし続けないと勝てないようになるので、多様な人材を組織に内包すること。そうして異なる考えが混じり合って、常に化学反応が起きるような状態にすることが勝つモデルになります。日本は人口ボーナス期のやり方で大成功したため新しいやり方になかなか移行できていませんが、ボーナス期からオーナス期のモデルに移そうというのが働き方改革です。

日本の最大の特徴は、日本のすぐそばに、今ちょうど人口ボーナス期に入っている中国や韓国があること。自分たちの過去の働き方で成功している人たちが身近にいると、羨ましくて過去に戻ろうとしてしまうのですね。自分たちは欧州型に転換しなければいけないのですが、その転換がかなり遅れてしまった。それで今は一気に山を飛び移ろうとしている、と。それを言葉で表現すると「働き方改革」になるのかなと思っています。ですから、労働時間の上限を決めるだけとか、とにかく休ませるとか、それだけの活動では決してありません。生産性を高めない限りどうにもならないわけで、この国が勝つための戦略です。その辺の基本が分かると進めやすいのかなと思っています。

それともう1つ。現在の出生率のまま日本の人口が推移すると、なんと2100年には人口が今の4割にまで減少します。しかも、そのうちの41%が高齢者になる、と。それで誰が年金を払うのかという話になるので、基本的には財政破綻となります。今はそこに向かってフリーフォールを落ちているところ。ただ、もし出生率が今すぐ2.07ぐらいに回復すると、2100年の人口は今の7割前後に下げ止まり、高齢化率も27%前後で上げ止まります。そうすると、かなり成熟した、いいラインの国になります。その状態にいけるかどうか、最大の分かれ目が今なのですね。まだ出産できる年齢の団塊ジュニアが少し残っていて、その後もまだ人口が多いゾーンが少しだけあります。この時期に、働くだけではなく産むことも両方できるような状況を女性に提供できると、現在の労働力になりながら未来の労働力も生み出してくれる。そういう状態にするため国をあげてサポートできると、後者のラインにいくことができるかもしれません。ただ、あと3年ほどでそのボリュームゾーンが一気に出産適齢期を抜けるので、非常に急ぐ話であり、それで今は国もかなり急いで進めているという背景があります。

未知の分野に踏み出し、どんどん挑戦できる社会へ!それが本当の「働き方改革」

矢野和男氏(以下、敬称略):矢野と申します。小室さんがお話しされたことに加えて、今は格差という問題も出てきて、さらに厳しい状態になっているのかなと私は感じています。格差が生まれているのはなぜか。単に給料が上がらないからではないと私は思っています。20世紀は規格大量生産の時代でした。標準化をして横展開するような働き方が、ものづくりでもサービスでも、良いことの代表のように言われてきたわけですね。その結果、毎日肉体労働をしなくても生きていける人たちがこれほど大勢増えました。社会に余裕があるということです。それで何が起きたか。「皆と同じ洗濯機が欲しい」みたいな人がいなくなった。一人ひとり、欲しいものが違う。同じ人でも今日と明日で違うものが欲しくなっているかもしれない。で、ここ20年ほどは、その状態に対応しようとするアプローチがいろいろな形で生まれました。21世紀に入り、世界のあちこちで需要側が多様性を持つようになったので、それにどう対応するか、と。規格大量生産では応えることができないので。

アプローチは2つあります。1つは、そうした柔軟性や多様性に、人間力でなんとか対応するというアプローチ。日本はそういうことをやってきたのだと私は思っています。その結果、コンビニやショップで店員の方がやたらと増えたり、物流倉庫がそこらじゅうにできたりしました。これらはすべて需要の多様化に適応すべく起きたことです。

で、もう1つがアメリカの起業家によるアプローチですね。データとコンピュータの力で多様性や変化に対応すべく、GAFAを生み出したアプローチです。これは単にコンピュータを使うということだけではありません。変化や多様性というのは、やってみないと分からないことばかりで、頭で考えても分からない。だからGAFAは常にコンピュータで実験をしています。やってみてうまくいかないものは止めて、うまくいくものをどんどん進めてきた。そして、こちらのほうは非常に高い給料をもらって、逆にそうでないサービス業の人たちは、残念ながら社会的にもあまり尊敬されず、給与水準も低いということになっていったわけです。結局はそれで格差が生まれたということだと考えています。

では、その格差が今後さらに広がると何が起きるか。ドラッカーは20年以上前に「階級闘争になる」と言っています。マルクスは「資本家と労働者のあいだに階級闘争が起きる」と言っていましたが、先ほど言ったような標準化などによって生産性が高まったおかげで、階級闘争にはならなかった。だから社会主義はうまくいかなかった。しかし、ドラッカーは生前、「新たな階級闘争が生まれる」と予言していたのですね。知識労働者とサービス労働者のあいだにギャップが生まれて、それが最も大きな社会問題になる、と。ドラッカーはすごいと思いますが、いよいよそうなったなと、私は思っています。

ですから、言われたことをやるだけの仕事をつくっちゃいけないということなのですね。皆、未知の分からないことにどんどん踏み出す探検者・冒険者にならなきゃいけない。それでうまくいった人や頑張っている人が高く評価され、社会的に尊敬され、経済的に豊かになったりするようにしていく。では、そのためには何が必要か。それぞれが挑戦や工夫をするためには精神的なエネルギーが必要です。そのためにハピネスということが必要になる、と。精神的なエネルギーの値が高い人でないと工夫や挑戦ができないというデータが、この20年ほどのあいだに次々出てきました。実は、ハピネスというのは「嬉しい」「楽しい」「楽ちん」みたいなものとは真逆という結果が、科学的な研究で出ているのですね。どちらかと言うと、挑戦して、先が分からなくても踏み出して、難しいことに立ち向かい、周りも巻き込んで常にポジティブなストーリーをつくって前に進むこと。ですから、皆がそうした態度で探検していくような働き方に変えていくことが、本当の働き方改革だと私は思っています。

社内で大切にしている「感情の分かち合い」

塩田元規氏(以下、敬称略):僕はアカツキという会社で社長をしているなかで、働き方について思っていることがあります。ビジネスの世界というのは、「合理的」「ロジカル」「最適化」といった言葉でいろいろなものを切り捨てていると思うのですね。何を切り捨てているかというと、一番は人間の感情。たとえば、「嬉しい」だけじゃなくて「悲しい」とか「寂しい」とか、「ちょっと泣いちゃうな」とか、そういう感情を分かち合える会社ってどれくらいあるのかなと、僕は思うんです。

それって子どもの頃は当たり前だったじゃないですか。子どもの頃は毎日世界がキラキラしていて、何か面白いものがあれば勝手に飛びついて、飽きたら止めていた。パッションがあって、自分らしい色を輝かせていたと思うんです。でも、大人になると頭でいろいろ考えて、「これをやったら上司に怒られちゃう」とか(笑)。安心や安全のない環境にいる。会社で「僕、今寂しいんですよ」なんて言ったら、「何言ってんの?」っていう感じになるじゃないですか(会場笑)。それじゃダメだと思っていて。うちの会社で「寂しい」とか言ってくれたら超最高ですね。僕はよく言っています。「もう嫌だ。寂しい」とか。社員が辞めちゃうとき、「いや、俺も頭では分かるのだけど、すげー寂しいわ」なんて言って泣く、みたいな(笑)。

何が言いたいかというと、今まで一番不合理で意味がないと言われていたものが、これからの時代は必要になると思っているのですね。成熟社会ではいろいろな価値が必要になるし、皆がいいと言うものではなくて、誰かが熱狂的に好きというもののほうが圧倒的に価値を出せる。人と違うことに価値があるのだから。そういうとき、自分の内側にある感情を大切にしない会社はキツいと思っています。だから矢野さんのお話にもすごく共感しました。

頭で「挑戦しよう」と考えてみても結構難しいのですよ。「挑戦しろ」と、大人たちに言われるから無理して頑張っちゃう。僕も言われてきました。でも、「頑張ろう」「頑張ろう」ばかりでやっているとガス欠を起こしちゃう。そういうときに感情や心を分かち合えるようなつながりのある環境が大事になると思っています。そのためのソリューションは2つ。1つは企業のなかに「分かち合う」という文化をつくることです。感情の分かち合い。たとえばうちの会社では、毎週行っている全社的なプロジェクト等の週次報告で、発表のあとに行っていることがあります。普通は発表後に「何か質問はありますか?」と質問を募る流れになると思いますが、うちは違います。「何を感じましたか?」という問いを投げるのです。

するとどうなるか。たとえば僕もよく喋ります。元規という名前だから「ゲンちゃん’sトーク」とか言ってよく喋る(笑)。それで、「今日のゲンちゃんの話は、なんかつまんなかった」という人もいますし、「なんか胸がザワザワして、ちょっときつかった」とか「超楽しかった」とか言う人もいます。そんなことを5~6人で輪になって喋るのですね。それが分かち合うということ。分かち合うことの何が重要かというと、自分の内側にあるものは何を出してもいいという点です。だから格好つけなくていい。人それぞれ感じるものは違うから。それをすると信頼と安心がむちゃくちゃ担保された場になるので、まずはそれが1つ重要だと考えています。

で、もう1つは変な話ですが、会社で「フェス」をやる。アカツキには「ハートドリブン」というビジョンがあります。「心の内側からやる」というものですが、それで今年も3000人ぐらい入るSTUDIO COASTという場所を借り切って「ハートドリブンフェス」というフェスを開催しました。コンセプトは「1年で1日だけ大人が子供に戻って本気で遊ぶ学園祭」。これの何がすごいかというと、会社のお祝いなのですが(アカツキの創立記念祭)、アカツキ以外のメンバーもたくさん来るんですね。20~30社が自費で参加します。学園祭だから誰もが表現者として参加して、そこで何かをギブします。それで屋台をやる人もいるし、たとえばDeNAの南場会長も来てくれて寿司を握ってくれたり(笑)。これの何がいいかというと、その場で、「あ、本来はこれくらい感情とか何かを表現していいんだ」ということが企業として分かるのです。それで会社に戻ると、よく分からないと思うような不合理なことが許されることもある、と。

かなり働き方改革とは違うような話になりましたが、根本は一緒です。成熟期に勝つということは、便益的なメリットで勝つということではないので。そもそも利便性で勝つ時代はもう終わっているんですね。それで戦うということはGAFAと戦うということなんだから。彼らが提供するものよりも便利で機能的な価値を提供するのはめちゃくちゃ難しい。そうではなくて、もっとエモーショナルな価値を提供するため、今お話ししたような考え方がいいのかなと思っています。

経営会議を「ロジカルに話す場」と「感情をシェアする場」に分けたら議論が活発に

秋好陽介氏(以下、敬称略):働き方改革の制度的な話も大事ですが、私もやっぱり感情がめちゃくちゃ大事だと思っているので、すごく納得感があります。ランサーズでも以前、経営会議でまったく物事が決まらなかったことがあって、それで経営会議をロジカルに話す議論の場と、感情をシェアする場の2つに分けたのです。そうしたら議論するときは真面目に議論するわけですよ。売上予算だ戦略だと。でも、感情のときは、「いや、分かるのですけど、僕、ぶっちゃけ、やりたくないんですよ」なんて言ったり(笑)。でも、そういう部分が出てくると、意外と議論のほうも活発に進んでいくのです。「あ、そう思っていたんだ」みたいになって。だから感情は大事だと思います。

塩田:じゃあ、秋好さんも最近の感情もここでシェアしてみたら?

秋好:今回のテーマにも関係しますが、僕らは先日、「#採用をやめよう」という広告を日経に掲載しました。今、世間では「働き方改革だ」「副業だ」「フリーランスだ」と言われているじゃないですか。でも実際にはどうか。企業に聞いてみると、「いや、業務委託できる範囲は限られているじゃないですか」とか「いや、会社に来てくれないと仕事はお願いできないですよ」なんて言われるわけですね。でも、そんなことないのです。東京と北海道のリモートでも業務委託でも、きちんとコミットして、その会社のためにやってくれる人はたくさんいます。だから、そういう思いを日本で最も就職活動に注目が集まる6月1日の就活解禁日、天下の日経新聞に全面広告で問いました。広告を上下逆さまにして。採用=正社員のみという慣習に対して、新しい人材の確保をしませんか、と。

働き方改革のコンサルで最初にやるのは「リーダーとメンバーの信頼関係」「トップと現場の信頼関係」を回復させること

小室:会場にいらしている皆さんの会社で「社長が感情を出す」となると、たぶんそれは怖いほうの感情ですよね(会場笑)。同じように、働き方改革というと「怖いコンサルが来て電気を消されたりネットワークを切断されたりして帰らされる」というのが企業側の最初の捉え方なのです。でも、私たちはまったくそんなことはしません。グーグルが何年か前に出した「心理的安全性の高さ」に関する報告は皆さんも読まれたかもしれません。まさに矢野さんがおっしゃっていたことで、心理的な安全性の高さがないかぎり職場の課題を自分の口からは絶対に話さないので、働き方改革は進みません。ですから私たちがコンサルに入って最初にやることは、リーダーとメンバーの信頼関係の「なさ」を回復させていくこと。そうした小さなチームでの回復と、もう1つがトップと現場との信頼関係の回復です。

具体的にどうやるかというと、コンサルは8ヶ月ほど行いますが、まずは2万人の会社でも3万人の会社でもチームを4つぐらいだけ選びます。各チームが自分たちでできる働き方改革を地道に進めるわけですが、その4ヶ月目には役員全員に話を聞いてもらう機会を設けます。ただ、役員の方々が普段通りに発表を聞くとなると、「え、それぐらいの成果しか出なかったの?」「それは俺が前から言っていたんだ」となって、腕組み足組み仰け反りで発表者のモチベーションを下げます(会場笑)。だから私たちは事前にトップを教育します。「いいですか、今日は前のめりで聞くのですよ。メモを取るんです。頷いたりもしてください」と。で、「質問するときは『もっと聞かせて』と言うのです。そうするとトップの方々は結構素直で、当日それをやってくれます。「たぶんこういうのって難しかったと思うけど、どうやったの?もっと聞かせて」なんて言って。

そんな風に聞かれたときの発表者の顔の輝き。「こんな成果しか出てないのか。定量的ではなくて定性的な変化だけなのか」なんて怒られるかと思っていたら、「もっとこんな風にやってくれたら嬉しいな」なんて言われるわけです。それで後半4ヶ月でぐいっと成果が大きくなる。たいてい、8ヶ月のうちの前半は「チーム内でできることをやります」と言うのですね。「他のチームに関わって何か言われたりするといけない」なんて考えて「小さくやります」と。でも、役員に「もっと聞かせて」「こんなことも期待しているよ」と言われると、後半は取引先にまで「ちょっとこの工程を変えてみませんか?」なんて話をしに行ったりします。他の部署や会社まで交渉に行くエネルギーが湧いてきて、たいていは後半にぐいっと成果が大きくなります。それで8ヶ月目になると急に2~3割残業が減ったりします。

結局、そういう心理的な安全性がないと、無駄だと思っていることについても「この人たちは無駄だと思っていないのだろう」なんて考えて口に出さなかったりするのですね。そんな状態がずっと続いて現在に至っているわけで、やはり一番のベースは心理的安全性をつくること。その意味で皆さんのお話にも共感しています。

会社の中で持続的な幸せを得るためには「心の資本(HERO)」が必要になる

矢野:その辺については学問的にもいろいろと実験が行われています。あるレポートでは、約2万8000人にアプリを入れてもらったうえで、「今何をしていますか?」「今どんなムードですか?」という質問を2つ、1ヶ月間続けたという実験があります。すると、ムードについて「いまいちです」「ムードは悪いです」という風に答えた人のあいだで、それから数時間にわたってどんな行動が増えたか。散歩や気晴らしが増えている。まあ、分かりますよね。ムードが悪いから。一方、「今はいいムードです」「ハッピーです」と答えた人のあいだで、それから数時間にわたりどんな行動が増えたか。しんどくても面倒でも大事なことをやっているんです。大事なこととは何か。今おっしゃっていたような、取引先を巻き込んだり、人に頭を下げて何かをしたりすること。あえて一歩を踏み込んで、言われていないことまで工夫してみたりすることで結果が大きく変わるから大事なわけですね。やってもたいして結果が変わらないなら、それは大事なことではないわけで。で、そういう大事なことをあえてやるためには、その原資となる精神的なエネルギーが必要なのです。そのために「安心」ですとか、もともとの「挑戦する力」が必要になる。

これはどういうことか。現状では会社のなかに、いいムードで挑戦をしている人と、いまいちのムードで、やってもやらなくてもたいして変わらないような仕事をしている人の両方がいるということです。要するに皆が100%の力を出していない。なぜか。精神的なエネルギーを持つことができていないから。そして、そこで何が必要になるかについては、この20年、Positive PsychologyやPositive Organizational Scholarshipといった学問分野で極めて膨大な量の研究がなされ、必要なものが体系化されてきました。で、そのなかでも私が一番大事だと思っているのは「心の資本」という理論です。

「心の資本(Psychological Capital)」とは、「HERO」、すなわちHope、Efficacy、Resilience、Optimismのこと。Hopeは自分で自分の道を見つけること。Efficacyは先が見えなくても自分で前に踏み出すこと。ただ、それで失敗するかもしれない。Resilienceは、それでもめげず、人に何か頼んだり人の助けを得たりして前進することですね。で、その過程ではポジティブなこともネガティブなこともいろいろ起きますが、そのなかでも「良かった。次に進もう」というストーリーを自分でつくることがOptimismです。そういうことのできる人が、持続的な幸せを得ることができて、その結果として工夫や挑戦をして大事な仕事もできる。それは生産性や企業業績とも大きく相関していることが科学的にもデータで検証されています。

ただ、実は日本の労働者のなかで、「自分の力を100%出していますか?」という質問にYesと答える人が極めて少ない。ですから、気晴らしとか、あるいは自分はそうしているつもりはなくても、なにかこう、一見するとパソコンで何か仕事していたりしてずっと忙しくしている。でも、それは挑戦をしてないということであって、それを変えないといけない。(後編に続く)

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