消費税率が10%になることが閣議決定されました。消費税が増税されると会社の業績にどう影響するのでしょうか?今回は、消費税が決算数値へ与える影響について説明します。
結論から言うと、基本的に消費税によって会社の業績が影響を受けることはありません。したがって、消費税が10%に増税されても会社の業績が悪化することはありません。一般的に、消費税の税の負担者と納付者は一致しません。例えば、消費税の負担者は商品を購入した顧客ですが、商品を販売した会社が顧客から預かった消費税を国等へ納付します。会社にとって消費税は、会社を通過しているだけであり、会社が生み出した付加価値とは異なります。
消費税の会計処理方法には、「税抜処理」と「税込処理」があります。税抜処理とは、商取引におけるおカネの収受の内、取引金額と消費税を区分して処理する方法です。対して、税込処理は取引金額と消費税を区分せずに処理する方法です。消費税の性質を考慮すれば、会計的には税抜処理が望ましいと言えます。そのため、上場会社や事業規模の大きな会社では税抜処理が採用されています。他方、中小企業などでは会計処理の簡便性などを重視して税込処理を採用している会社も多いと思われます。
簡単な例を使って、税抜処理と税込処理の違いを見てみましょう。
【設例】
商品を100円で仕入れて、200円で販売するとします。消費税率は8%とします。
計算される利益:売上(200)-売上原価(100)=利益(100)
おわかりの通り、P/Lでは収益、費用ともに消費税は取引金額とは区分して処理されるため、消費税が10%に増税されても利益には影響ありません。B/Sにおいては、未払消費税が2%の増税分増加すると思われます。
計算される利益:売上(216)-売上原価(108)-租税公課(8)=利益(100)
租税公課は、仕入先に支払った消費税です。未払消費税は、販売時に顧客から預かった消費税と租税公課の差額です。会社は両者の差額を納付する義務があります。税込処理の場合であっても、最終的に消費税分は費用あるいは収益へ調整されるため、計算される利益は税抜処理の場合と同じになります。しかし、税込処理の場合は、売上、費用等の各勘定科目の金額が消費税分だけ大きく計上されます。
※この他、税務上は交際費、資産計上等、税抜処理か税込処理かによって相違がありますが、ここでは割愛します。