問題解決に水平思考を応用せよ

問題解決新刊『MBA 問題解決100の基本』の4章「視点を変える技術」から、「Basic036 SCAMPERはアイデアを生み出す質問のチェックリストだ」を紹介します。

問題解決において、問題の所在やその問題が生じている原因などを突き止めるのは、慣れてくるとある程度できるようになってきます。難しいのは、最終的なソリューション(解決策)を考案することです。「合わせ技」も必要になることが多いですし、場合によってはそれまでにないクリエイティブなソリューションを求められることも少なくないからです。

たとえばソニーのFelica(Suicaなどに採用されている非接触ICカードの技術)は、「10cmの距離で、0.1秒で作動する」という条件をクリアすべく、解決すべき問題の核心部分について、アンテナの共振回路の技術を応用したと言います。これは半導体デバイスだけを扱っている企業には出来ない発想でした。こうしたクリエイティブなソリューションを生み出す発想法が水平思考で、その代表がSCAMPERのテクニックです。特に企画や商品開発をしている方であればぜひ知っておきたい思考法です。

(このシリーズは、グロービスの書籍から、東洋経済新報社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

SCAMPERはアイデアを生み出す質問のチェックリストだ

SCAMPERとは、ブレインストーミングを作ったアレックス・F・オズボーンによって提唱された9つのアイデア出しの方法をボブ・エバールが7つにまとめたものであり、視点を変える方法の定番とされています。

SCAMPERは、「Substitute:入れ替える」「Combine:組み合わせる」「Adapt:当てはめる」「Modify:変更する」「Put to other Uses:他の用途に用いる」「Eliminate or Minify:排除・縮小する」「Rearrange or Reverse:並べ替え・逆転する」の頭文字をとったもので、問題解決では特にソリューションの提案で力を発揮します。

それぞれの典型的な問い掛け、方法は図のようになります。

図

たとえば、ビールの高い税率を回避しようとした発泡酒や第三のビールは、(4)の「Modify:変更する」の応用とも言えますし、歴史的ヒット商品のiPhoneは、(2)の「Combine:組み合わせる」を徹底的に追求した商品(iPod十携帯電話十小型パソコン)とも言えます。イノベーションはもともと「新結合」の意味ですから、(2)のCombineは特に重要です。

吉見製作所の「竿中とおる君」は形状記憶合金でできた、釣り具にえさを取り付ける道具ですが、巻き爪に悩む消費者は、これをその治療に用いました。これは(5)「Put to other Uses:他の用途に用いる」の例と言えるでしょう。

(7)「Rearrange or Reverse:並び替え・逆転する」では、在庫ロスや販売機会ロスを減らすために開発されたベネトンの「無地のアパレルをまず縫製してから染色する」という当時としては業界の常識破りのプロセスが有名です。

過当競争を回避して競争のない新市場を剔出するブルー・オーシャン戦略なども、その発想の根源に視点の変更を含んでいます。この戦略では「取り除く」「思い切り減らす」「大胆に増やす」「付け加える」の4つの視点を重視していますが、これもSCAMPERの延長にあると見なすことができるのです。

コラム:自分の専門の枠を出る

SCAMPERの「(1)Substitute:入れ替える」「(2)Combine:組み合わせる」の発展版とも言えるのが、自分の専門分野の枠から出た解決法と組み合わせることです。

通常、目の前に何か問題があった場合、エンジニアならば技術的手法で、政治家ならば法の改正などで問題を片付けようとするものです。自然な発想法ではありますが、これは往々にして解決策の効果を削いでしまいます。

そこでたとえばエンジニアの場合、技術開発で当局の基準をクリアするのが難しい場合は、会社の別部門の人間にロビー活動をしてもらって基準を多少緩めるよう働き掛けることで技術的ハードルを下げ、「合わせ技」で問題を解決するといった発想が求められるのです。

人事部の人間であれば、採用や研修だけで解決できない従業員のスキルレベルの問題をITの活用やリエンジニアリングによるプロセスの見直しで解決することを構想できれば効果はより大きなものになるかもしれません。

#キーワード
イノベーション(新結合)、ブルー・オーシャン戦略、リエンジニアリング

(本項担当執筆者:嶋田毅 グロービス出版局長)

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